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 はやぶさは青函トンネルを抜けた。いよいよ北海道だ。北海道は雪景色だ。とても寒い。そして、美しい景色だ。そこはまるでモノクロの世界だ。北海道内には多くの炭鉱があった。だが、エネルギー革命によって閉山になり、今では全て閉山になってしまった。また、北海道の農村の開拓民のために多くの鉄道が敷かれた。だが炭鉱で栄えた鉄道も、開拓民のために作られた鉄道も、過疎化に伴い利用者が減少し、次々と廃止されている。ここ最近は、自然災害が原因の廃止もあるという。そこはまるで、過疎化、都市集中が進む日本の釈図に見えてしょうがない。将来、日本はこうなってしまうんだろうかと思うぐらいだ。


「ここが北海道なのか」


 光は車窓から北海道を見ている。光は別の想いで見ている。この広大な北海道のどこかに、弘人と勝がいるのでは? もしいたら、見つけ出さなければ。自分がその原因を作ってしまったのだから。今頃、弘人と勝はどうしているんだろうか? 寒い中、光が来るのを待っているんだろうか? もし待っていたら、早く再会して、温めてやりたい。


「ああ。喜んではいられないぞ。絶対に探すんだからな」

「ああ」


 みんな真剣な表情だ。観光目的で来たんじゃない。事件の真相を知るため、そして何より、さらわれた子供たちを救うためだ。絶対に救い出さなければならない。その為に、ここに来たんだ。


「すごい大地・・・」


 光はその広大な大地に見とれていた。東京都は空の広さが比べ物にならない。これが北海道なんだと思った。


「だろう。ここのどこかに弘人と勝はいるのかな?」


 弘人と勝と聞くと、光は真剣な表情になる。なんとしても助け出さないと。そして、一緒に帰ろう。


「だったらいいけど。だけど、救わなければ」

「そうだね」


 はやぶさは終点の新函館北斗にやって来た。北海道新幹線はここが終点だが、将来的にはここから先、新札幌まで延びる予定だ。だが、それはいつになるんだろう。開通したら、もっと便利になるのに。


 3人は特急に乗り換えた。幾部はここから特急と普通を乗り継いで向かう。幾部は特急が通過するので、どこかで不通に乗り換えなければならない。普通はとても本数が少ないし、幾部に停まる普通はもっと少ない。


 2人は特急の車窓から、北海道の景色を見ていた。海が見える。とても美しい。その先には漁船がある。函館港の漁船だろうか? 函館に行ってみたいな。だけど、今はそんな場合じゃない。早く救わないと。


 特急はゆっくりと路線を走っていく。駅と駅の間がかなり長い。北海道ではここ最近、廃駅になる駅が多い。昔はこの間に、いくつの駅があったんだろうか? それとも、昔からこんな距離なんだろうか? そして、昔はどれぐらいの人が住んでいたんだろう。全く想像できない。


 特急は札幌駅にやって来た。ここでは別の特急に乗り換える。これに乗って、途中の糠茶ぬかちゃで降りる。そしてそこから普通で幾部に行く。3人は駅に降り立った。ここはまるで東京のようだ。今までの簡素な風景は何だったんだろうと思うぐらいだ。まるで東京のようだ。だがここは北海道。とても寒い。3人は凍えた。だが、凍えていてはいけない。なんとしても彼らを救わないと。


 3人は別の特急に乗った。今度の特急は少し両数が少ない。それほど、利用客が少ないのだろう。車内は人がまばらだ。とても静かだ。


 特急はすぐに札幌駅を出発した。光は車窓を見ている。車窓からは、テレビ塔が見える。もうすぐあの辺りでは雪まつりが行われる。彼らを救って、事件を解決したら、一緒に雪まつりに行きたいな。その為には頑張らないと。


 札幌駅を出た特急は、線路を飛ばしていく。ここは規格がいいのか、かなり早い。光はその速さに驚いている。道内にも、こんなに速い電車があったんだ。


 だが、そんな特急も、旭川を出ると、スピードを落とした。ここからは非電化区間だ。徐々に建物が少なくなり、田園風景が広がるようになる。そして、徐々に乗り換える糠茶駅が近づいてくる。


 列車は糠茶駅に着いた。ここで3人は降りた。だが、向かいに普通電車はない。次の普通が来るまであと1時間ぐらいだ。糠茶駅は3人以外、誰もいない。昔はもっといたんだろうか? 糠茶には転車台の跡が雪に埋もれている。ここにはかつて、機関区があって、多くのSLがここに停泊していたんだな。北海道の鉄道の衰退を見ているようだ。


 3人は寂しいホームのベンチに座り、新函館北斗駅のコンビニで買ったおにぎりを食べ始めた。おいしいのに、とても寂しい。そして、寒い。北海道の冬がこんなに寒いとは。3人とも驚いている。


 しばらく待っていると、普通がやって来た。普通は単行だ。JR北海道のコーポレートカラーの黄緑の帯をまとっている。普通はゆっくりとホームに滑り込んだ。


 3人は車内に入った。だが、中には運転士以外誰もいない。とても寂しい。廃止にならないか心配だ。


 3人はボックスシートに座った。ボックスシートはふかふかしている。そして、下からは熱風が出ている。とても暖かい。外の寒さを忘れるぐらいだ。


 普通はゆっくりと糠茶駅を出て行った。結局その後、誰も乗ってこなかった。とても寂しい。だけど、これが日常なんだな。辺りには広大な雪原が広がっている。昔はどれだけの人がいたんだろう。全く想像できない。


 数十分走ると、大きな集落が見えてきた。いよいよ幾部に近づいてきた。ここはかつて、敏別湖への入り口で、敏別炭鉱鉄道が伸びていた場所だ。ここで降りよう。そして、敏別湖へのバスに乗ろう。

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