誕生日プレゼント
脳内コンピュータが即時に叩き出した答えは、無視。こんな場所で天宮と出会しても何のメリットもない。
「あっこっちのエネマグラもいいですね!」
誰かがクリスマスにアダルトグッズを持ち帰る憂き目にあうことは確実だが、しかし俺には関係がない。
「でも君、クリスマスにこんなの用意したら御園ちゃんがブチギレるんじゃないか?」
そうだ、頑張れ帰零先輩。せっかくのクリスマスに、俺の家で刃傷沙汰なんてごめんだ。
「御園先輩はクリスマスは施設のクリスマス会に顔を出すそうですよ。なら、私たちも何かお手伝いしようかと思ったんですが、やんわり断られました」
「教育に悪いからね」
「流石に子供達に爆乳エロ漫画家はよくないですよね。あっこのコンドーム、律さんに似合うかもしれません」
「彼はもう少し小さい方がいいんじゃないかい」
もうあの方向から修正がなされることはないだろう。俺は早々に諦め、千春を引っ張ってその場を後にした。
「今年のクリスマスは荒れそうだな」
「まあ、清乃ちゃんも意外と常識はあるし、大丈夫やない?」
「そうか? 俺もそう思っていた時期があったが、実は本当に頭がおかしい気もするぞ」
「……まあ、大丈夫やろ」
そんな嫌疑を残しつつ、向かったのは再び他にお店へと移る。
「天宮が何を欲しいとか考えてみるとわからないものだな」
「たしかによく考えたら趣味とか知らんね」
趣味は……オナニーではないだろうか。絶対に言わなけど。
それからさらにデパートを出て、街の中を見回って──
「「疲れた……」」
全く決まらなかった。
「もうあれでいいんやない? 最初に律が言ってた」
「エロ漫画か?」
椅子にがっくりと項垂れて座る千春が、目を合わせずに頷く。
「いやダメだろ」
「律に言われるとすごくもやっとする」
しかし、千春もこの調子ではなかなか難しい。天宮が欲しがってた物……
「あっあるかも」
「え……?」
それから俺たちは目的の物を買うためにお店へ向かった。
『律さん、クリスマスプレゼント楽しみにしてくださいね』
なんて不穏なメッセージも来ていたが、既読無視した。




