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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
190/253

勝負の行方

 天井は崩壊したが、想像していたような衝撃はなかった。

「一ノ瀬君、他のみんなも大丈夫か?」

「ええ、なんとか」

 机の下から這い出た俺と天宮と千春がそれぞれに見合って確認する。

「ちょっと乱暴すぎませんか?」

「それはすまない。これしか方法がなかったんだ。これでも慎重にやったんだぞ。小型の爆弾を一個ずつだな」

「そうそう。天井に穴を開けようとしたら、思ったよりも脆くて丸ごと崩壊しちゃったんだけどね」

 恵先輩が半笑いで言う。

 笑い事じゃないと言いたかったが、よく見ると先輩の目も全然笑っていなかった。恵先輩も天井がまるっと抜けて相当焦ったに違いない。

「ところで会長たちは? もしかして下敷きに……」

「いやそれは大丈夫です。真っ先に天井の崩壊に気づいて外に逃げましたから」

「なるほど、それであの扉が開いているのか」

 全員が開いたドアを見る。

「行こうか。今の戦力なら勝てる。また何か手を打たれる前に倒そう」

「そうしたいが一ノ瀬君。会長の戦闘能力はどのくらいだ? 見たところ、君は随分とやられているようだが」

「俺は大丈夫です。会長は手強かったですが俺たち3人で攻めれば倒せると思います」

「そうか。ならそうしよう」

 そして俺たちは会長と九重さんを追って生徒会室の外へ出た。


 会長たちを探す必要はなかった。

 俺たちが部屋を出るとすぐ目の前の廊下に待ち構えていたのだ。

「逃げないんですね」

「必要がない」

「……侮られたものだな」

 綾乃先輩が短剣を、恵先輩が刀を構える。

「侮りもする。今の君たちではね」

「どういう意味ですか?」

「高梨恵、随分と刀が重そうじゃないか。服部綾乃、最初からそんな直接的な武器を構えるなんて君らしくもない。装備が尽きたか?」

「っ……」

 二人とも何も言い返さない。

 考えてみれば当然だ、先輩たちもここまで戦ってきている。それも楽な戦いではなかっただろう。

「すみません、俺、気づかなくて」

「気にするな。それでも3人で連携すれば勝てる。問題ない」

「そうだよ、律くん。なんならそこで休んでてもいいんだから」

「すみません、ありがとうございます」

 先輩たちにいつもも甘えてばかりだと、ここの中で自嘲気味に笑う。

「では、かかってこい。私が返り討ちにしてくれる」

 会長が武器を構えるのに合わせ、俺たちも臨戦状態に入った。


 まず最初に切り込んだのは恵先輩。一気に間合いを詰める、が俺でもわかるぐらいいつもよりスピードが何段階も遅い。

「これでは君の絶技も形無しだな」

「っ!?」

 一瞬の出来事。

 恵先輩の抜刀に合わせ、会長が十字架を刀に引っ掛けて弾き飛ばす。そして、恵先輩を蹴り飛ばした。

「先輩!」

「律、よそ見はいけないな」

 気がつくとすでに会長が間合いに入っている。

「一ノ瀬君!」

 体をわずかに引いたところを綾乃先輩が縫うように入り、会長の攻撃を受ける。

 しかし、これもまた器用に十字架を引っ掛けて武器を絡めとるのだった。

「ぐっ!」

「先輩!」

 再び会長の蹴りが襲い綾乃先輩が蹴り飛ばされてしまう。

「ふむ、咄嗟に律を庇ったか。なかなかやる。本当なら互いに万全の状態でやりたかったが状況が状況、けりをつけさせてもらう」

 会長の動きを見るにやはり俺と戦っていた時は手を抜いていたらしい。疲弊があるとはいえ、あの二人が──

「これでこれからはずっと一緒だな」

「なっ!?」

 気づくと会長の顔が文字通り目と鼻の先にある。距離を取ろうとするが、抱きしめるような形で腕と腰を強く掴まれて動けない。

 そして、会長が腰に回していた手を俺のポケットに回し

「勝負あったな」

「返せっ」

 会長が身を離した瞬間にそれを追うように手を伸ばしたがひらりと避けられる。

 そして会長の手にはこの勝負の勝敗を決する宝物、つまり千春のお守りが握られていた。

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