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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
恋の柳川紀行編
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旅行計画

「三連休の初日、朝9時の飛行機に乗るけん、朝は早くなるけど大丈夫?」

「ああ、もちろん。生徒会の仕事で早起きには慣れている」

「……」

 言葉に出さなくても千春の言いたいことはわかる。

「なんで会長も行くことになっとるん?」

 言葉に出した。

 会長のイラ○チオは危機一髪、千春の目から逃れた。

 とはいえ、先日の一件から会長が旅行についてくるのを飲み込めないのもわかる──俺も飲み込めていない。

「いやわかる。わかるぞ。どうして先日まで擦った揉んだの私たちが一緒に旅行を、と言うことだろう。しかし、これから行く柳川は水路が有名、この旅行で諍いを水に流すのはどうだろう」

「いや、そんなこと言われても」

「ふむ、言いたいことはわかる。では、どうだろう、今回の旅費は私に負担させてくれ。自慢じゃないが実家は太い」

「……」

 まあ、俺は別に文句はないし旅費が浮くならありがたい。しかし、うちの天宮さんがなんと言うか。

「そんなことを言われても、千春さんが嫌がる以上は無理ですよ。あくまで千春さんの帰郷なんですから」

 想像通りの天宮だった。

「しかし私が行けば、旅費のために市販のオナホにキャラクターの写真を貼り付加価値をつけて、律に売りつけないですむぞ」

「ぐっ」

 いや「ぐっ」っじゃない。こいつ、なんてことをしようとしてるんだ。危うく買うところだったぞ。悪徳すぎるだろ。

 想像以上の天宮だった。

「まあ、確かに急な話だし、うちは親が出してくれるけど二人はそうじゃないから、お金を出してくれるのは嬉しいけど」

「千春さん、無理はしなくていいんですよ。オナホの売りつけは旅行関係なくするつもりでしたし」

 えっなんでそんなことするの。

「それに旅費ぐらいは親に頼めば出してもらえると思います。心配なのは律さんですが」

 それだと本当に俺にオナホを売りつける理由がわからないがそこは後で問い詰めるとして

 自分の貯金──家から出て早く一人立ちするために貯めた預金と予算を比較し

「俺も問題ない。自分で出せるさ」

 と結論する。

「待ってくれ。いや待ってください。頼み方がよくなかった」

「いやそういう問題では」

 会長を遮る言葉を会長が遮り地面に頭をつける。

「頼む! 行かせてくれ! 私も律と旅行に行きたい1 君たちともだ!」

「いや、ちょっと会長」

「この通りだ。この前の一件で暴走して君たちに迷惑をかけたのはわかっている。印象が悪いことも。しかし、君たちに嫌われたままなのは我慢できない」

 俺としてはこうなってくると流石に可哀想だし、そもそも前の一件は俺にも少なからず瑕疵があるのだから強くは責められない。だから、俺は互いの意志を確かめるために二人と目を合わせる。

「わかりました。じゃあ会長も一緒に行きましょう」

「ありがとう。正直言ってASMR部1年生3人の旅行に同情を誘う形で頼み込むのはうざいし断られるだろうと思ったが」

 そこまで考えていて行動に移せる胆力にこの人が生徒会長たる所以を覚える。確かにこういう人の方がリーダーには向いているのかもしれない。

「ああ、あと会長はやめてくれ。実はこの間の一件でついに今までの横暴の責任を取り辞任することになったのだ」

 リーダーにも向いていなかった──

「って辞任!? ってことは会長は会長じゃ」

「なくなるな。まあ当然だ。後継者など諸々は九重に任せているが、私の反対派閥筆頭の二条が引き継ぐだろう」

「それは……なんというか」

 俺たちも責任を感じずにはいられない。

 こんな結果にはなってしまったが、この人には感謝することも多いし、この前の件を除けば恩人といっても差し支えないのだ。

 その人を結果的に退任に追い込むことになるなんて

「気に病む必要はない。私の政策に無理があって、その無茶が露呈したまでのこと。まあ、次やるときはもっと上手くやれる自信があるが、それは二条に譲るとしよう」

「それじゃあ、旅行は会長の残念会も含めて」

 あの出来事の複雑さを考えると、その顛末が“残念会”という名前であることが最も残念だと言わざるを得ないがしかしそのふざけたネーミングも天宮なりの気遣いだろう。その気遣いが旗幟を振って天宮の倫理観や言動を起死させてくれることを切に祈る。

「じゃあ、この4人で行くってことでよかね」

 それぞれ問題ないと返事をする。

 それから皆で楽しく旅行の計画を立てた。

「まあ、計画なんて狂うのが前提ですからね」

 旅行計画中、天宮がなんとなく放った言葉が妙に耳に残った。

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