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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
183/253

御園マリアVS三上槌&十一路雷太

「この化け物め!!」

「女性にそのような物言いはいけませんよ?」

「なら女性らしい立ち振る舞いを─がっ!!?」

 大男が御園マリアの拳を顔面に受け、後方に激しく飛ぶ。しかし、部屋の中を荒らすまいと踏ん張り、壁や物への衝突は免れた。

「あなた、頑丈ですね。骨を砕くつもりだったのですが」

「そんな攻撃を人に向けて撃つんじゃねえ。あと、鼻の骨は折れてるよ」

「それはよかったです」

(……生徒会室に入った途端、一ノ瀬さんたちと連絡が断絶。おそらく何らかの罠にかかったと見るのが妥当でしょう。助けに行きたいところですがこの男が思いのほか丈夫。それに)

「うわああああ!! 雷太さんをいじめないでください!!」

 金髪にツインテールの少女、三上槌が、御園マリアに向かって勢いよく大鎚を振り回す。狙いはデタラメだが、その勢いはあの桜木桜花の大剣を彷彿とさせる。その武器の巨大さも相まって御園マリアといえ、直撃すれば致命傷になりかねない。

 狭い室内で振り回される大槌の対処に御園マリアは苦戦を強いられていた。

「おい、三上! 理事長の私物には絶対に当てるなよ! 部屋のものには傷ひとつつけるなって、会長からの命令だ!」

「なら早くフォローに戻ってくださいよ!! この人に一瞬でも隙を見せたら、殺されそうなんですもん! あなたと違って、あんな拳を喰らったら死にますからね!!」

「わかってる! 少し待て、鼻血を止める。ったくレビの野郎は来れねえのか!」

 十一路雷太がインカムに向かって叫ぶ間に御園マリアが大振りの一撃を避けて、大男の前に現れる。

「まずは一人」

「っべ! 死ぬ──!」

「しゃがんでください!」

 しかし、三上槌が大振り隙を体を全力で捻って打ち消し、大鎚を御園マリアの脇腹に叩き込む。

「ッ!!?」

「入った!!!」

 御園マリアの体が槌の勢いそのまま壁に叩きつけられた。

「よくやった!」

「いや、本当に! 私、ナイスです! 噂には聞いていましたけど、まじで化け物みたいな人でしたね。私たち、二人で倒せるな……んて……」

 三上槌の言葉尻が急速に萎んでいく、同時に二人の顔から血の気が引いていく。

「あんな姿勢で打った攻撃でどうして、私を倒せると?」

「もう私、嫌です!! あんなの喰らって平然としている人相手に時間稼ぎなんて無理ですよ!」

「泣き言言うんじゃねえ! 俺まで泣きたくなる!」

「いえ、別に平然とはしていませんよ。さっきのはしっかりと痛かったですから」

「本当に!? もしかして勝てる?」

「しかし、その痛み以上に怒りが沸々と湧いてくるのです」

「えっ?」

 御園マリアは祈るように自身の手を合わせ握っている。しかしあまりに強く握られたその手からは血が滲んでいる。

「一ノ瀬さんが、天宮さんが何か悪いことをしましたか? いいえ、何もしていません。にも関わらず、次々と災難が湧いてくる。ただでさえ、あの人たちは重い過去と現実を背負っているというのに。そんな彼らがそれでも虚勢とも言えるほどの明るさで日々を楽しく送っている。それさえもあなたたちは邪魔立てするのですか?」

「あの……雷太さん、これ」

「俺、もう帰っちゃダメか?」

「時におふざけが過ぎることもありますが、私はそんな彼らの愚かさを愛しています。しかし、あなた方のその愚かさは……許容しかねますね。悔い改めるなら今のうちですよ? ここから先に神の慈悲はありませんから」

 ブロンズヘアが映えるその端正な顔の額に、わずかに血管を浮かべながら御園マリアは静かに近づく。

 その様子はもはや戦いではなく、肉食動物の狩りを想像させる。

「雷太さん、私、降参しちゃダメですか?」

「終わったらアイス奢るから、ここは頑張ってくれ」

「全然、足りませんよ〜!  生きて戻れたら焼肉お願いしますね!」

「わかった。生きて帰れたらな」

「ああ、それでも戦うのですね。せめて、あなた方の魂に神の導きがあらんことを」

 しかし、もう御園マリアは手を握らない。口頭だけの慈悲と祈りをすませ、彼女は狩りを始めた。


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