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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
49/253

勝負に向けて

「一ノ瀬君!これはどういうことだ!?」

「勝負って何のこと!?」

 綾乃先輩と千春が一斉に尋ねる。

 そうだ、2人にはまず昨日の集会でのことから話さないといけない。


「なるほど。それで風紀委員会と敵対を……私は元から風紀委員会と敵対しているようなものだから構わないが」

「私も大丈夫。そもそも律を無理やり風紀委員会に取られとる時点で遅かれ早かれやん」

「ありがとう2人とも。それでこの紙に書かれていることだが……」

 これは俺も知らない。そもそもなぜ勝負のことを生徒会が知っている? あの場には風紀委員会しかいなかったはず。恵先輩が手配したのか?

「律さんも初めて知るみたいですね」

「ああ、恵先輩たちが手を打ったのかもしれない。綾乃先輩はこの勝負、勝てると思いますか?内容はかくれんぼと書いてありますが」

 プロの忍に戦力差を加味して聞いておきたい。

「かなり厳しいだろうな。校内をある程度把握している人間が約100人がかりで23時から5時まで捜索すれば必ず時間までに見つかる」

「ですよね……」

「だが、気になるのはこの"活動停止"という文言だ」

 それは俺も気になっていた。風紀委員会は俺たち全員の発見ではなく、活動不能にすることが勝利条件だ。つまりこれは

「見つかっても活動可能であれば負けじゃない。どちらかと言うとケイドロなんかに近い感じですね」

「ああ、これなら私と一ノ瀬君で撹乱すればぎりぎり……」

 そこで綾乃先輩は言い淀む。やはり勝率は限りなく低いらしい。

「流石に6時間も2人で100人近くを相手し続けるのは厳しいですよね」

 天宮が不安げに尋ねる。言う通り、俺と綾乃先輩だけで夜通しそれを行うのはまず体力が持たない。

「私も戦います。2人が頑張っているのに隠れているだけなんてごめんです」

「私もみんなに助けられてばかりは嫌。一緒に戦いたかよ」

 天宮も千春も真剣だ。互いに険しい表情で綾乃先輩と顔を見合わせる。

「いや、それは危険だ。最近の風紀委員会の様子を見るに奴らは手加減しない。ルールにない以上、武器も持ち込む可能性がある」

「俺もそう思う。だから本格的な戦闘に巻き込まれたら2人はすぐに投降して欲しい。それを徹底するという条件で後方支援を頼みたい」

「……わかりました」

 天宮はまだ少し納得いっていないようだ。

「問題はあの桜木とかいう男だな」

「知っているんですか?綾乃先輩」

「もちろんだ。やつは危険すぎる。下手をすれば全員でかかってしても止められない可能性がある」

 たしかにあの人は必ず対策しないといけない。それこそただのかくれんぼならいいが、このルールは戦闘が視野に入っている。あの人の独壇場になってしまうだろう。

「そんなに強かと?」

「ああ、熊を素手で倒してるからな」

「それって人間なん?」

 まあ、ぎりぎりだな。しかし、これは敗色濃厚になってきた。

 最初に4人で桜木先輩倒すか?

 ……4人?

「ああ、そういえば御園先輩も協力してくれるそうです。危険な勝負なのでもう一度、話す必要がありますが」

「御園君が協力してくれるのか!?」

「えっはい。昨日、そういう話に」

 綾乃先輩は俯いてぶつぶつと考え込んでいる。そこまで驚くことだろうか。

「そうです! 御園先輩がいれば文字通り100人力です」

「どういうことだ?あの人、武闘派には見えないけど」

「それは一ノ瀬君の見る目がないな。彼女はとんでもないぞ。彼女がいるだけでこの勝負自体ひっくり返る可能性が出てきた」

 そんなに凄い人なのか。たしかにぶっ飛んでいる人ではあるが。

「しかし、やはり問題は時間ですね。夜通し6時間はキツすぎまー

「正確には6時間ではないわ」

 後ろから声がする。この声はおそらく

「菊門先輩!」

「私は菊門寺よ!お尻の穴みたいに呼ばないで!」

 つっこみ慣れしてるなこの人。しかし、6時間じゃないってどういうことだ。

「この勝負はあくまでかくれんぼ。ならばかくれる時間が必要でしょう。生徒会に確認したところ、23時から24時の1時間はあなたたちが隠れる時間だそうよ」

「確認って、この勝負をセッティングしたのは風紀委員会じゃないんですか?」

「何を言っているの?勝負はあなたから言い出したんでしょう。あなたが生徒会と話したんじゃ」

 互いに首を傾げる。ということは生徒会が独断でこれを用意したのか。なんで?

「まあ、いいわ。私からは以上よ。妨害行為と見なされても嫌だから」

 そう言って先輩は去っていった。そう思うなら放っておけばいいのにわざわざ教えてくれるあたりいい人だよな。

「しかし、これはかなり大きいぞ。1時間あれば罠を仕掛けられる。桜木を封じる手が打てる」

「綾乃先輩、罠の設置は私と千春さんも手伝います!来週まで教えてください!」

「わかった!3人いれば大掛かりなものも作れるな。一ノ瀬君、耳の調子はどうだ?君のそれはこの勝負で絶対に必要だ」

「経過はかなりいいです。来週までには本調子に戻せると思います」

「よし!本格的な作戦は今週末までに立てる。放課後は全員で準備をするぞ」

「律たちは風紀委員会の仕事はよかと?」

「大丈夫だ。風紀委員会の仕事に強制参加させれば妨害行為に見なされる可能性があるからな。あっちも何も言わないだろう」

 意外と最後の一文の妨害行為の禁止が効いている。おかげで心配していた日常生活での嫌がらせなんかも避けられそうだ。

「先輩、俺にクナイの使い方や戦い方を教えてください」

「……わかった。本当はあまり気が進まないが状況が状況だからな。かなりきつい鍛錬になるから覚悟しておけ」

「ありがとうございます」

 そして、この日から鍛錬と作戦会議が始まった。御園先輩に勝負の内容を話したところ

「それはよかった」

 と言っていた。とにかく、参加してくれそうだ。


 そして、あっという間に一週間が経ち水曜日になった。

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