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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
186/253

no way but to do it

「私は一人でも律さんのことを助けましたよ」


「……貴様」

会長の表情が一転して険しいものへと変わる。

「あなた、他人事がどうとか言って、大人を批判しましたけどあなたにとってもそうだったんじゃないですか?」

「まさか、貴様は私が大人たちと一緒だと言いたいのか?」

会長からは明確な殺意が天宮に向けられている。これまで口論することのあった二人だが、ここまで緊迫した雰囲気は初めてだ。1秒後には会長が天宮を殺していてもおかしくない。

「あなたが律さんのことを昔から知っていたことを考えると、かなり早い段階で律さんの家に問題があったことはわかっていたのでは?」

「それがなんだ」

「にも関わらず、助けなかった、何もしなかった」

「仕方がないだろう! 私は子供で何も……」

「わかっています、でもそれは私も同じです。でも私は律さんを助けに行きましたよ。確かに私なんかじゃ何も出来ませんでしたけど、それでも見捨てることだけは絶対に出来なかった。だから無謀でも律さんのお母様に直談判した」

「ッ……」

「あなたは律さんのことをわかっていながら、助けるどころか一人にした。当然です。だってあなたにとって律さんは他の大人と同じように

「黙れ! 立場を忘れているんじゃないか!? 先の動画を使えば、お前が一番恐れていることを、お前たちの居場所を引き裂くことが出来るんだぞ!」

「ならやってみてくださいよ! でもそれをやればあなたは本当に大人と同じですよ!」

会長はスマホを取り出して、何やら操作を始めたが、天宮のその言葉を聞いて指が止まる。

「何が一緒なんだ……私と父の何が一緒なんだ!!?」

「子供が逆らえないのは、生活を人質にした無言の脅迫ゆえです。あなたがやっていることはそれと同じ、脅迫によって相手を従えている。大人、それも汚い大人のやり口です。私たちはつい先日、そんな大人と相対したばかりなのでわかります。彼らとあなたは同じです」

「貴様……!! 私をそこまで愚弄するとは! いいだろう、律よりもお前を先に」

会長が天宮に向かって、急激に距離を詰める。


が、そこに割り込んだ。

「律……君も彼女の味方をするのか」

「妙なこと聞くんですね」

皮肉、よりも同情を込めて言う。

「どうして誰も私のやろうとすることを理解しない? 社会がどんどん貧しく、悪化している今、一刻も早く子供同士の連帯を築かなければ汚い大人たちの餌食にされる。君も先日の件で知っているだろう!? 田中芽衣だけじゃない、貧しい子供がいたるところで大人の食い物にされている。助けなければ! そのためには繋が理、団結しなければ!」

会長は必死の形相で訴えている。その声が一人虚しく生徒会室に響く。

「……すみません、会長。もっと早くあなたに気づくべきだった」

「何を言っているんだ……?」

会長が半歩後ずさる。

「先日の件で大人がどれだけ、この社会がどれだけ汚れているのか、その一端を知ったつもりです」

「なら!」

「でも俺はその中で子供を守るために大人として責任を全うして、全力を尽くす人を見ました」

芽吹先生、田中さん、その他、多くの大人たちが子供を一人救うために決死の覚悟で動いてくれた。

「あなたの周りはきっと、いい大人がいなかった。俺も実際にそうだった。いや、俺の場合はいても気づけなかった。確かに彼らにも生活や立場、人間としての限界があるかもしれない。でも、その中で正しくあろうとする大人は必ずいる」

少し前までは絶対になかった発想。世の中の全ては越えるべき障害であった時には考えられなかった他人への期待と希望。

それを教えてくれた人の方をチラリと見ると、当の本人はきょとんとしている。

「もういい。残念だ。こんな問答は無用。時間もない。御園マリアが来てしまう前に終わらせなければな」

「やっぱり戦うんですか?」

「当然だ。私たちにはそれしか道はない」 

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