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 しばらく歩いていると、ある男の子がやって来た。その男の子は泥だらけで、とても疲れていた。だが、休む事ができないようだ。そして、やせ細っている。十分な食事をできていないようだ。この子は本当に大丈夫だろうか? 明らかにこの子は普通の子だ。


「この子・・・」


 倒れそうになった所に、佐藤がやって来た。佐藤は何としても救いたかった。


「君、大丈夫? 連れ去られたの?」


 それを聞いて、男の子は驚いた。どうしてそれがわかったんだろうか? まさか、現実の世界からやって来たんだろうか? 僕たちの行方不明事件はすでに現実世界でも有名になっているみたいだ。早く元の世界に戻りたいのに、どうすればこの姿で帰れるのか、方法が見つからない。もし帰ろうとしたら、犬にされて死の呪いをかけられる。


「どうしてわかったの?」

「救うために来たんだよ」


 佐藤は笑みを浮かべている。


「本当?」

「うん」


 佐藤は男の子の頭を撫でた。男の子は泣きそうになった。こんなに優しい人、久々に出会った。


「ありがとう。どうすればいいの?」

「わからないんだ。このままここで死ぬんだな」


 男の子は絶望していた。ここからはもう戻れない。戻ったら殺される。


「大丈夫。助けてやるさ」


 と、男の子は千尋の事を思い出した。救おうと思って、敏別のある場所に印を記した地図を持って現実世界に出て行った。おそらく死ぬ覚悟でここの場所を伝えよう、ここで何か起こっているから早く来てほしいと思ったんだろう。


「はぁ・・・。あの子、大丈夫かな? みんながここにいるって事を伝えるために行った子。三村千尋って子」


 それを聞いて、4人はハッとなった。犬の姿で見つかった千尋だ。ここに来てほしい、ここで起きている事を伝えてほしいと思って、現実世界に戻ってきた。千尋は死ぬ覚悟で頑張ってくれた。感謝しなければ。


 だが、佐藤の表情はさえない。死んだ事をなかなか伝える勇気が出ない。どう言えばいいんだろう。


「えっ!?」

「どうしたの?」


 佐藤は重い口を開いた。佐藤の口は震えていた。本当に言っていいんだろうか?


「あの子、犬にされて瀕死の状態で助けられたんだ。死んじゃったんだけどね」


 やっぱり死んでしまったのか。でも、ここで起きている事を伝えるという使命を果たした。その勇気に応えないと。


「そう、だったんですか・・・。助からなかったんですか・・・」

「ああ。ごめん」


 佐藤はお辞儀をした。だが、男の子は許しているような表情だ。いずれ、こんな運命だったんだ。運命を知って、この行動を起こした。千尋はとても勇敢だった。


「いいんだよ。その手掛かりで来たの?」

「うん」


 だが次の瞬間、男の子の意識は薄れてきた。明らかに死にそうだ。周りの人々はかわいそうな目で見ている。普通の人間なのに、連れられてきた。死んでしまうのがとても気の毒でしょうがない。僕たちは全くできない。


「千尋、ありがとう・・・」


 そして、男の子は目を閉じた。徐々に体が冷たくなっていく。


「死ぬな! 死ぬな!」


 だが、男の子の目は二度と開くことがなかった。佐藤はゆすったが、男の子は動かない。


「つ、冷たい・・・」


 と、武は床にひれ伏せた。あの男の子が死んでしまったのがとても許されないと思って言うようだ。


「こんな事、こんなこと許されるかー!」

「そうだそうだ! 千尋くんの遺志も、この子の遺志も継がないと」


 光も男の子がかわいそうに思えてきた。どうしてこんな事にならなければならないんだろう。


「そうだね」

「でも、どうすればいいんだろう」


 と、佐藤は伊藤大輔の事を思い出した。あの男は、どこに行ったんだろう。ここに来たのは確かだが、何の目的でここに来ているんだろう。


「その原因を作った人を探さないと。伊藤大輔だと思ってるけど」

「そうだ! 伊藤大輔はどこに行ったんだろう」


 武も気になった。その男が、駆け込みサイトや行方不明事件の鍵を握っているに違いない。


「探さないとな」


 佐藤は死んだ男の子を見つめている。どうしてこんな場所で、こんな死に方をしなければならないんだろうか? とてもかわいそうでたまらない。もっといい死に方を、天寿を全うした死に方をできないだろうか?


 そこに、昔からここで働いている老人がやって来た。老人も男の子を見て、かわいそうだと思った。きっとこの子は現実の世界から連れられてきたに違いない。


「そうか。また1人死んだのか・・・。それにしても現代から連れ去られた子だったとは」

「とすると、やっぱりあの子たちは連れ去られた子なんだね」


 老人は思った。やはりあの子たちは、連れ去られた現実世界の子供なのか。


「ああ。そいつらを救うためにやって来たんだ」

「そうなんだ」


 武は再び、大輔の事を思い出した。あいつは今、どこに行ったんだろう。早く見つけて、その真相を追求しないと。


「それにしても、伊藤大輔ってのはどこに行ったんだ」


 だが、老人は首をかしげた。大輔の事を知らないようだ。


「伊藤大輔? 知らないな」


 佐藤は会社から持ってきた大輔の写真を見せた。


「こんな子ですけど・・・」


 それを見た老人は、何かを感じた。その男を知っているようだ。ここ最近、勇人と一緒にいる事が多い。何かに関わっていそうなやつだ。でも、この男は誰だろう。今日まで全くわからなかった。今日聞いて、その男が伊藤大輔だとわかった。


「この子? 事務所にいるんじゃないですか? この人、この炭鉱を経営している人の側近らしいので」

「側近?」


 側近もいるのか。側近も怪しいけれど、その側近とは誰なんだろう。


「じゃあ、誰が経営しているんですか?」

「その人? よくわからないが、伊藤は勇人って言ってるな」


 それを聞いて、佐藤はある事件を思い出した。敏別湖で行方不明になって、死体がないまま自殺したと考えられた山中勇人だ。まさかだと思うが、その男が勇人だろうか?


「勇人?」

「どうしたの?」


 武は佐藤の表情が気になった。勇人と聞いて、ある人を思い浮かべたんだろうか? 誰の事だろうか?


「山中勇人・・・」


 それを聞いて、武は思い出した。そういえばこんな事件があったな。忘れかけていたけど、その事件はとても話題になったな。


「まさか、もう死んでんだよ」

「でも、おかしいと思わないか? 遺体が見つかってないんだぜ」


 佐藤は明らかにおかしいと思っていた。遺体はどこに行ったんだろう。敏別湖にあるはずなのに、全く見つからなかった。明らかにおかしいな。


「そ、そうなの?」

「ああ。遺体はどこに行ったんだろう」

「うーん・・・。気になるなー」


 それを聞いて、武も気になった。遺体はどこに行ったんだろう。まさか、ここにいるのかな?

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