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 2日後、千尋の葬儀が行われた。葬儀には親族はもちろん、中学校の関係者が多く集まった。まさかの姿で見つかった事に、誰もが唖然となったという。どうして犬の姿で発見され、死んでしまったんだろう。それも、東京から遠く離れた北海道で。


「どうして、どうして!」


 千尋の母は泣き崩れた。どうしてこんな事で死ななければならないんだろう。ここまで愛情をこめて育ててきたのに。大人になり、結婚する姿を見たかったのに。


「なんで千尋がこんな姿なんだ!」


 父も泣いていた。詩を聞かされた日は、まったく眠れなかったという。もう千尋に会えないとわかった時は、現実味がなかった。だが、徐々にそれが現実だとわかってきて、涙が止まらなかったという。


「どうしてこんな姿で見つかったんだ! 犬じゃないか!」


 友人は千尋の遺影を見て、泣いていた。こんなにかわいい顔だったのに、どうして最後が犬なんだ! 誰がこうしたんだ! そして、どうして死ななければならない運命なのか。


「お父様、その原因、絶対に突き止めて見せます!」


 その声を聞いて、父は顔を上げた。千尋の担任の上田だ。上田も行方不明事件の事を聞いていた。だが、その原因をつかめずにいた。


「本当ですか?」


 上田は犬になって見つかったと聞いて、明らかにおかしいと思った。そもそもどうして犬の姿なんだろうか? わざわざ犬にする必要があったんだろうか?


「明らかにおかしいですからね」

「そうだなぁ」


 姓とも不振に思った。なぜ犬なのか?


「どうしていなくなったんですか?」

「最近、行方不明事件が多いですよね。それが原因だと思われるんですよ」


 上田は思っていた。千尋も例の行方不明事件で行方不明になったんだろうと。だが、全くその原因がわからない。


「それ、ですか・・・」


 たまたまその葬儀に来ていた武は、その言葉に反応した。今日は、行方不明事件で行方不明になっていた千尋の葬儀だと聞いて、やって来たようだ。ここに行けば、何か手掛かりをつかめるかもしれないと思った。


「どうしたんですか?」

「えっ、あなたは?」


 上田と同級生は驚いた。この人は誰だろう。上田と同じ教員だろうか?


「鈴木武、教員です。その件ですが、あるサイトが原因だと聞いてるんですが」


 それを聞いて、上田は呆然となった。あるサイトとは。この人はその原因を知っているんだろうか?

今すぐその話を聞かせてほしいな。


「あるサイト?」

「駆け込み寺ならぬ駆け込みサイトなんですよ。あの掲示板にいじめに関する事を書き込むと、起こした生徒が行方不明になるって話です」


 初めて聞いたサイトだ。聞くからに、このサイトが怪しい。このサイトが関わっているかもしれない。そのサイトを調べれば、何かわかるかもしれないな。


「それじゃあ、千尋は?」

「はい、それかもしれません。両親に聞いてみましょう」


 私たちはその事情を知らない。両親に聞けば、何かわかるかもしれない。聞いてみよう。


「そうですね」

「あっ、おじさん、おばさん!」


 同級生は千尋の両親を呼んだ。両親はその声に反応して、武のもとにやって来た。


「どうかしました?」

「三村千尋くんの事ですけど、いじめてたっていう噂、ありましたか?」


 それを聞いて、両親は首をかしげた。全くわからない。あの子は普通だった。いじめなんかしていないと言っている。


「いや、わからないですけど」


 だが、同級生はあきらめない。きっといじめを起こしているはずだ。起こしたから行方不明になって、こんな姿で発見されたんだろう。上田に何かあったのか、聞こう。


「生徒に聞いてみてください」

「わかりました。後日、調べます」


 上田は同級生の肩を叩いた。絶対にその真相を探ってみせる。もう犠牲者を増やしたくないから。


「任せましたよ!」

「はい!」


 武は考えた。やっぱりそのサイトが原因みたいだ。だけど、どうしてそのサイトが原因なんだろうか?


「要するに、その駆け込みサイトってのが原因なんですね」

「はい。うちの息子の怜太が見つけたんですけどね。まさか、それが原因だとは」


 武は驚きを隠せなかった。何でもない普通のサイトが原因で、こんな事が起こったとは。教員として、これらはあってはならない事。絶対に真相を突き止めよう。


「そのサイト、私にも調べさせてください!」

「わかりました。いいですよ。これがそのホームページです」


 武はそのサイトのURLを書いたメモを渡した。後日、そのサイトを調べてみよう。


 と、そこに住田がやって来た。住田はその事件の事をよく知っていた。


「あっ、こんにちは。私、その事件について調べております、住田と申します。これがそのサイトですか?ちょっとその事について、調べさせてください」

「お、お願いします」

「わかりました。調べてみますね。あっ、そうそう。その犬が、こんなのを持ってたんですよ。後で調べたら、敏別という北海道にあった集落らしいです。鉱山で栄えたんですけど、閉山になって、今はダム湖の底なんです」


 住田は地図にあった場所に印をつけた紙を渡した。


「そうなんですか・・・。もし、駆け込みサイトと関連があるのなら、そこに謎を解く鍵があるかもしれない」

「ですね。抑えておきましょう」


 と、そこに両親がやって来た。見慣れない男と話しているので、気になったようだ。どうして普通の葬儀なのに、こんな人もやってくるんだろうか?それほど大変な事だろうか?


「どうしたんですか?」

「テレビ局の人。駆け込みサイトの事を話したよ」

「そうなんだ」


 まさかテレビ局の人も来るとは。とんでもない騒ぎだったんだな。


「やっぱり、あのサイトが例の事件と関わりがあるんじゃないかと」

「これはあるかもしれないね」


 武は思った。これもあのサイトに原因があるんじゃないかな? 早く調べないと、どんどん犠牲者が出てしまうだろう。


「弘人と勝がいなくなったのを気にしていた、光にも言わないと」


 これは光に報告しないと。ひょっとしたら、敏別に秘密があり、そこに弘人と勝を探す手がかりが隠されているのでは?


「そうだね。ひょっとしたら、見つける鍵になるかもしれないから」

「うん。頑張ろう!」


 武は思った。これは北海道に行かなければ。北海道に行けば、何か重要な事がわかるのでは?

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