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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
191/253

さあ、ここからが

「これでゲームセットだな」

 会長の手元で手作りのお守りが赤い弧を描いている。

 それを見て全員が動きを止めた。

「……? なぜ試合が終わらない。まさか、情報がガセ──」

 風切り音が会長の言葉を遮る。

「しまっ!」

「今だ! 一ノ瀬君!」

「はい!」

 綾乃先輩が投げたクナイを会長がギリギリ弾く。しかし、その反動で持っていたお守りが宙に浮く。

 “清乃ちゃん”

 お守りにはそう書かれている。

「あの女っ!!」

(天宮! あの時か!)

 生徒会室で密着した時のことを思い出す。

 そして、持っていたクナイで会長に襲いかかる。


 勝機はここ!


 激しい金属音

「九重さんっ!」

「……」

 クナイとナイフがカタカタと拮抗を鳴らす。

 九重さんは何も言わない。

「あなたは何がしたいんですか」

「……」

 気のせいか、九重さんの瞳が揺れたような気がした。

「よくやった、九重」

「くっ!」

 会長の十字架に打たれる前に後ろに飛び退く。

「すみません、せっかくのチャンスを」

「いや構わない。大した隙でもなかった」

「そうだね、それにまた作ればいい。時間ならある」

 恵先輩の視線は後方、廊下の暗闇に向けられている。

 天宮と千春の姿はない。

「御園先輩はまだこれなさそうですね」

「相当、粘着質な相手みたいだな」

「仲間はずれか?」

 暗闇がゆらりと蠢き、次の瞬間には視界を黒い髪が掠める。

「っ!」

「これを避けるか!」

「綾乃先輩!」

「まかせろ!」

 会長の攻撃を避けて生まれた隙に、綾乃先輩が切り込む。

 綾乃先輩の短刀が青白く夜の闇を裂き、千切れた黒髪だけがふわりとその場に留まる。

「危なっ──」

「僕を忘れないでもらおうかな」

「ッ──!!」

 窓ガラスが悲鳴をあげて、その破片を撒き散らす。

 それと同時に月光の元に一つの影が放り出された。

「……ここがバルコニーじゃなかったら死んでいたぞ」

「風紀委員会だからね、そのぐらいはわかっているよ」

 2階のバルコニーには4つの影が並ぶ。

「九重、来なくていいぞ」

 廊下に一人残った影は貼り付けられたように動きを止め、校内の影と一つになった。

「さあ、やろう。律。ここからがクライマックスだ」

 額から血を滴らせ、会長は十字架に月の光を瞬かせた。

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