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 その翌日、千尋の通っていた中学校は騒然としていた。犬の姿で発見されるという、前代未聞の事態に警察がやってくるほどだ。どうしてこんな事になったのか、全くわからない。朝から校長室や職員室は大騒ぎになっている。生徒は誰も近寄ろうとしない。歩くだけで回りが気になる。アナウンサーがやってくるかもしれないからだ。こんな事態、初めてだ。とんでもない事になったと誰もが感じていた。


 上田は廊下を歩いていた。先週と違って、職員室や校長室は騒然となっている。千尋の事がどれだけ衝撃的だったかを物語っている。


 と、職員室の前で、誰かが悩んでいる。千尋の同級生の山本だ。どうしたんだろう。


「どうした?」

「三村千尋くんの事、知ってますか?」


 山本はびくびくしている。何かを言いたいようだが、なかなか言えないようだ。


「ああ。こないだ犬の姿で死んでたって」


 山本は泣きそうになった。千尋の事がかわいそうでしょうがないようだ。だが、別の事を知っているようだ。


「知ってたか。あの子になんかなかったか?」


 だが、山本は言おうとしない。だが、上田はあきらめない。何でもいいんだ。話してみろよ。先生だぞ。


「どうした? 言ってみろよ」

「・・・、僕を・・・、いじめてたんです・・・」


 上田は驚いた。まさか、千尋が山本をいじめていたとは。だとすると、千尋は駆け込みサイトで書き込まれて、連れ去られたのかな?


「そうだったのか・・・。何か、行方不明につながりそうな事、しなかったか?」

「・・・、ごめんなさい。あのサイトに、書き込んでしまいました・・・」


 やっぱりそうだったか。ようやく上田は、あの事件の真相が見えたように見えた。千尋は駆け込みサイトに書き込まれて、連れ去られた。逃げ出そうとしたが、犬にされて、このような姿で発見されたというわけかな?


「あのサイトって、まさか、駆け込みサイトか?」

「・・・、はい・・・、ごめんなさい・・・。僕が原因で、こんな事になってしまって・・・」


 山本は泣いてしまった。自分のせいで、千尋が死んでしまった。誰にも見せる顔がない。サイトに書き込んだだけで、千尋が殺されるなんて。全く予想できなかった。


「・・・、つらかっただろうな・・・。もういいから、元気出せよ・・・」


 と、上田は山本の肩を叩いた。山本は顔を上げた。


「もう戻っていいぞ・・・」

「失礼しました・・・」


 山本は教室に戻っていった。山本は下を向いている。あとどれぐらいで元の元気を取り戻すんだろう。その時を待つしかないが、早く立ち直ってほしいな。


「どうでした?」


 上田は横を向いた。そこには同じく教員の寺西がいる。寺西も行方不明事件の事を探っていた。だが、なかなか真相にたどり着けずにいた。


「やっぱり駆け込みサイトが原因だって。これで点と点がつながったな!」

「よかったですね!」


 寺西は喜んだ。ようやくあのサイトの秘密がわかった。早くその真相を突き止めて、連れ去られた人々を救わないと。


「その死体がくわえてた地図には印があって、敏別という炭鉱で栄えた集落を指してたんだ。そこは今、湖底に沈んでいるという。そこに鍵があるのでは?」


 敏別・・・、聞きなれない場所だ。今は湖の底に沈んでいるそうだ。そこに何かがあるんだろうか? 湖底だとはいえ、何かがあるはずだ。


「きっとそうだと思いますね」

「ああ。鈴木先生にも報告しないと」


 鈴木先生? 初めて聞いた名前だ。別の中学校の教員だろうか? どうしてここで聞いた事のない人の名前が出てくるんだろう。


「鈴木先生?」

「別の中学校の先生だよ。この人も、例の駆け込みサイトの事を調べてるんだ」

「そうなんだ」


 別の中学校でも話題になっているとは。武にも頑張ってほしいな。


「さて、職員室に行くか」


 上田と寺西は職員室に向かった。職員室の周りには、多くの報道陣が集まっていて、校長や教頭を待っているようだ。




 その夜、武はリビングでニュースを見ていた。今日も行方不明事件の事ばかりだ。たまには別の番組、特にバラエティ番組が見たいのに。


 突然、電話が鳴った。夜に誰からだろう。まさか、上田だろうか?


「はい、もしもし」

「上田です」


 上田だ。あのサイトの事で、何かわかった事があるんだろうか?


「あっ、何かありました?」

「やっぱり、あのサイトが原因みたいです」


 やっぱりそうだったのか。でも、どうして犬の姿だったのか疑問に思う。


「だとすると、やっぱり敏別に鍵があるのかな?」

「そうかもしれないです。明日から冬休みですんで、北海道の敏別湖に行きます」


 そろそろ冬休みだ。冬休みを利用して、その真相を突き止めてみよう。そして、年明けにはみんなが元気に学校に行けるようにしよう。


「だったら、私も行きます」


 上田も行く事になった。全く予想していなかったが、大人数で真相を突き止めるのがいいと思っていた。


「そうか。一緒に探そう」

「うん」


 武は受話器を置いた。それを見て、里子がやって来た。何かがわかったかもしれないと思ったようだ。


「どうしたんですか?」

「別の先生から連絡があって、やっぱりあのサイトが原因らしくて、敏別湖に秘密があるらしいんだ」


 やはりあの地図の場所が怪しいんだな。ここに行方不明事件の鍵を握る何かがあるらしいんだな。


「そうなんだ。だとすると、そこで生きてるかも?」


 それを聞いて、里子は思った。そこのどこかで、連れ去られた人々は生きているのでは? もしそうなら、早く釣れj戻さないと。


「そうかもしれない。明日から冬休みだから、そこに調べに行くから」

「気を付けてね」


 里子は家事があるから行けない。武には頑張ってとしか言えない。絶対に無事に帰ってきてほしいな。


「ああ」

「今日はもう帰るから。じゃあね」

「じゃあね」


 武は2階に向かった。里子は武の後ろ姿を見ている。見ていてね武、絶対にあのサイトの事を言いふらしてやる! そして、彼らを救出するための何かを得たいな。

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