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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
31/251

脱出

 部屋に残された俺と美咲ちゃん、椿先輩には微妙な空気が流れていた。

「どうするの?美咲ちゃん」

「どうもしない。こいつは変態の痴漢なんだから当然の処置だ」

「いやだってそれは冤罪だって……」

 美咲ちゃんが椿先輩の方を睨む。

「今さっき、やっぱりこいつは痴漢してたって連絡があったでしょ」

「そんな連絡……。ううん、ごめんね。美咲ちゃんがそうするならわかった。私も協力する」

「……すみません。椿先輩」

「いいの。いつも私の方が迷惑かけてるんだから。それに私もこうすべきだと思うの」

 二人の会話から察するにどうやら俺は助けられたらしい。

 そして、美咲ちゃんが俺のそばまで近づいてくる。

「どうして、俺を……」

「別に理由はない。ただ、そうするべきだと思っただけだ」

 周りに聞こえないように小声で会話する。

「すまないが、拘束を解いてもらえるか」

 美咲ちゃんが天上の隅の方を見ている。

 そこには監視カメラがあった。

「私たちは昼食をとりに行く。1時間は戻ってこないかもな」

 立ち上がって、美咲ちゃんがわざとらしく大きな声で言う。

「そうね!その間に脱走されたりしても止められないよね!」

 椿先輩、それはあまりにわざとらしいだろう、と思っていると美咲ちゃんが椿先輩に蹴りを入れてくれた。美咲ちゃんとは話が合いそうだ。

 そして、部屋から二人が立ち去った。


「大丈夫ですか! 律さん」

 二人が立ち去った後、天宮と千春が部屋に駆けつけてきた。

「ああ、大丈夫だ」

「酷い、びしょ濡れじゃないですか!」

「いや、これは手違いみたいなものだ。特に酷い目にはあってないよ」

「右腕のギプスも勝手に外されて、椅子に縛るなんてありえません」

「細かく動かせないだけで実際はほとんど治ってるしいいんだ」

 美咲ちゃんと椿先輩のことを考えると、あまり悪く言って欲しくない気もする。椅子に拘束したのだって最初に捕まえてきた二人組だし。

「というか、お前ら俺のことを見捨てたよな」

「いや、あれは……」

 俺の手足の拘束を解いている天宮と千春が気まずそうにする。

「あの場で助けるのは無理やと思ったったい。だから、あの小さか先輩を説得した方がよかと思って……」

 まあ、言われてみればそうだ。あの場で3人が仲裁に入ったところで事態をややこしくするだけだっただろう。

「じゃあ、俺のことをロリコンだって思ってないんだな?」

 二人がさっと目を逸らす。こいつら……

「ま、まあ早く部屋を出ましょう。綾乃先輩が外で見張りながら待っています」

 釈然としないが、仕方ない。

「細かい話は律さんの家で聞かせてもらってもいいですか?」

「いや、特に話すことは……」

 あるにはあるが、どこまで言うべきか。今回の件は俺と生徒会長、それから風紀委員会の問題だ。こいつらを巻き込むべきではない。


「律さん、嘘はつかないでくださいね」

 天宮は俺の拘束を解く手元を見ていて目を合わせない。だが、その目元と声のトーンから天宮が真剣であることは伝わる。少しだけ怒っているようにさえ感じた。

「ああ、わかった。話すよ」

 そうして、俺たちは懲罰房を後にした。

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