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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
56/252

体育館の戦い(1)

 グラウンド

「体育館で服部綾乃を発見しました! ですがこれは……」

「どうしたの?菖蒲ちゃん」

「体育館中にワイヤーによる罠が仕掛けられています。そして、一番奥のステージに堂々と彼女が」

「俺が……行こう……」

「いくら桜木副委員長でも危険です! 」

 桜木桜花は黙って体育館へと向かった。


「やはり来たか」

「……」

 ステージの上に立つ桜木桜花と服部綾乃が対峙する。

 ピンッ

 桜木桜花が一歩踏み出すと同時にトラップが作動する。飛んでくるのは十本のクナイ。

 しかし、彼はそれを全て体で受ける。当たったクナイがその肉体に弾かれ周りに散る。

 それに反応してトラップが作動する。爆発・椅子・クナイ・電気、そのほか多くの攻撃を受けながら桜木桜花が体育館中央に到達する。

「化け物だな」

 死なないように威力を格段に落としたトラップとはいえ、まともにくらって立っていられる人間などいない。無傷の人間などもってのほかだ。

「そろそろか……」

 桜木桜花が背中の大剣を抜く。服部綾乃も両手に刀を構える。

「行くぞ!」

 服部綾乃が天井高くまで跳ね上がり、体育館中央に向かって急降下する。

 キィィィィン

 全体重が乗った一撃を大剣が受け止める。そこから高速で2本の刀が桜木桜花の体を襲う。

「むっ……」

 初めて体に切り傷が入る。そこで大剣を振り下ろすが大振りのその攻撃はあっさり避けられる。

「おい何でそんな擦り傷で済んでるんだ。君は本当に人間か?」

「当然だ……」

 桜木桜花のギアが上がる。大剣を振るスピードが格段に上がった。横薙ぎを体を反って回避するが次の瞬間には大剣が空から落ちてくる。

「くっ!!」

 転がって回避、同時に小型の爆弾を投げる。桜木桜花は一瞬のけぞるがダメージはない。

 大剣が斜め下から薙ぎ払うように襲うが今度は避ける暇もない。2本の刀を合わせてこれを受ける。ダメージを逃すために衝撃と同時に後方に飛ぶ。まだ残っている後ろのワイヤーから瞬時にトラップではない足場用のワイヤーを選び着地した。

 そしてワイヤーの弾性を利用して弾丸のように桜木桜花目掛けて飛んだ。

 ゴッ

 鈍い音がする。

「ぐはっ!」

 飛んできた服部綾乃の攻撃を見切り、放った大剣が彼女の腹に直撃する。スーツと鍛えられた肉体がなければ致命傷の攻撃。上空に打ち上げられた彼女は呼吸困難になっていた。

 ピピッ

「ぬっ!」

 そこで桜木桜花の右腕が大きく爆発する。

「これ……は……!」

 攻撃を受ける瞬間に桜木桜花の腕につけた爆弾が爆ぜたのだ。彼の腕に初めて大きなダメージが入る。腕を小さく動かしまだ剣を振れることを確かめている。

 服部綾乃も何とか着地しその間に乱れた呼吸を整え体の状態を確認する。

 互いにまだ戦意を失っていない。

『1時間経過をお知らせします』

「ふっ……久しぶりに楽しめそうだ」

 ―これはまずいな

 序盤での想像以上の消耗に服部綾乃は焦りを隠しきれずにいた。

 ふぅ――――――

 呼吸を整える。

 体育館に緊張が走った。


 服部綾乃が足に力を込めて、桜木桜花に()()()()()()()

「煙幕……!?」

 体育館中に煙が充満する。もう服部綾乃の姿はない。

「なんのつもりだ……」

 煙は全く引く気配を見せずにその場にとどまり続ける。今日が無風なことも味方しているが煙自体に妙な粘り気がある。

 煙を振り払おうと大剣に力をこめるが異常に重い。

「ワイヤー!……あの時か」

 攻撃を受けた時、爆弾と同時に大剣にワイヤーを結びつけていた。桜木桜花の周りを素早く移動する影がある。そして、その影が動くたびに大剣が強く固定されるのを感じる。

 体育館ステージ側のワイヤーは入り口側のトラップと違いこの体育館と密接に結びつけてある。そして、大剣に結びつけたのはそのワイヤーの先端だ。それを動かすにはこの体育館ごと動かす必要がある。

「私の役割はお前を倒すことじゃない。みんなをお前から守ることだ」

 何が起きているのか理解した桜木桜花がすぐに大剣から手を離し距離をとる。もう少し遅ければこの体育館に体ごと固定されるところだったのを回避した。

 ビュッ

 煙幕の中からクナイが飛ぶ。トラップと違い彼女が本気で投げるクナイはガードした腕に突き刺さる。

「これは……」

 おそらく彼女がどれだけクナイを投げてきても致命傷にはならない。そして彼女も煙幕を残すため爆弾による派手な攻撃はできない。

 こう着状態。

 互いに決め手を欠いたまま時間だけが流れた。

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