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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
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柔道場の戦い?(2)

 菊門寺先輩と俺の合作。下着をつけていない状態で大事な部分がギリギリ見えないようにシャツとスカートを乱す。もちろん作業中に俺が見るわけにはいかないので俺は後ろからシャツやスカートを押さえる役割だった。つまりこの芸術的なはだけ方はほとんど菊門寺先輩の所業になる。おかしな才能を発見してしまった。

「誰か女の子いる!?」

 恵先輩もこちらを見るわけにはいかず、手で目を覆っている。

「すみません! 女性の隊員はほとんどが梅野隊長と共に本校舎に入ってしまい、ここには男子しかいません!」

「菖蒲ちゃん! 今から柔道場に来れる?」

 恵先輩がインカムで呼びつける。

「いやちょっとそんな気分じゃないです。せっかく夏休みを費やして作ったドローンの複数同時制御装置が……」

「それはごめんね。今度、風紀委員会の方で補填するから」

「……菊門寺先輩の乳首とか別に良くないですか? 今はそんなことのために動きたくないです」

「これは無理そうだな〜。じゃあ東校舎か本校舎から女の子誰か来れる?」

 

 その後も、恵先輩がインカム越しに何度か会話をしていた。一応、目処は立ったようだ。

「なかなか悪どいことするね」

「こっちも必死なので。見損ないましたか?」

「ううん、全く。むしろこの勝負に負けたらどうなるんだろうってドキドキしてきたよ。勝負はこうじゃなきゃいけない」

 俺と恵先輩の間に沈黙が流れる。

「くっ、委員長! 私のことなど構わずにどうか!」

「いや無理だから! というかあんまり動かないでね!」

 菊門寺先輩の動きに合わせてシャツが揺れ大事な部分が見えそうになるが、なぜか絶妙に大事な部分は隠れている。この人はその謎技術だけで食っていけるのではないだろうか。

「というか唯花ちゃん、どういうつもり? その状態、唯花ちゃんが協力しないとできないと思うんだけど」

「まさか委員長は私がわざと捕まっていると!? そんな……ひどいです。私はみんなが来るまでこの男に全身を……ううっ」

 菊門寺先輩が渾身の演技をする。

「えっ? 本当にそうなの? 律くん」

「えっ! いやまあそうです」

「最低」

 恵先輩が冷たい声で言う。菊門寺先輩がしたり顔で俺の方を見ていた。この人、マジでなんなんだ。

 

 それからしばらく経って女子生徒が到着した。菊門寺先輩が時々変な声を出すせいでかなり変な空気になっていたので助かる。

「一ノ瀬律! 副委員長を離しなさい!」

 柔道場に入ってきた女子生徒が一人で警棒を持って脅してくる。恵先輩は後ろで目を覆いながらもこっちの様子を伺っている。

「嫌だね。というかそんなに近づいてもいいのかな」

 クナイで先輩のお尻を軽く叩く。

「ひゃん♡」

「変な声、出さないでください!」

「出ちゃうんだから仕方ないじゃない!」

 先輩と小さな声で会話するのを女子生徒が変な目で見ている。

「やっぱり鬼畜ね、一ノ瀬律」

「くっ! ああそうだ。大事な副委員長のお尻がどうなってもいいのか? もう二度と元の大きさには戻らなるかもな!」

 今回の勝負で俺の評判が急降下するのを感じる。半分は俺のせいだが。

「なっ! 何をするつもりだ!? 委員長、どうすれば!?」

「う〜ん、これは本当にまいったね。桜木くん、そっちはどう?」

「すまない……今は動けぬ」

 完全なこう着状態になった。そして互いに動けないまま時間が経過する。

『2時間経過をお知らせします』

 現在時刻は深夜2時。決着まで残り3時間になった。


「全員! 突撃!」

 柔道場の俺の背後の窓が一斉に割れる。

「くそっ!」

 複数の女性隊員が柔道場の窓を突き破って入ってくる。これを待っていたのか!

 菊門寺先輩を抱える。

「ひゃっ♡」

「ちょっと! 作戦通りお願いしますよ!」

「わかってるわよ!」

 先輩のお尻の感触がスカート越しに直に伝わってこれは想像以上に色々とまずい。

「副委員長! こちらへ!」

 風紀委員会の女子が手を伸ばす。しかし菊門寺先輩はその手を取らない。

「ああん♡ご主人様♡唯花は一生ついていきます〜♡」

「何をおっしゃっているんですか!?副委員長!」

 菊門寺先輩が俺の首に両腕をまわす。そんなセリフも設定も指示した覚えはない。意外とノリノリだなこの人。

「おい! 武器は使うな! 副委員長に当たるぞ!」

 敵が混乱しているうちに割れた窓から柔道場を脱出した。

「逃がさないよ!」

 後ろから恵先輩が追ってくる。だが、十分に時間は稼いだ。

 その場に菊門寺先輩をおろして逃げる。

「ああん♡ご主人様〜! 私を見捨てないで〜♡」

「みんなは唯花ちゃんに服着せて!」

 再び恵先輩と俺の鬼ごっこが始まった。俺は本校舎に向かった。

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