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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
43/252

宣戦布告

 俺が列をかけ分けていく中、前方の朝礼台にいる恵先輩と目が合う。俺の意図を知らない恵先輩が笑顔になる。

「ちょっと聞いて! みんなに紹介した人がいるんだ」

 俺は先輩に促されるままに朝礼台に登り恵先輩の隣に立った。そこからは風紀委員会の一員の顔、そして天宮の顔が見えた。

 風紀委員会の人間が不思議そうな顔見ているなか、天宮だけは何かを察したのか不安そうな顔をしている。

「彼の名前は一ノ瀬律くん。先日、風紀委員会に入ってもらったんだ。彼は生徒会長にコネがあってね、彼の力を借りれば制服の件もすぐに解決できると考えているんだ」

 場がざわついている。素直に喜ぶ声、生徒会と繋がりのある新入りを怪しむ声、俺の扱いを話し合う声など様々な声が上がっている。

「律くんからもみんなに挨拶をお願いしてもいいかな」

「わかりました」

 俺は恵先輩からマイクを受け取る。

「ええっと、初めての方も多いと思うので挨拶をさせていただきます」

 全員が静かに俺の次の言葉を待っている。

「メス豚調教師の一ノ瀬律です」

 今日一番の混乱が集会を襲った。


「ちょっと!何を言っているの!?律くん!」

 恵先輩のいつもの余裕そうな表情は崩れ、額には汗が浮かんでいる。菊門寺先輩なんてびっくりしすぎて口を開けたまま何も言えないでいる。

「それで生徒会長は俺の雌奴隷だ」

「ちょっと、本当に何を言ってるの!?」

 場はほとんど収拾がつかないほどざわついている。

「メス豚調教師一ノ瀬律って私、聞いたことある!」

「なんだ、あいつ。早く壇上から下ろしたほうがいいんじゃないか!?」

「なんであんな奴が風紀委員会に!?」

 悪くない反応だ。

「皆さんの委員長を思う気持ちには感動しました。私の性奴隷に命じて、すぐにでも制服の

 ジェンダーレス化を進めたいと思います」

 場がざわつく。さっきとは違い、自分たちの野望が叶うと思ったのか喜びの声が増えている。

 ただ、当の恵先輩は表情を変えない。そして、マイクに声が乗らないように俺に問いかける。

「律くん、どういうつもり? 会長とは無関係だって言ってたでしょ」

 俺はこれを無視して風紀委員会への呼びかけを続ける。

「しかし、これには条件があります」

「条件?」

「何を言い出すつもりだ?」

「あいつはなんなんだ!?」

 空気が再び澱む。ころころと変わる委員会の連中の様子を見て笑みが溢れる。天宮の言う通り俺には鬼畜の一面があるのかもしれない。

「条件は風紀委員長“高梨恵”を性奴隷として私のハーレムに加えることです」

「はあ!?」

 恵先輩は顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせている。委員会の人間はどうかというと、まあ言うまでもない。缶やペンが飛んできた。

「ふざけるな!帰れ!」

「帰っても構いませんが、私がこのまま帰れば皆さんの野望は永遠に叶いませんよ。それでもいいんですね?」

「ふざけるな!お前は何なんだ!?」

 しばらく風紀委員の奴らが騒ぐのを聞く。全く俺に物を投げるのはいいが、隣の先輩にあったらどうするんだ。そう思いながら半身で覆うように恵先輩を庇う。

「ねえ!本当にどうしちゃったの!?」

「どうもしてません。ただ先輩はこの場所、居心地悪くありません?」

「……それは」

 先輩が言い淀んで下を向く。

「委員長に近づくな!」

「離れろ!変態!」

 飛んでくるものどんどん大きく、鋭利になっていく。いよいよ収拾がつかない。桜木先輩が背中の大剣に手を伸ばしているのもかなりまずい。

「だが、そう言っても皆さんは納得しないと思います。だから、後日風紀委員会の皆さんと俺で勝負をしましょう。皆さんが勝てば無条件で制服のジェンダーレス化を、俺が勝てば恵先輩をもらいます」

 天宮に逃走の目配せをする。そして、俺は壇上から飛び降りた。

「捕まえろ!」

「近いやつから追いかけろ!」

 後ろからすごい形相で風紀委員会の人間が追ってくる。しかし、それよりもまずいのはー

 先にいる大剣を上段に構えた桜木先輩だ。

「……避けろよ」

 豪速で振り下ろされる大剣。

 俺は前方に身を宙に投げ出すことで何とか回避する。しかし、大剣が地面に接触する衝撃で前に大きく吹き飛ばされた。

 その先で人影と遭遇する。

「ゲホっ、大丈夫ですか!?律さん!」

「天宮こそ大丈夫か!すまないな!こんなことになって」

 すぐに体を起こして巻き上がった砂埃で不明瞭な視界を何とか走る。

「本当ですよ!一言言ってくれればいいのに」

「いや、それは本当にすまない。体が動いてしまって」

「まあいいです。私はいまだに状況がうまく飲み込めていないので後で説明お願いしますね」

「いや、流石に俺の独断でこんなことになって同好会を巻き込むわけには」

「それ禁止って言いましたよね?」

 天宮が真面目な顔で言う。こいつには本当に頭があがらない。

 そうして、俺たちは西校舎、バリケードのある御園先輩の部屋に向かって全力で走った。

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