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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
61/251

本校舎の戦い(4)

 武器を構えて互いに睨み合う。

 杜若美咲は振り返ってダッシュした。

「逃げるのか!」

 後ろから梅野楓が追ってくる。しかし、狙いに気づいたのか立ち止まった。

「貴様っ! そういうことか!」

 梅野楓は道を引き返して窓際の側の階段へと駆ける。杜若美咲はそれを確認する。

「椿先輩! 一階から上がってくる奴らは今どこ!?」

「ごめん! ここからじゃやっぱり一階の動きは追えない。けど、もういつ上がってきてもおかしくないよ!」

 綾小路椿がいる体育館の屋上の高さはこの校舎の2階と同じくらいの高さだ。一番狙いやすいのは2階で、窓に近ければぎりぎり3階も狙える。しかし1階は下屋根が邪魔をして狙うことができない。

「了解!」

 杜若美咲が階段に向かうと廊下の両端から敵が向かってくるのが見えた。


「……いない!」

 梅野楓は驚きを隠せない。3階に登って窓際へ出ようとする杜若美咲を後ろから追えば、彼女は誰の邪魔もなく3階の窓際に出れてしまう。だから、側の階段を登って先回りすることでそれを防ごうとした。しかし、待っても杜若美咲は登ってこない。

 それよりも先に一階から上がってきた隊員が姿を見せる。

「隊長! 杜若書記はどこに!?」

「わからない……」

 考えられるパターンは主に二つ。

 一つは先に階段を上がった彼女が窓際への先回りは諦めて近くの教室に姿を隠したという可能性。この場合、捜索を始めた段階で隙をみて窓際に出られる可能性がある。なにせ窓際に出る道は三つもあるのだから難しくはない。

 二つ目は3階に登ったのではなく1階に降りたという可能性。階段には隠れる場所がないため3階にいない以上は必然的にそうなる。

「3本の廊下に一人ずつ残れ! あと2人は3階の中庭側の教室を! あとは全員で1階を探すぞ!」

 3階の窓際に続く道を塞ぎ、残った梅野楓を含む十数人で一階へと向かった。

 そしてこの捜索は大難航を迎える。


『1時間経過をお知らせします』

「煙幕がまだ残っているのか! トラップも邪魔だ!」

 一階の教室をくまなく探すがどこにもいない。途中でドローンが加わったが、煙幕やスプリンクラーなどによってろくな活躍できないまま一ノ瀬律の制御装置破壊によって活動停止となった。

「どうしますか隊長! 捜索範囲を広げますか!?」

「くそっ! 一階のどこかにいるはずだ! もっと捜せ!」

「はい!」

 しかし、いくら探しても見つからず梅野楓の焦りは募るばかりだった。

 最初に失敗して多くの兵を失うばかりかさっき高梨恵が向かった西校舎からこちらに援軍が来る始末。おかげでトラップにかかったままの人間を救出し人員を増やすことに成功したがそれも杜若美咲の捜索に浪費している。

 このままでは自身の存在意義が揺らぐ。彼女は必死に杜若美咲を探した。


「どこに行ったんだ!?」

 1階の捜索がほとんど終わりを迎える。

「じゃあ東校舎か本校舎から女の子誰か来れる?」

 高梨恵が菊門寺唯花を救出するために女子生徒を集めている。

「どうしますか? 隊長!」

「一ノ瀬律は柔道場か。6人で向かい柔道場の後ろの窓から一気に突入しろ!」

「しかしそれでは捜索の人手がほとんどなくなりますが……」

「構わん! 委員長がお呼びになっているんだぞ! さっさと行け!」

 そもそも勝敗を考えれば杜若美咲を捕まえる必要はない。したがって彼女が隠れた時点で他方へ加勢に行くのが正解だ。しかし、彼女との言い合いで頭に血の上った彼女にその判断はできない。それどころか探すのに時間がかかるほど、今までの時間を肯定するために引けなくなっていた。

「一階、捜索が終わりました!」

 もう本校舎にすらいないかもしれない。

「次はどこを探しますか?」

「くっ、2階だ! 2階を捜せ」

「しかし狙撃が……」

「グラウンド側の窓際は避けて捜していい! 早くいけ!」

「はい!」

 捜索の足が2階へと伸びた。

 本来は体育館の屋上にいる綾小路椿を捕えるのが早いが、体育館が激戦場となっており屋上にたどり着くことが不可能となっている。綾小路椿は服部綾乃と桜木桜花の戦いが始まる前に移動を済ませていたので辿り着くことができたのだ。

『2時間経過をお知らせします』

「もうそんなに! まずい……」

 梅野楓の顔は血の気が引いていた。

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