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冬休み初日の夕方、早く帰ってきた武は調べていた。このサイトは一体何だろう。もっと調べておこう。もうすぐ敏別に向かう。そのためにもある程度予習をしておかないと。
「ただいまー」
怜太の声だ。怜太が部活を終えて帰ってきたようだ。その声に武は気づいた。冬休みに調査のために北海道の敏別に行くのを伝えないと。
「おかえりー、今日から冬休みね」
怜太は2階に上がろうとした。と、そこに武がやって来た。怜太は戸惑った。どうして武がやって来たんだろうか? 帰ってすぐ迎える事はなかったのに。何か重要な話だろうか?
「なぁ怜太」
「どうしたの父さん」
怜太は首をかしげている。何を言いたいんだろうか?
「明日から父さん、敏別に行くから」
「どこ?」
敏別と聞かれても、怜太はどこかわからなかった。北海道っぽいけど、北海道の地名は全くと言っていいほどわからない。
「北海道だよ。あのサイトの鍵を握っているかもしれないから」
「本当?」
怜太は驚いた。まさか、そのサイトの秘密がいよいよ明かされる時が近づいているようだ。これで行方不明事件が解決するといいな。
「うん。見つかった犬の死体が、行方不明になってた中学生のものだったんだが、敏別湖の付近だったし、その湖に印がついてたんだ。だから、ここに鍵があるんじゃないかなと思って」
それを聞いて、怜太はハッとなった。少し前に話題になっていたあのニュースか。怜太はそのニュースを知っていた。人間の血だとわかってびっくりしたが、まさかあのサイトと関連があったとは。これは早く関連性を調べないと。
「そうなんだ。頑張ってね!」
里子も嬉しくなった。ようやくそのサイトの尻尾がつかめたような気がしてきた。これからそのサイトの謎が解けるといいな。
「頑張ってね。僕は行かないけど、サイトを調べておくから」
「ありがとう」
部活動のある怜太は東京に残り、そのサイトの事をもっと調べるつもりだ。少しでも武をサポートしたいと思っているようだ。
「わかった事があったら、連絡するからね」
「わかった」
と、怜太は肩を叩いた。武は驚いた。まさか、息子の怜太から肩を叩かれるとは。
「パパ、頑張ってね」
「うん」
武はリビングに向かった。そのサイトのカギが、敏別にあるかもしれないという事を、光に言わないと。ひょっとしたら、弘人と勝が生きているかもしれないからだ。
武は受話器を取った。ダイニングには里子がいて、晩ごはんを作っている。
「もしもし、担任の鈴木です。野村光くんはいますか?」
「はい、わかりました。光ー、鈴木先生から」
電話に出たのは光の母のようだ。母は2階にいる光を呼びに行った。
しばらくして、光が2階の部屋からやって来た。光は戸惑っている。いったい、誰からだろう。友人からだろうか? それとも、武からだろうか?
「もしもし鈴木先生、どうしましたか?」
「例のサイトの事だけど、北海道の幾部にある敏別湖に手掛かりがあるかもしれないんだ。一緒に行きたいか?」
武は誘ってきた。もし、一緒に調査したいというのなら、一緒に来なさい。でも、何があっても一切責任を問わないから。これはよーく考えておきなさい。自分の運命にかかってくる事だし。
「・・・、はい・・・」
「わかった。両親に相談してきなさい。もし、行ってもいいと言われたら、先生に連絡しなさい」
「わかりました」
電話が切れた。光の母は呆然としている。ひょっとして、弘人と勝に関する事だろうか? 2人の事で、何かわかったんだろうか?
「どうしたの?」
「あのサイトの手掛かりが北海道にあるかもしれないと聞いたんだ。行ってもいい?」
光の母は驚いた。どうして北海道なんだろうか? まさか、そこで弘人と勝は生きているんだろうか? もし探したい、謝りたいというのなら、行ってきなさい。ただし、どんなことがあっても知らないから。
「・・・、行ってきなさい。そして、救ってきなさい」
「わかった」
光はほっとした。母に認めてもらえた。認めてもらった母のためにもこれらを頑張らないと。
光は受話器を持ち、武の家に電話した。すぐに男が電話に出た。
「もしもし、鈴木先生ですか?」
「ああ」
武のようだ。武は真剣な表情だ。明日、北海道に向かうからだ。とても緊張している。
「野村光です。北海道に行きます」
「わかった。東京駅で待ってるぞ」
武は約束をした。明日の朝、東京に来てくれ。集まった時点で東北新幹線の乗り場に向かう。そして、北海道に出発だ。
「はい」
電話が切れた。武はほっとした。光も来てくれた。光は責任感の強い子だ。絶対に来てくれるだろうと思っていた。
「どうだった?」
武は横を向いた。そこには里子がいる。里子は心配していた。武だけでこんな厳しい環境の場所に行かせたくない。
「行くって」
「そうか。2人とも、気を付けてね」
北海道は寒くて、過酷な場所だ。寒いけど、諦めない気持ちで頑張って、謎を突き止めてほしいな。
「わかった」
と、そこに怜太がやって来た。怜太はその話を聞いていたようだ。
「俺、それからもサイトを調べるから、できる限りサポートするから」
「ありがとう」
これはみんなで解決する事件だ。家族でそれを調べていかないと。2人の姿を見て、武は決意した。2人が頑張るんだから、自分も負けられない。絶対に犯人を捕まえてやる。