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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
178/253

作戦開始

「ピンポンパンポーン。校内放送、校内放送。前立高校の清く正しい生徒の皆は耳を澄まして聞いてね」

 恵先輩の校内放送を俺はグラウンドから聞いていた。

「ええっと、まず天宮ちゃんの件。降参して今すぐにでも助けたいところなんだけど、僕たちにも意地があるからね。だから僕たちは宝物を誰が所持しているのか、そしてその人物がいる場所を教える。それで天宮ちゃんを解放してほしい」

 俺は千春から動画を見ないように言われているため、その交渉がどうなっているのかはわからない。

「じゃあ、宝物を持っている人物を教える。もしかしたらもう察しているかもしれないけど、持っているのは律くん。そして律くんは今、グラウンド中央にいる。まあ、それは見て貰えば早いかな」

 校内からなんとなく視線を感じる。

「いや、君たちもわかっていると思うけど、その人質のやり方で勝ったとしても律くんは絶対に納得しないし、きっと生徒会、いや生徒会長のことを一生許さないと思う。どうだろう、このあたりが妥協点だと思うけど」

 これでうまくいくといいが。

 そう思っているところにインカムから綾乃先輩の声がする。

「一ノ瀬くん、やはり交渉は失敗だ。頑張ってくれ」

 ということらしい。

「あれ? 全然、天宮ちゃんが解放されないんだけど。え? それだけじゃ解放するわけないって? 酷い……」

 恵先輩のしゅんとした可愛らしい声がする。それと同時に校内から複数の足音がする。どうやら早いところ勝負を終わらせたいらしい。

「ああ、それともう一つだけ伝えないと行けないことがあったんだ。いや僕たちは止めたんだけどね。マリアちゃんが我慢できないって言ってね。うん、今はどこだったかな。ああ、そうだ、会長のお父さんがいつも使ってる部屋、理事長室で暴れてるみたい。頑張って止めてね」

 校門の入り口付近にうっすら見えていた人影が動きを止める。今の放送を聞いたからだろう。

 恵先輩の言う通り、理事長室と言うのは会長にとって触れられたくないらしい。生徒会室と迷ったが、なんらかの対策が行われていることを考えて、理事長室にした。「

「さて、どのくらい俺に人を割いてくれるかな」


 学校入口の方を見ると、人影が一つだけやってくる。

「やあ、また会ったな。一ノ瀬律。あの少女を助けに行かなくていいのか?」

 出てきたのは以前、大運動会で戦い敗れた長身金髪ハーフの優男、名前は確か六星レビとかいった。手には前と同じように長剣を携えている。

「もちろん、天宮は助ける。そのついでにお前を倒すぐらいは造作もない」

「挑発のつもりか? 前に俺にボコボコにされたことを忘れているみたいだな」

「お前こそ、天宮に殴られた傷は治ったか?」

 互いに口を閉じ、睨み合う。

 六星レビが長剣を構えると同時に

「おいっ! どこへ行く!?」

 俺は校内へと走り出した。


 校内に入ると恵先輩の放送がいまだ続いていた。

「おいっ! 待て! 逃げるな!」

 後ろからは依然、六星レビがついてきているが問題ない。

「こっちは一人だけです。すみません」

「おや? 私の方は2人だけですよ。大男と物騒なハンマーを持った少女が一人。会長と九重さんは動かないだろうと言う話でしたが、もう一人はいったいどこに?」

「すまない、私の方だ! チェーンソーを振り回してる頭のおかしい女に追われている! 天宮君を探すのが少し遅れそうだ!」

 そこで他のメンバーとの会話が途切れる。

 今回、いつものように耳に頼った捜索ができない以上、天宮を探すのは俺の役割ではない。歯がゆいが、それが最善である以上は仕方ない。

 だが、俺も諦めたわけではない。

「天宮――――――――――!」

 大声で叫ぶ。さらに教室の横を通るたびにクナイを思い切り叩きつけていく。天宮の映像は常に千春が確認しているため、もし当たりならわかる。

 いくらこの学校が大きいとはいえ、俺と綾乃先輩の二人がかりでしらみつぶしにしていけば、30分内に見つけることができる。

 映像の背景で教室とわかっていることが救いだ。この学校には教室と同じくらい、部室や様々な準備室、会議室がある。それらを全て調べていては時間が足りない。

「さっきから何をしている!!」

「ちっ!」

 流石に教室の窓を叩きながら走っていたせいで、六星レビに追いつかれる。

「あの少女を探しているんだろう? 無駄だ。やめておけ」

「黙れ」

「ふんっ、別に好みではないが、今回の勝利の記念に俺も例の動画を九重にもらっておくとするか」

「……」

 クナイを構えた。


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