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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
53/251

西校舎の戦い(1)

 グラウンド 中央

「あ〜あ、派手にやられているみたいだね梅野ちゃん」

「笑い事ではありません。被害は甚大です。下手をすると初手で勝負が決まった可能性が」

「ふふっ、それは困るね。まだ夜は長いのに」

 高梨恵、菊門寺唯花、桜木桜花の3人は煙の上がる本校舎を見ている。

 菊門寺唯花の隣では水野菖蒲(あやめ)が機械をいじっている。

「俺が……行くか……?」

 桜木桜花が背中の大剣に手を伸ばした。

「いやいいよ。桜木くんには綾乃ちゃんを相手してもらいたいからね。あっちで最も腕が立つのは彼女だ。逆にそれを倒せばどうとでもなる。それよりも他の校舎は?」

「手こずっているようです。東校舎はトラップとなぜか御園マリアに苦戦していると」

「御園マリア? 元宗教部の彼女だよね。彼女にどうして」

「わかりません、彼女の情報は少ないですから。何か特殊な兵器でも使っているのでしょう」

「ふ〜ん、まあいっか。東校舎は最初に仕掛けたトラップが切れればすぐに落ちるでしょ。西校舎はどう?」

「西校舎はどこよりもトラップがひどく、少しずつ解除しながら進んでいるそうですが数時間はかかると」

「……なら千春ちゃんか天宮ちゃんがいるね。律くんの性格を考えると彼女らを前線に出すとは考えづらい。罠だけ仕掛けて時間を稼ぎつつ隠しておくはずだ」

「西校舎を増員しますか?」

「いやいいよ僕が行く。そっちも綾乃ちゃんが見つかったら言って」

「わかりました。そろそろドローンの準備ができます。出来次第、手の回っていない他の設備と各校舎に一体ずつ回します」

「私がやってるのに自分がやっているみたいに言わないでください」

「いいでしょ少しぐらい格好つけても! 私は特技とかないし運動もできないかららここで戦況聞いているぐらいしかすることないんだから!ううっどうせ私は役立たずよ」

「いや泣かないでくださいよ。私が悪かったですから」

 流石に泣き出すとは思わなかったらしく水野菖蒲が狼狽えている。

「本営にこの3人だけを残して大丈夫かな……喧嘩とかしないよね」

「大丈夫ですよ委員長。喧嘩は同じレベルの人間同士でしか起きないので」

「ひどいわ!」

「俺は……どっちだ……」

「えっいやもちろん上ですよ。すみません」

「……俺こそすまない……驚かせたな……」

 全員の間に気まずい沈黙が流れる。

「ええっと……まあ大丈夫か」

 心配そうな表情をしつつも高梨恵は西校舎へ向かった。


 西校舎

「委員長! わざわざこちらまで申しわけありません」

「ううんいいよ。それでどう?見つかりそう?」

「罠が多く解除にもう少し時間がかかります。これほど凝った罠を大量に仕掛けているとは思いませんでした。ASMR同好会とはいったい」

「う〜ん、これは綾乃ちゃんが仕掛けたんじゃない? 東校舎や本校舎は避けて進めるレベルだって聞いたし、進行不能になる程強力で複雑な罠なら彼女が直接やったと思うな」

「そうですか……とにかくここはもう少しお待ちください」

「いやいいよ。突っ切るから」

「危険です!」

 しかし、制止の声がする頃にはすでに駆け出していた。手には一振りの刀を握っている。

 ピンッ

 ワイヤーが足にかかり四方からクナイが発射される。それらを全て弾き返す。しかし、弾きかえす挙動で再びトラップが作動する。今度はクナイではなく爆発が起こる。

「危なっ!」

 前に大きく飛び爆発を回避。地面からワイヤーの網が襲いかかる。宙で教室の窓枠に刀を引っ掛け身を捩って回避する。そしてその動きでまたもトラップが連鎖する。それを繰り返すこと数分。

「はあ、はあ、こんなところかな」

 息を切らしつつ高梨恵は2階へと到達した。高梨恵が罠を踏んで解除したことで後ろから他の隊員たちも追ってくる。

「よし10人は2階を探して。もう10人は本校舎で罠にかかっている子達を救助、動ける子がいれば一緒に東校舎に援護へ行って」

 高梨恵の指示で一気に隊員たちが動き出す。

「さて、僕は3階に行こうかな。千春ちゃんだといいな」

 そう言いながら鼻歌混じりに階段を登って行った。


 西校舎 3階

 ウィーーーーーーン

「おっナイスタイミング。菖蒲ちゃんは凄いなあ」

 階段を登った高梨恵の隣を一気のドローンが飛ぶ。高感度センサーが搭載されたドローンは些細な物音や熱を感知し敵を見つける。

 一階の突破には最低でも2時間はかかる計算だったため、その間に一ノ瀬律が村上千春と合流できると踏んで2階には罠は仕掛けられていない。

 ピピッ 物音を感知

「おっいいね」

 ドローンに従って教室の扉を開ける。

 人の姿はない。

「さあて、どこかな。ここまで来て何もして来ないってことは、やっぱり綾乃ちゃんでは無いみたいだね」

 ドローンがさらに教室の奥に進みロッカーの前で動きを止めた。

 高梨恵が一歩ずつ近寄る。右手は刀の柄を握っている。

 ―残り3歩


 バタンッ


 そこでロッカーが内側から思い切り開かれる。

「やった。当たりだ」

 中から村上千春が飛び出した。

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