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勇人が現実世界から子供たちを連れ去ってここで働かせているのを知って、昔からいる労働者は驚いた。まさか、こんな事をやっていたとは。未来のある子供たちをここに連れてきて、無茶な労働をさせて、死なせようとしているなんて。子供たちはもっと素晴らしい夢を持ってほしいのに。もっとのびのびと生活してほしいのに。
「やはりそうだったのか。怪しいと思ったよ」
「現実の世界から子供を連れ去って来るなんて、ひどい!」
労働者は怒りを隠せない。こんな事、許されるわけがない。何が何でも勇人を止めなければ。だが、そのためにはどうすればいいんだろう。解決策が見つからない。
「俺もそうだと思う。何とかしないと」
佐藤も気にしていた。その為には、どうすればいいんだろう。全くわからない。
「そのためには、どうすればいいんだろう」
「わからないけど、俺たちで頑張ろう」
武は思っていた。何何でも子供たちを助けるんだ。そして、現実世界に連れて帰るんだ。
「そうだそうだ!」
ある労働者は気になっていた。あんなに優しかった勇人が、どうしてこんな事に手を出したんだろうか? その理由がわからない。急に集めだしたのは、どうしてだろう。何か理由があるだろうけど、その理由が思い当たらない。
「でも、どうしてこんな事になったのか。あの大輔って奴が来るようになってからだ」
「そうだ。勇人と大輔の間に何か秘密があるに違いない」
それを聞いて、佐藤は思った。大輔って、あの伊藤大輔の事だろうか? まさか、大輔がここに出入りしている? だとすると、大輔は今もここにいるのかな? 早く捕まえて、その真相を聞かないと。
「うん」
「なんとしても調べないと。あの子たちの命が危ない」
光は心配していた。弘人と勝はもちろんだが、ここに閉じ込められた子供たちも心配だ。彼らも無事に現実世界の家族の元に戻したいな。家族はきっと心配しているだろうな。彼らのためにも何としても救い出さないと。
「確かに。あの子は普通の子だ。現代に帰してやらないと」
「勇人・・・」
労働者は気になっていた。元の勇人に戻ってほしいのに。そんな勇人に何があったんだろう。全く見当がつかない。
と、佐藤は思った。何か最近、不審な事はないか? もしあったら、それが原因かもしれない。だから調べてほしいな。
「何か不思議な事、なかった?」
だが、労働者は首をかしげた。思い浮かぶことはない。あんまり勇人の姿は見ないから。最近見かけなくなった。どこか忙しそうな表情だ。忙しいのに何か関係があるのでは?
「不思議な事・・・、うーん・・・。わからないな」
「そうか・・・」
と、ある労働者が反応していた。勇人の秘密を何か知っているんだろうか? 武は期待を寄せた。
「どうしたんだい?」
「勇人、最近、どこかに行くのが多くなったと。特に、毎朝、山奥に行くんだ」
山奥に行くのか。山奥に何かあるんだろうか? その先には、白樺林が広がるだけなのに。そこには一体、何があるんだろう。全く見当がつかない。
「山奥? 何があるんだろう」
「わからない。白樺林ばかりだろう」
労働者の多くは白樺林しか思い浮かばない。この敏別は白樺林に囲まれた炭鉱の町だ。思い浮かぶものはない。
だが、ある労働者は気になっていた。この近くに、神社はなかったかな? 商売繁盛を願う稲荷神社だ。小規模だけど、毎年夏にお祭りが行われる。だが、仮想世界ではそんな事が起きない。
「それだけかな? 神社がなかったかな?」
それを聞いて、労働者は反応した。確かに山奥には稲荷神社がある。思い浮かぶとしたら、これしかない。明日、付け回してみよう。わかるかもしれない。
「神社! それに秘密があるかもしれないな」
「行ってみようよ」
「そうだね」
労働者の一部は決意した。明日、非番の労働者が勇人を付け回そう。そして、その理由をつかむんだ。何としても彼らを救ってみせる。
「とにかく明日、後をつけてみよう」
「ああ」
労働者はため息をついた。最近やって来た子供たちのせいで、こんな事になったとは。この先、この炭鉱はどうなってしまうんだろう。
「大変な事になったな・・・」
もう1つ、労働者は気になっていることがあった。最近では入りしている大輔の事だ。大輔が出入りするようになってから、子供たちがやって来るようになった。明らかに怪しい。大輔がそのカギを握っているに違いない。
「それに、大輔って奴も怪しいな。マークしないと」
「ああ。明らかにあの子は現代の子だ。雰囲気がそれっぽい。でも、どうしてここに行き来しているのか」
労働者は見抜いていた。明らかに大輔も現代の子だ。だが、彼らとは違って、大柄な大人だ。どうしてそんな人が出入りしているのかも気になる。
「うん。あの子も怪しい。この子も気をつけないと」
ふと、労働者は思った。勇人はどうしてこんな事に手を出すようになったんだろう。昔は普通の指導者だったのに。
「勇人・・・」
「どうした?」
佐藤は気になった。勇人で何か思い浮かべる事があるんだろうか?
「最初は普通だったのに、どうして?」
「大輔が来てから変わり始めたような」
それを聞いて、佐藤は思った。あの行方不明事件は、勇人が鍵を握っているんじゃなくて、大輔が鍵を握っているんじゃないだろうか? だとすると、行方不明事件の犯人、つまり連続誘拐事件の犯人は大輔では?
「そういえば、そうだな」
「ああ」
武も光もそう思った。明らかにあいつがおかしい。なんとしても捕まえて、真相を聞いてやる!
「大輔が一番鍵を握ってるんじゃないかな?」
「そうだね。どうして現れたのか」
「それが焦点だ!」
それを聞いて、労働者も同感した。悪いのは、大輔なんだと。
「とにかく、明日の朝、行動するぞ!」
「ああ」
と、労働者は拳を握り締めた。勇人は何を企んでいるんだろう。
「くそっ、勇人の野郎!」
労働者は決意した。明日、絶対に勇人の秘密を突き止めてやる! そして、子供たちを現実世界に帰してやる!




