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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
69/253

Magic here tonight

 天宮が後ろから俺の耳を塞ぐ。そしてほんの少し隙間を作りそこから囁く。

「リラックスしてください。あなたは私が合図と共に手叩くと意識が深い場所へと沈んでいきます。ほらゆっくり呼吸をして」

 大きく深呼吸をする。

「いきますよ。3…2…1…」

 パンッ

「これであなたの意識は深い場所へと落ちていきました」

 ……

「あなたの体が芯から熱くなっていきます。そこからどんどん力が湧いてくる。強く、速く、硬くなる。どんどん痛みがなくなる。全身に力が入る。あなたは飛ぶように軽くなる。あなたはもう大丈夫。あなたは強い。あなたは一人じゃない」

 パンッ


「……終わったのか?」

 意識がなかったが、催眠がうまく行ったことがわかる。全身から力が湧いてきている。

「はい、終わりました」

 天宮が笑顔で言う。気がつけば全身の痛みがなくなっている。俺はそのまま起き上がった。

「これはすごい。今ならなんでもできそうだ」

 全身に力が溢れている。なんなら今日一番の調子の良さかもしれない。体がとても軽い。

「よし、これならいける」

 そこで千春からインカムが入る。

「――ごめん、捕まった! みんな東校舎に向かったみたい」

「わかった、ありがとう。あとは任せてくれ。すぐに迎えに行くさ」

「律! 目を覚ましたと!?」

「まあな、色々あって完全復活だ。俺に全部任せろ」

 そう言いながら教室を出る。

「律さん! これを」

 天宮の手には一本のクナイがあった。

「私の分です。使ってください」

「ありがとう。天宮がくれたクナイなら百人力だな」

 天宮からクナイを受け取る。これで準備は万端だ。東校舎に向かってくる複数の足音が聞こえてくる。恵先輩もいるようだ。

「律さん、くれぐれも無理はいけませんよ。わかっていると思いますがあくまで催眠です。体へのダメージや負荷が消えるわけではありません」

「ああ、わかってるよ。任せておけ」

「さっきからなんか変じゃないですか? なんかいつもよりもキザな感じというか。深層心理がどうとか言いますし副作用でしょうか」

「そうか? 俺にはよくわからないが。まあいつもよりも力がたぎっているからそう見えるのかもな」

 足音が近い。グラウウドを経由してきているな。まだ校舎には入っていない。

「じゃあ行ってくる」

「はいーーってちょっと! どこから!?」

 パリンッ

 窓を突き破って一階に飛び降りる。

「は?」

 きょとんとする風紀委員会と恵先輩たちの顔がスローモーションで見える。その集団の目の前に着地した。

「さあ、夜はこれからだ。抱いてやるよ」

「全然意味がわかんないけど元気そうだね」

 恵先輩が早速抜刀の構えをとる。


「他の子達は東校舎内に向かって!」

「まだ東校舎が落ちていないことを妙だとは思わないのか?」

「……それはどういう」

 恵先輩は言われて気づいたのか、少し考え込んでいる。状況的に東校舎から俺が出てくることも千春が捕まったのにゲームが終わらないこともおかしい。なぜならあの桜木先輩が東校舎にいるからだ。

「天宮ちゃんを探すのに手間取って……いやそもそも最初の1部隊はどこに?」

 俺には聞こえている。東校舎の一階で鳴り響く反撃の狼煙が。俺は巻き添えを喰らわないように左へ一歩避ける。

 ドンッ

「ぐはっ!」

 東校舎の壁を突き破って俺がさっきまでいた場所に桜木先輩が飛んできた。

「桜木くん!?どういう状況!?」

「あら? 一ノ瀬さん。インカムで元気になったとは聞きますが随分と移動が早いですね」

 中から御園先輩が出てくる。手に聖職者らしからぬものが見えたが知らないふりをする。

「すみません……この女、かなり手強く……」

「わかった。僕が行くから、桜木くんは律くんをお願い」

「あれ? つれないですよ先輩。せっかくデートの約束してたのに」

「何を言ってー!」

 先輩の前に走り込む。いつもよりも数段早い。先輩の反応が遅れる。

 ヒュッ

「遅い!」

 抜刀がトップスピードになる前に刀とクナイが接触する。そのままクナイを振り抜き先輩を刀ごと飛ばす。

「ぐはっ! 本当にどういうこと!? こんなに力はなかったはず!」

「天宮の魔法ですよ」

「さっきから訳のわからないことばっかり……!」

 先輩が再び抜刀の構えをとる。不思議と今はそれが怖くない。

「他のみんなは桜木くんを支援して、御園ちゃんを止めて!」

「これでは流石の私も加減できませんよ? みなさん覚悟して来てくださいね」

「御園……マリア……!」

 あっちも再び戦いが始まった。

『開始から3時間経過をお知らせします』

 俺はもう一度構えをとる。最終決戦が始まった。

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