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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
76/252

後日談2(ASMR同好会)後半

「まあ、例の件はもういいです」

 天宮がため息をつく。

「実際、インカムから話の内容も聞こえていましたから。きっとあれが律さんの出した答えなんでしょう。私も間違ってはいないと思います。千春さんもいいですよね?」

「えっ、いやでも……うん」

 千春はまだ少し納得いっていないようだったが、飲み込んでくれた。

「それに制裁を加えるとしたら私たちではないでしょうし」

「それはどういう……」

「学校に来てからのお楽しみです」

 天宮が笑顔で言う。何それ怖い。

「それであの後風紀員会はどうなったんだ?」

「どうなったって言われてもですね、私たち外部からは変化は分かりません。というか律さんを除く全員が学校に復帰したのも最近の話なんです」

「そうだ! 美咲ちゃんは!? 美咲ちゃんは無事なのか」

「ええ、それも大丈夫です。梅野さんとの戦いで頭を打ったみたいですが、別状はなく先日退院されました」

「そうか。よかった。でもきっと美咲ちゃんも椿先輩ももう風紀委員会にはいられないだろうな……」

「まあ、そこはお二人と直接話した方がいいでしょう。律さんのお見舞いにいらっしゃるそうですよ」

「そうか、それならそこで話したほうが良さそうだな。あとは恵先輩だな、何か聞いてるか?」

「恵先輩はなんと昨日からASMR同好会のメンバーになりました! これでメンバーは5人、いつでも部になれますね!」

 嬉しそうな天宮に反して隣の千春は不満げだ。

「私はあの人ちょっと苦手……」

 まあ、千春は恵先輩と揉み合っているしいい記憶はないだろうからな。

「でもそうなると恵先輩は風紀委員会を辞めるのか?」

 結果的にああなったとはいえ、恵先輩は風紀委員会のことを嫌いなわけじゃないだろう。それなのに無理やりやめさせるのは心が痛い。

「それなんですが、今はやめなくてもいい方法を探しているそうです。もともと恵先輩に負担の大きい組織だったみたいでこれを機に見直しがされるそうで。具体的には委員長補佐をおくとか何とか」

