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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
風紀委員会編
29/251

懲罰房にて

「大人しくしろ!」

 風紀委員会の二人組が俺の体を抑える。

「違うって! 本当に何もやってないんだ!」

「いいから暴れるな!」

 くそっ、全然話を聞いてもらえない。このままだと懲罰房に連れていかれる。

「一体、何をやったんですか? 律さん」

 天宮! それに千春と綾乃先輩もいる。3人に仲裁してもらえばなんとかなる!

「お前ら、こいつの友達か~? こいつが私に痴漢したんだよ。ろりこん痴漢なんだよこいつ」

「ろり……こん」

 どうした千春? 様子がおかしいぞ。ロリコンなんてそんなわけないだろう。そんな目で見ないでくれ。

「どうします?これ」

「くっ、私が先輩としてもっと指導すべきだったんだ」

「ロリコンって本当やったんやね……」

 まずい、3人がこそこそと話し始めている。明らかに俺を()()()()()()ではなく、()()()()()()()の話し合いだ。しかも天宮のやつ、俺のことをこれって言いやがった。

「なんだ、お前たちはこいつの知り合いか?」

 風紀委員の女が天宮達に尋ねる。頼む!みんなー

「いえ違います」

「そうか。よしっそいつを連れて行け!」

 風紀委員の二人に連行される。あいつら、絶対に許さない。

 

 懲罰房

 懲罰房なんて言うからどんな恐ろしい場所かと思ったら実際はただの教育指導室だった。教育指導室のことを懲罰房って呼んでる風紀委員、やばすぎるな。

 部屋はカーテンが閉まって暗いが、それ以外は普通だ。真ん中に大きいテーブルがあり周りには棚やその上に給水機なんかがある。

 よって異常なのは椅子に縛られている俺だけだ。

「あなたがロリコン変態痴漢の一ノ瀬律君かしら?」

 女が入ってくる。黒のボンテージに帽子、鞭を持ったポリスのコスプレをしている。胸元からは豊満な胸の肌色が見えていた。

 風紀委員会って頭がおかしいやつしかいないのかな……

「ロリコン痴漢から変態が増えてます。そして、ロリコンでも痴漢でもありません」

「……苦悩の梨って知ってるかしら?」

 ー苦悩の梨

 中世ヨーロッパで用いられたとされる拷問器具。口や肛門に挿入して内側から徐々に広げることで、体内から人体を破壊する。

「苦悩の梨なんて使ってどうするつもりだ?」

「……そう、知っているのね」

 そう言って、女は部屋から出る。くそ、俺はどうなってしまうんだ。

 部屋の外から女の声がする。

「ねぇ!知っているって言われたんだけどどうしたらいいの!?」

「いや、別にいいだろ! どうせ苦悩の梨なんて学校には無いし、あっても使うわけないんだから!」

「でもでも〜、この前見たテレビだとそうやって説明してから怖がらせて自供させるって言ってたもん!」

「どんなテレビ見てるんだ!?いいから早く戻って事実確認してこい!」

 女が再び部屋に戻る。

「あなた、ここから出られるとは思わないことね」

「……」

 普通に出られそうな気がしてきた。

「本当は痴漢したんでしょう?正直に言えば、命だけは助けてあげる」

「いや、痴漢で死刑にはならないでしょう」

「舐めたこと言ってんじゃねぇぞ!」

 先輩が手元のコップに入った水を俺にかける。

「あっ……」

「……」

 先輩の顔がみるみる青ざめる。そして、例のごとく部屋の外に出る。

「ねぇ!どうしよう!?お水かけちゃった!」

「何やってるんだよ!事情聞くぐらい何で普通にできないんだ!?」

「ごめんね。この前見たテレビで刑事さんがやってたから」

「何のテレビだよ!?というか、謝りに行くぞ!」

「だめ、私が行くから美咲ちゃんは入らないでぇぇ!私の唯一の仕事が無くなっちゃうぅぅ!」

「じゃあ、早く謝ってこい!次やらかしたら私が行くからな!」

 女が戻ってくる。

「あら、そんなに濡らして……期待しちゃったのかしら?」

「何のテレビだよ!?」

 ついに美咲ちゃんが入ってきた。


「ええっごほんっ。私は風紀委員会書記2年の杜若美咲(かきつばたみさき)。こっちの馬鹿が書記補佐3年の綾小路椿(あやのこうじつばき)だ」

「お水かけちゃってごめんなさい。私、やらなきゃって思うとどうしても空回りしちゃって」

 そう言いながら椿先輩がピンク色の花柄のハンカチで俺を拭く。全く服装に合っていない。

 というか、こっちが3年生なんだ……

「ええっと、3年生の女子生徒とトラブルになったそうだが話を聞いてもいいか?」

「はい、お願いします」

 俺は具体的に事の経緯を話す。

「なるほど……まぁ、多分そうなんだろう。あっちの生徒の話は内容がちぐはぐで困ってたんだ。ただ、歩きスマホは感心しないな」

「気をつけるんだぞ」と片方のおさげをいじりながら美咲ちゃんが加える。

 久しぶりに話が通じる人が来た嬉しさで涙が出る。

「ありがとうございます。美咲ちゃん」

「何で泣いてるんだお前は!?あと、美咲ちゃんって言うな!」

 久しぶりに誰かにつっこんでもらえた気がする。


 美咲ちゃんが耳元のインカムを手で押さえる。

「うん、了解した。こっちも大丈夫だ」

「どうかしたんですか?」

「ああ、あっちも解決したみたいだ。周りの人の協力でどうやら3年生の誤解だったってわかったらしい」

 周りの人の協力……

 天宮達が何か手を打ったのだろうか。そうだとしても一言言ってくれればいいのに。

 美咲ちゃんが手足を縛った紐を解こうとする。

「時間とって悪かったな。じゃあ、これでー

 コンコン

「僕だ」

 ドアが開くと、視聴覚室で会った"高梨恵"先輩がいた。

「委員長!どうしたんですか?」

「美咲ちゃん、拘束はそのままで」

「えっ?いや、しかし彼は無罪でー」

「いいから」

 そう言うと、恵先輩は俺の前に座る。

 そして

「律くん。君に風紀委員会に入って欲しい」

 と言った。

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