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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
51/252

本校舎の戦い(1)

 グラウンドの方から一斉に足音が聞こえる。約20人の部隊が5つか。その場に残った人間が何人かいるな。委員長格だろう。

「よし、俺も行くか」

 下駄箱を通りグラウンドに面する本校舎の入り口に立つ。


「今から高梨恵の尻穴開拓が楽しみだなあ!!」

「一ノ瀬律だっ!!最優先に殺せ!A部隊とB部隊は私に、C部隊は本校舎裏に回れ!」

 殺しちゃダメだろ。まあいい、3部隊は釣れた。しかも梅野楓のおまけつきだ。俺は走って入り口のワイヤートラップを避けながら校舎内に戻る。

「こんな見え見えのトラップにひっかかるか!全員、訓練通り飛び越えろ!」

 40人の隊員が次々に本校舎に入る。思ったよりも早い。

「すぐそこだ!武器を使って構わん、必ず捕えろ!」

 一本に続く廊下を走り抜ける。後ろから凄まじい勢いで追っ手が来る。

 このタイミングだ。

 後方に“煙”と書かれた球を二つ投げ、足元には同じ“煙”と書かれた赤い球を投げる。それらはすぐに爆ぜ廊下に煙が充満した。

「ただの煙幕だ!怯むな」

 そう、それ自体はただの煙幕だ。しかしこれだけの煙が出ればあれが作動する。

 ウーーーーーーーーーーーーン ウーーーーーーーーーーーーン

 火災警報が作動する。同時にスプリンクラーが作動した。

「チッ、何だこれは。防火シャッターが閉まるぞ!急げ」

 警報音や煙幕のせいでうまく連携が取れていない。防火シャッタにー滑り込んできたのは数人だ。

「火事だ!全員、いったん校舎を出ろ!」

 閉まった扉の向こうで声がする。赤い煙幕球をこっち側で放ったため、遠くにいる人間は火災が起こっていると勘違いしている。

「違う!下がるな!くそっシャッターのせいで声が」

 まずが分断に成功した。

「こちら天宮、入口で混乱した人たちが次々とトラップにかかっています!今の作戦で10人近く削れたかと!」

「それはよかった。危険を冒した甲斐がある」

 天宮の仕事は東校舎から状況の把握だ。東校舎は立つ位置によって本校舎と西校舎、グラウンドが見渡せる。足が速く体力のある天宮にうってつけだ。


「何を呑気に話している?5対1だぞ。お前はここで終わりだ」

「考えてみろよ。これで終わるわけないだろ」

 地面に球を落とす。

 "電"

「わざわざスプリンクラーの中、走ってきたのに悪いな」

 バリッ

 スーツで保護された俺を除いた全員がショックで気絶ーーーーーしていない。

「あまりなめるなよっ!」

 梅野楓だけが立っている。危険がないように威力をかなり下げたせいだ。

「くたばれっ!」

 ビッッ

 警棒が頬を掠める。

 まずい、ここから早く逃げないと裏から回った部隊が来る。

「律さん!本校舎からの離脱はまだですか!? もう裏口を塞がれます!」

「一人取りこぼした!仕留めてからすぐに離脱する!」

「誰を仕留めるって!?」

 クナイで警棒を受け流す。そのまま脇腹に向けて蹴りを入れるが後ろに飛ばれ空振りする。

「バカがっ!そんな攻撃喰らうわけないだろう!?」

 くそっ絶妙な距離を保たれている。逃げるのに背中を向けるのは危険だが、仕留め切れる距離でもない。

「律さん!別働隊が裏口に着きました!他のルートを!」

「防火シャッターが裏目に出たな。お前は袋の鼠だ」

 この廊下のドアは風紀委員会が回って来れないように鍵を全て閉めている。横には逃げ場がない。裏口の前に階段があるがそこに行くにはまずこいつを仕留めなければ。

「なあ、お前らの委員長の秘密、教えてやろうか?」

「はっ、お前が知っていて私が知らないことがあるはずがない。私の動揺を誘うつもりだろうが残念だったな」

 そうだろうな、俺は委員長とあって数日の仲だ。ファンクラブの奴らに敵うはずがない。だが、俺に必要なのはこいつの一瞬の隙だ。マウント勝負で勝つ必要はない。

「委員長のお尻に小さなほくろがある」

「そんなことは知って……なぜ、お前が知っている?まさかお前すでにっ!?」

 ヒュッ

「ぐっ!手裏剣!?しまっー!」

 梅野が避けた反動で派手に転ぶ。電気で弱った体に濡れた足場であれば当然だ。俺はまだ綾乃先輩のように一瞬で武器を取り出せないから相手の隙を作る必要だった。

 最初の玄関でのブラフが効いたな。

 体を翻し、ダッシュで階段へ向かう。

「大丈夫ですか!?律さん!」

「ああ、今から2階に上がる。作戦とは違うが俺の方は何とかするさ。それよりも千春の方は大丈夫か?」

 本来であればここから俺が誰にも見られずに西校舎に移動する予定だった。そうすることで本校舎に敵を釘付けにしつつ西校舎に一人でいる千春を守れる。

「東校舎は御園先輩が暴れているので大丈夫です!」

「私もしばらくは見つからんと思う!」

「そうかよかった!あと、恵先輩のお尻はほくろがあるらしいぞ」

「死んでください」

 この状況でそれはわりと洒落にならないのでは?

「おい!一ノ瀬律だ!追え!」

 裏口から回ってきていた別動隊に見つかる。俺はすかさず階段を駆け上がった。

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