「そういえば、いなかったな委員長補佐。桜木先輩はともかくとして他の役職には全て補佐がついていたのに」

「あそこは私からみても随分歪んだ組織ですから、そういうこともあるでしょう」

 御園先輩が遠い目をして言う。そうだ、御園先輩といえば

「先輩はASMR同好会に入らないんですか?」

「……きっと入れば楽しいのでしょうね。しかし、私にはまだやるべきことがありますから。それが終わってから考えさせてください」

 やるべきこと、きっと宗教部の問題で先輩なりにけじめをつけるのだろう。力になりたいがここは本人に任せるのが一番だ。今の先輩なら大丈夫だと思う。

「分かりました。じゃあ一つお願いをいいですか?」

「ええ、内容にもよりますけど」

「ASMR部ができたら、宗教部の部屋を部室として使わせていただけないでしょうか?」

「私は構いませんが……」

 先輩が考え込む。俺としてはこの人をまた一人にしたくないという思いがある。一人で使うにはあの部屋はあまりに広くて寂しいから。

「もちろん、宗教部が再結成さるのであればすぐに部屋を移りますから」

「そうですか。先輩なのに色々と気を使わせてしまっていますね」

「私も同じようなものだから気にするな御園君」

 綾乃先輩が気恥ずかしそうに笑う。

「いやあなたはもう少し気にしてください。アサギさん」

「ペンネームで呼ぶなあ!」

 いつもの綾乃先輩だ。

「それよりもです! 恵先輩どうします?」

 天宮が目をキラキラと輝かせている。

「どうするって? どういう意味だ?」

「何をとぼけているんですか! 恵先輩はあの日から律さんのペットなんですよ! そう言う話だったじゃないですか!」

「いや、でもあれは言葉のあやというか話の流れで仕方なく」

「……失望しました」

「え?」

 天宮が呆れ返っている。俺は別に間違っていないと思うが。そう思っていると天宮がカバンからのノートを取り出す。

「これは?」

「私と千春さんで考えた恵先輩にやらせたい100のことです。ルール上、正確には同好会ではなく律さんのペットですから律さん自身に命じてもらわないといけないんです」

「お前な、千春になんてものの片棒を担がせて」

 そう言いながら渡されたノートを見る。

「ええっとなになに、毎日部室に一番に来て全裸待機かつ来た人の足を舐める……って天宮お前な! 何してもいいてわけじゃ」

「それは千春さんです」

 隣で千春が黙って頷く。闇が深いな、黙っておこう。

「……1週間、猫耳と語尾にニャンをつけて生活。これは可愛いくていいな」

 恵先輩のその姿を想像する。これは採用だ。これぐらいなら勝者の報酬として許されるだろう。このラインだと書いたのは千春かな。

「あっそれが私です」

 こっちが天宮か。うすうす思っていたがこいつと俺の性癖って近いんだよな。凄く嫌だ。そしてまたページを天宮にめくってもらい別のページを見る。

「一ノ瀬君との絡みが見たい、撮影させてくれ……これは」

「ああ、それは私だ。一つだけ書かせてもらったんだ」

「却下です、全然反省してませんよね」

「そんなあ!! そのために頑張ったのに!」

 そんな不純な動機だったのか。この人って自分の活躍を台無しにしないと気がすまない病気か何かなんだろうか。

「他には全裸で首輪をつけて校内を散歩、全校生徒の前で土下座と敗北宣言、二度と閉まらなくなるまでお尻を開発……誰だこんなこと書いたやつ、頭おかしいんじゃー

 千春が真顔で手を挙げている。

「天宮、そのノートは燃やせ」

「そんなあ! ちゃんと全部読んでくださいよ!」

 このノートは闇が深すぎる。すぐに焼却してこの世から消さなければいけない。天宮がなぜか病室の棚にノートをしまっている。まあいいや、俺の方で処分しておこう。

「そうだ。恵先輩にさせることと言ったらASMR制作だ。『敗北委員長のおほ声服従セ○クスASMR』を録れるぞ! 加えてもう2本取ってくれる約束したからな。どうする!?」

 これは個人的に今回の戦いの報酬で嬉しいことランキングトップ3に入る。両手両足が動かせずに暇な間ずっと考えていた。

「それなんですが律さん。なんと! 今回の戦いと部活動設立の前祝いとして生徒会からダミーヘッドマイクをいただいています!!」

「!! お前、あれって100万以上するんじゃ」

「はい! 今回の件の責任を取って風紀委員会の予算大幅カットが行われたらしく浮いた分で学校から支給されるそうです。しかも申請すれば部室を防音にしてくれると」

「おいおい、いくら何でも大盤振る舞いがすぎるんじゃ」

「まあその代わり向こう3年の部費はなしと言われちゃいましたが、余裕でお釣りが来ます」

「本当にすごいな」

 おそらく例の生徒会長のおかげだろう。怪我が治ったら会いに行ってお礼を言おう。

「あっ、ASMRといえば恵先輩と一緒に千春録ってくれないか」

 恵先輩と約束した時に言った千春と恵先輩二人のASMR、本当はとっくに思い出していたがストレートにいうと怖いので話の流れでさりげなく聞く。

「は? なんばいいよると?」

「って綾乃先輩が言ってた」

「私はそんなこと言ってないが!? 罪をなすりつけるな!」

 危ない危ない、千春からの俺への信頼が下がるところだった。ここは綾乃先輩のライフで受ける。

 そんな会話をしていると天宮のスマホのアラームが鳴る。どうやら面会時間終了のアラームのようだ。

「あっもうこんな時間ですか」

「えっもうなのか?」

「ふふっそんな寂しそうな顔しないでくださいよ」

 同好会のみんなに笑われる。そんな顔をしていただろうか。もしそうなら全く俺も変わってしまったものだ。

「また来ますから。律さんも早く復帰してくださいね」

「みんなで待っとるけんね。ASMR作るんやろ?」

 そんなことを言いながらみんなは帰って行ったのだった。

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