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4人は雪道を走っていた。その先には、白いハイエースがある。ハイエースは雪道を走っている。普通に運転しているのを見て、佐藤は思った。大輔はかなりの運転テクニックがあるんだなと。だが、そんな事に感心している暇はない。その車を追いかけないと。
大輔は気づいていた。誰かに追われているのを。大輔は見つかりたくなかった。自分にはやらなければならないことがある。それを誰にも知られたくない。何としても、ある男のためにも見つかりたくない。その男の希望に応える活躍をしたい。
ハイエースは次第に山奥に入っていった。敏別炭鉱鉄道はこの道路に並行して走っていたそうだ。だが、こんな雪原の中では全く痕跡が見当たらない。廃線跡は雪原の中に埋もれているのだ。そしてこの道路こそが、敏別炭鉱鉄道が廃線になった原因の1つだ。この道路ができ、敏別炭鉱鉄道の沿線に道路で行けるようになったことで、乗客がそっちに流れた。そして利用客が減少し、廃線になった。
山奥に入るにつれ、吹雪が強くなってきた。目の前があまり見えない。だが、かすかではあるがハイエースは見える。4人はそれを頼りに、車を走らせていた。ハイエースはどんどん山奥に入っていく。ハイエースはどこに行くんだろう。まさか、敏別湖の近くだろうか? だとすると、大輔は行方不明事件の何かを知っているのでは? 大輔こそ犯人ではないか? だんだん、大輔が犯人ではないかと思い始めてきた。
敏別湖まであと少しになったところで、視界からハイエースが消えた。どこに行ったんだろう。佐藤は首をかしげた。
「どこに行ったんだろう」
と、目の前にハイエースが現れた。ハイエースは山道を走っている。いったいどこに行くんだろう。全く予想できない。
「あっ、あの車だ!」
「あれか!」
「はい!」
佐藤はその車をじっと見ている。絶対に見逃してはならない。犯人かもしれないのだ。
「行くぞ!」
「うん!」
4人は慎重に車を走らせた。だが、ハイエースは離れていく。ハイエースの速度が速いのだ。
「くそっ、つけてきた!」
大輔もそれに気が付いた。だが、あと少しで逃げられそうな場所に来る。ここに逃げれば何とかなるだろう。
しばらく走っていると、また視界から消えた。どこに行ったんだろう。佐藤は首をかしげた。
「あれっ、いなくなった」
ふと、佐藤は思った。ここは敏別湖だ。どうしてあの犬が印をしていた敏別湖なんだろう。やはり敏別湖に何かがあるに違いない。
「どうして敏別湖に」
他の3人も気づいた。敏別湖といえば、あの犬が印をしていた場所だ。
「あの場所と一緒だ!」
「そういえば! とすると、伊藤大輔が行方不明事件に関与している? まさか、伊藤大輔が誘拐したって事かな?」
そして佐藤は確信した。行方不明事件は大輔の仕業かもしれないと。だが、決定的な証拠が見つからない。それが見つからない限り、逮捕できない。誤認逮捕だったら大変だ。
「いや、まだわからないよ」
「そうだな。でも、気にしておこう」
佐藤は悩んでいた。伊藤は一体どこに行ったんだろう。この先には、道路が続くだけだ。目の前には轍も見えない。大輔は一体どこに行ったんだろう。
「うーん・・・。見失ったな」
と、光はあるものを見つけた。それは、道路から外れた所に続いている轍だ。大輔はそこに向かったんだろうか?
「あれっ、轍が!」
佐藤も轍に気付いた。でも、その先に何があるんだろう。ひょっとして、大輔はここに逃げ込んだのかな?
だが、佐藤は知っていた。この先には敏別トンネルがある。行き止まりなのに、どうしてここなんだろう。
「本当だ! この先は敏別トンネル跡しかないはずで、この先は行き止まりなのに」
と、上田は思い出した。大輔がそこに入ってならないと言っていたのを。なのに、大輔は向かっている。どうして大輔は行っているんだろう。そこに入ってはならない何かがあるんだろうか? だから、行くなと言っているんだろう。
「行ってみよう!」
「はい!」
4人は轍に沿って走っていた。そこは舗装されていない道路で、すれ違いができないほどだ。
しばらく走っていると、轍の先に白いハイエースを見つけた。大輔の車のようだ。
「えっ、ハイエース?」
「あれ、伊藤大輔の?」
「あれかな?」
と、光は何かを思い出した。大輔が出て行ったときに乗って行った車だ。どうしてこんな所にあるんだろう。この中に大輔はいるんだろうか?
「そう! この車だ!」
4人はハイエースの横に停まり、車内を見た。だが、大輔はいない。そして、その中には誰もいない。
「あれっ、いない・・・」
佐藤は首をかしげた。大輔は一体、どこに行ったんだろう。
「どこ行ったのかな?」
と、光はハイエースの先にあるものを見つける。その先に光が全く見えないトンネルだ。そのトンネルはレンガ積みで、かなり昔に作られたようだ。
「トンネル・・・」
だが、武は入るのをやめようとした。大輔の忠告を知っていた。そこに行くと、二度と帰れないという事を。
「やめとけよ! 二度と帰れないって噂だよ」
光は驚いた。どうしてだ。どうして入ってはいけないのか? じゃあ、大輔はどこに行ったのか? あのトンネルに決まっているだろう。
「えっ、本当?」
「うん。って、誰が言ったの?」
「大輔さん」
それを聞いて、光は怒った。大輔は悪い奴に決まっている。だったら、どうして行ってはならないと言ったのか? きっとここに来てはいけない秘密があるに違いない。だから、行かなければ。その先には弘人と勝がいるかもしれないんだ。
「あいつが悪いやつだったら、絶対に何かがあるに決まってる! 行くぞ! 何があっても俺は構わない!」
光は武を引き離し、向かおうとした。それを見て、上田と佐藤も歩きだした。2人ともその先に行こうというのだ。
「そこまで言うのなら、俺も行く!」
「僕も!」
「俺も!」
結局、武も歩きだした。絶対に俺たちでその謎を解明してやる。そして、子供たちを救い出すんだ。
「みんな行くのか」
「ああ」
4人はトンネルの坑門の前に立った。そのトンネルの入り口はとても立派だ。その先には何も見えない。だが、行かなければ。
「じゃあ、行こう!」
「わかった!」
4人はトンネルの中に入った。そこ先にはとんでもない世界がある事を知らずに。