21
4人は集落の中にやって来た。そのほとんどは平屋の木造で、古そうな外観だ。だが、そんな中に、2階建てのアパートや比較的新しいマンションもある。資料館にはこんな写真がなかったが、昔の敏別もこんな感じだったんだろうか? どんな生活を送っていたんだろうか?
彼らの様子を見て、光はかわいそうに思えてきた。多くの人々の服がボロボロだ。こんなボロボロな服を着ていたら、新しく買いなさいと言われるだろう。だが、彼らにはそんなお金もないのだろう。
「みんな服がボロボロだ」
「かわいそうだね」
上田も彼らがかわいそうだと思えてきた。彼らに新しい服を与えたいのに、自分にはできない。
と、光は思った。ひょっとして、弘人と勝もこんな感じの服を着て労働させられているんだろうか?
「まさか弘人と勝もこんな感じなのかな?」
「わからないけど、そうだったらひどいな」
武は焦っている。なんとしても弘人と勝を見つけないと。ここにいるかわからないけれど、探さないと。
「とにかく、見つけよう。みんなに聞こうよ」
「ああ」
と、そこにボロボロの服を着た中年の男を見つけた。その男は、まるで幽霊のように肌が白い。いや、本物の幽霊ではないだろうか?
「すいません、こんな子、見かけませんでした?」
「いやー、見かけないなー」
だが、中年の男は首をかしげた。この2人を見た事がないようだ。
「そうですか・・・」
中年の男は何か気になる事があるようだ。もしあれば、話してほしいな。
「ここ最近、若い子がやってきて、何だろう」
ここには死んだ人々がやって来るのに、肌のいい若い子がやって来るのだ。ここは死人しか来ないのに、どうしてだろう。まさか、生きている人々がここに連れ去られたんではないだろうか?
「気になるんですか?」
中年の男は、何かに起こっているようだ。何か不満でもあるんだろうか?
「ここ経営してる人、とってもひどいよ。俺たちは絶対に死なないからという事で、ひどい労働をさせるんだ。それに、それを楽しんでるみたいなんだ」
そんなひどい奴が経営しているのか。一体それは誰なんだろう。今すぐ会って、注意したいな。でも、経営者って、誰なんだろう。とても気になるな。
「そうなの?」
「それに、最近新しい子を連れてきて、そいつらを死ぬまで労働させるんだ」
新しい子と聞いて、光は反応した。まさか、その新しい子の中に弘人と勝がいるのでは?
「そ、その子、どこから連れてくるんですか?」
「わからん。じゃが、やけに都会っぽい子だな」
中年の男は思っている。彼らはどこか、都会からやって来たような雰囲気だ。どうしてこの子たちはここに来たんだろう。とても怪しいな。
「そんな・・・。じゃあ、行方不明になった子かな?」
「行方不明?」
行方不明と聞いて、中年の男は首をかしげた。行方不明事件が起こっているとは。だとすると、最近連れられてきた子は、行方不明になった子供たちでは? ならば、早く元の世界の返してやらないと。
と、佐藤は真剣な表情になった。今、何が起きているのか話さないと。
「ここ最近、子供たちが行方不明になってるんですよ。で、その子かなと思って」
そんな事が起こっているとは。これはほっとけないな。だが、そっちからではどうしようもない。
「うーん、否定できないな」
それに、中年の男は気になっている事がある。それは、連れられてきた子供についてだ。明らかに普通の子のようだ。どうしてこんな子がここに来たんだろう。
「ここの連中、死なないはずなのに、この子は死ぬんですよ。おかしいでしょ?」
それを聞いて、武は思った。やはりあの子は現実の世界から連れ去られた子供たちでは? ひょっとして、駆け込みサイトで書き込まれて、連れ去られたのでは?
「それ、本物の人間じゃないですか?」
「そんな・・・」
中年の男は呆然となった。まさか、この世界に生きた子がやって来るとは。ここに来てはならないのに。帰ってきたら犬にされてしまうのに。
「だったら、どうして死ぬんですか?」
中年の男は泣きそうになった。彼らが死んでいくのがかわいそうでしょうがない。ここではみんな死なないのに、どうして彼らが死ぬのか。やっぱり彼らは本物の生きた子ではないか?
「確かにそうですね。本物の人間かもしれん」
「やっぱり行方不明になった子じゃないかな?」
光も思った。きっと彼らは、駆け込みサイトで書き込まれ、連れ去られた子供たちだ。
「きっとそうに違いない!」
「そんな事があるんですか?」
中年の男は驚いた。こんな事が現代で起こっているんだ。自分の知らないうちに、とんでもない事が起こったな。何とかしないと、彼らは死んでしまうぞ。
「はい。かなり問題になってるんですよ」
「そんな・・・。そんなの許せないよ」
中年の男は思った。それは許せない。何が何でも助けないと。そのためには、何をすればいいんだろう。全くわからない。
と、光は下を向いた。自分が行方不明にしたのを言っていいんだろうか? そう悩んでいると、武が肩を叩いた。勇気を出して、言ってもいいんだよ。
「僕、その子たちを行方不明にしてしまったんです・・・」
「そうなのか?」
だが、中年の男は普通の表情だ。何も言われない。この人は優しいな。
「はい。とある掲示板に書き込んで、いじめだったらどこかに連れ去られるっていうんです。その子たちが、ここに連れられているのではと思って」
「うーん・・・、そうだなぁ・・・」
中年の男性は思った。だったら、ここに連れられた子供たちは、それで書き込まれた子供たちかな?
「とにかく、もっと探そう! それしかない!」
「そうだね」
武は思った。もっと情報を集めたら、きっとわかってくるだろう。早くその真相をつかまないと。
「頑張ろう!」
「ああ」
4人は再び歩き出した。歩いて行って、誰かに事情を聴いていれば、きっといい情報を得られるかもしれない。頑張っていこう。




