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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
52/252

本校舎の戦い(2)

挿絵(By みてみん)

  階段を上がって二階に着く。

 西校舎に続く道と東校舎に続く道、それから入り口方面に続く道がある。 一階で慌てて外に出なかった連中が入口近くの階段を上がってきているな。3手に分かれてこっちに向かってきている。一番人数が少ないのは入り口に向かう廊下だ。しかし、真ん中を突破すれば東と西からすぐに追っ手が来る。

「包囲だ!急げ!」

 下から梅野の声が聞こえる。別働隊と合流したか!

 俺は一番人手が少ない入り口方面の道へと駆ける。

「こちら中央通路! 一ノ瀬律が来ます!」

 敵は女二人。武器は警棒。

 ポケットから別のクナイを取り出して前方に投げる。

「当たるか!」

 敵は避ける。それは目的ではない。クナイは窓を突き破った後に窓枠に巻き付いた。クナイに結ばれたワイヤーの先端にある機械を操り一気にワイヤーを巻く。

「どけ!」

 ワイヤーに引っ張られて一気に廊下を滑り抜ける。すれ違いざまに警棒を振られたが当たらない。

「よしっこのまま階段をー!」

 しかし階段の下の方から足音が複数聞こえる。

「くそっ、どこから」

 いや、考えてみれば裏口の別動体の足音が思ったよりも少ない。俺が二階に行った時点で半分は移動してたのか。

 俺は全ての通路を塞がれた。

 本当にまずい

 こんな序盤で俺が捕まれば戦況はかなり不利になる。それに作戦が実行できなくなる。

「そこから動くな!」

 動くなって言われて止まるバカがいるか! もう四方に敵が見えている。くそ、窓から飛び降りるか!? 2階から降りてもスーツがあるから耐えはするが、グラウンドには委員長や桜木先輩がいる。綾乃先輩のいる体育館はまだ使いたくない。

 どうするー!?

 頭をフル回転させる。


 “そこから動くな”?

 よく考えれば妙ないい回しだ。しかもこの声は聞き覚えがある。

 声がした中央通路を走ってくる別働隊を見る。そこには見覚えのある顔があった。

 美咲ちゃん!

 しかし、動くなって一体どういうー

「観念しろ!一ノ瀬律!」

 梅野が警棒を振りかざしている。左右からの敵も警棒の射程範囲に入る寸前だ。

 俺は咄嗟にクナイで防御姿勢をとる。

「セット」

 パキンッ

「ぐっ!なんだ!?次は!」

 梅野が咄嗟に飛んできた何かを警棒で防ぐ。銃弾?

「きゃあ!」

「なんで!」

 別動隊の後ろの方で悲鳴が上がる。

 俺は体勢を崩した梅野の横を通り、その中央通路の中へ飛び込む。

「ピンチになるのが早すぎだ!!」

「ありがとう!美咲ちゃん!」

 そこには警棒を持った美咲ちゃんがいた。周りには美咲ちゃんから不意打ちを喰らって倒れている隊員が数人いる。俺たちは背中合わせに廊下に立った。

「やはり裏切ったな!美咲書記いや杜若(かきつばた)美咲!!」

「先に風紀委員会をめちゃくちゃにしたのはお前らだろ! ファンクラブと混同しやがって!」

「セット」

 パキュン

「ぐっ!」

「窓際から離れろ!狙撃されているぞ!」

 狙撃? そんなの誰が? 耳に意識を集中させる。

 体育館の屋上に誰かいる。

「私は……一人の軍隊よ」

 一人で格好つける椿先輩の声が聞き取れた。あの人の好きなテレビがわかってきた気がするぞ。

「椿先輩!」

「お前この距離で人間が判別できるのか!?」

「今日は調子がいいから!というか、あの人あんなことできたのか!」

 喋りながら俺と美咲ちゃんは背中を合わせて敵を倒す。クナイは安全を考慮して切れ味はないが、叩きつけるだけで十分にダメージを与えられる。

「あの人は狙撃とモデルガンの改造ぐらいしかできないからな! なんか好きなテレビがどうとか言ってたぞ。あと、改造してるのはバレたらやばいから内緒にして欲しいらしい!」

 それはそうだ。あの威力のモデルガンなんか絶対に市販では売ってない。弾も明らかにBB弾じゃないし。

「揃いも揃って私の邪魔ばかりっ!」

「セット」

 パキュン  パキュン

「きゃあ!」

「痛っ!」

 中央通路に俺と美咲ちゃんがいるせいで死角に逃げ込めない隊員たちが次々と椿先輩の餌食になる。

「隊長!このままでは全滅します!」

「わかっている!全員、近くの階段から一階へ逃げろ!」

「その後はどうすれば!?」

「くそっシャッターがあるから中央は使わずにサイドから上がって挟み込め!」

 隊員たちが階段に駆け込む。しかし、半ば恐慌状態になっているため移動にもたつき、その間も椿先輩に狩られ続けいていた。

「大損害だな!60人で入った部隊が今や10人ちょっとだ。委員長に失望されるんじゃないか?」

「杜若っ!誰のせいだと思って!」

 梅野だけがその場に残る。戦って気づいたがこいつの動体視力と体力は異常だ。桜木先輩に次ぐ危険人物に間違いない。不意打ちの椿先輩の狙撃を防ぐこの化け物をここで仕留められるのは大きい。

「よしっ二人で連係して窓際に追いやろう。そしたら椿先輩の狙撃でやれる」

「いや、お前は今すぐ西校舎に行け。あっちがやばい」

 西校舎。千春がいる場所だ。確かにさっきから何の連絡もない。

「でも、美咲ちゃん一人でこいつの相手を? それにすぐに敵が回ってくる!」

「そのぐらい何とかする。それに一階は煙幕とお前らの仕掛けたトラップでそんなにすぐに移動できないらしいぞ」

 美咲ちゃんがニヤケ顔で耳元のインカムを抑えて言う。

「っ!菊門寺副委員長、杜若美咲と綾小路椿が離反しました! 今すぐあいつらの回線を切ってください!」

「早く行けっ! このバカとは話もある!」

「ありがとう! 美咲ちゃん!」

 俺は西校舎に向かって走る。2階からも通路が繋がっているためそんなに時間はかからない。

「千春っ! 応答しろ!」

 返事がない。俺は全力で走った。

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