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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
同好会設立編
21/252

one more miracle

 戻ってくると約束した彼は変わり果てた姿で私達のもとへと帰ってきた。

「ダメです。こんなのダメですよ律さん!」

 涙で視界がぐちゃぐちゃになっている。

 応急処置と搬送の準備が行われているが、二人とも意識を取り戻す様子がない。

「君、下がって」

 救助隊の方の抑制にもどこか覇気がない。

 空気が澱んでいる。

 全員が二人の命を繋ぐために必死になっているが、どこかで諦めに近い空気が流れている。サイレンが至る所から聞こえる。

 

「……嫌だ」

 また、居場所がなくなる。

「嫌だ」

 “すぐに治るからね、清乃”

「ふざけるな」

 みんな、私を一人にする。

 体の奥から怒りが込み上げる。己の無力さ、不条理な現実、母と同じ嘘をつく初めての本当の“友人”。

 

 悲しみが吹き飛び、怒りでいっぱいになる。

 彼の元へ進む。

 制止しようとする周りを振りはらう。

 

 "一ノ瀬律"の前に立つ。

 そもそもどうしてこいつは全裸なんだ。

 こっちがこんな思いをしているのに、間抜けな格好で寝やがって。

 何よりムカつくのはこのち○こだ。

 空気も読まずに、「もう無理です、疲れました」って感じでしょぼんとしている。

「ちょっと何してるの!?君!」

「おい、天宮君!何を!?」

 もう怒った。絶対に許さない。

 一ノ瀬律のち○こを思いっきり握り潰す。

「おっほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡」

 彼の右耳にありったけの音量で叫んだ。

 

 


「~~~~~~~~~っ!!!」

 股間と耳への凄まじい衝撃で目が覚める。

「天宮……!お前、何しやがった……」

 目の前でぐちゃぐちゃの顔をした天宮が俺のち○こを握っている。痛い痛い!

「離せ、おまー」

 鋭い痛みー。股間の痛みとは比にならない痛みが全身を駆け巡る。

「律さん!」

 天宮の手に力が籠る。お前、いいから離せって!

 そう言いたいが、全身の痛みで言葉が出ない。

「いいから離しなさい!いつまで握ってるの!」

 俺の治療にあたっている女性が叫ぶ。ありがとう。

「意識戻りました!すぐに搬送します!」

 担架に移される。

「ち、はるは?」

 千春はどうなった? 無事なのか? 俺よりもずっと衰弱していたはずだ。

 天宮が向こうを見て、何か聞いている。

 こちらを振り返った天宮が涙を流している。千春はどうなったんだ。

「千春さんも今、呼吸を取り戻したそうです!」

 満面の笑みで天宮が再び俺のち○こを握る。

「あなた、本当にやめなさい!どうして重症患者の股間を握るの!?」

「ごめんなさい!」

 天宮が慌てて手を引っ込める。

 このお姉さんには後で直接お礼を言おう。

 

 ー千春も無事。

 そうか、全部うまくいったのか。本当によかった。

「―さん、―ん」

 意識が遠くなる。

 そのまま、俺は病院に運ばれた。

 

 こうして、同好会設立をめぐる一連の騒動は幕を閉じた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

同好会設立編は後日談が数話あります。サドの看護師が出てきます。

書き上がり次第アップしますので、どうかお付き合いください。

その後は新章「vs風紀委員編」が始まります。

どうぞよろしくお願いします。

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