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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
生徒会編
177/253

拷問

夜はまずます深く、月が雲に隠れ、灯りのついていない校内はいっそう暗くなる。秋の涼しさはいつしか寒さへと変わっていた。

「皆、これを見てくれ」

綾乃先輩が皆にスマホを見せる。そこには下着姿で椅子に縛り付けられた天宮の姿があった。確認すると全員のスマホに同じURLが送られており、アクセスすると同じ光景が映る。

「ASMR部の皆さん、見ていますか?」

映像の端から現れたのは九重さんだ。

「現在、この映像はあなたたちにのみ送っています」

「あ〜! 最悪です! 律さん、この映像で抜いちゃダメですからね!」

九重さんの真剣な表情とは逆に天宮はいつものふざけた態度をしている。

「これから彼女に拷問を施します。もちろん、あなたたちが降参した時点で拷問は終了とします」

「律さん! 拷問なんて言っても相手はただの学生です! 大したことできませんから、気にしないでください!」

「……あなたは少し黙っていてください」

そう言って、九重さんは天宮に丸い球のついた猿轡をはめた。それでもなお天宮は何か叫んでいるが、何を言っているかわからない。

「ではこれより拷問を始めます」

九重さんがリモコンのスイッチを押すと背後の何やら大きな機械が作動し、幾つ赤の毛の塊のようなものが天宮の脇、内股、首、脇腹に近づき

「ん〜〜〜〜〜〜〜!!?」

天宮が猿口羽越しに甲高い悲鳴のようなものをあげる。しかし、その表情は苦悶のそれではなく、笑っている。

「くすぐってる?」

画面越しの天宮は縛られた状態で身を捩って笑っている。しかし、猿轡越しの呼吸は次第に苦しくなり、口元を押さえている球から鋭く空気が出入りする音がし始める。長い黒髪を振る天宮は頬を上気させ目元からは涙が出ている。この状況で不適切かもしれないが、その様子はどこか艶かしさを感じさせる。

そんなことを考えているうちに九重さんが再び現れ、機械を一度止める。天宮は猿轡越しに必死に酸素を吸っている。

「降参しないなら早く助けにきたほうがいいでしょう。この拷問は見た目に反してかなりの苦痛を伴いますから。それに彼女が苦しさのあまり失禁した場合、この映像を全校生徒に拡散します」

「!? そんなことして何になる!!」

思わず画面越しに叫ぶ。

「安心してください。無闇に拡散したりはしませんから。今、生徒会に不満を持つこの学校の生徒の不満の捌け口として有効活用させていただきます。彼女の失禁を確認次第、この戦いの途中であっても、映像の配布を」

「ひふはんっ! ほんはのっ〜〜〜〜〜〜!!」

何か言おうとする天宮を遮るように九重さんが再びスイッチを押す。

「制限時間は30分。その間は拷問を続けますが、彼女が失禁しないぎりぎりを加減します。30分を過ぎた段階でこの機械のスイッチをONのままにします。では、良い返事をお待ちしています」

そう言って九重さんが画面からフェードアウトした。

「くそっ!」

思い切り床を叩くが、何も起きない、ジンジンと手の側面が痛むだけだ。

「律……心配かもしれんけど、これはあんまり見んどいてあげて。清乃ちゃん、強がってたけど、本当は下着姿も見られたくないはずやし。少なくともこんな形では」

そう言って千春がそっと俺のスマホの画面を手で覆う。千春の配慮に少しだけ、熱くなっていた頭が冷える。

「一ノ瀬君、さっきの映像や、天宮君の声で場所はわからないか?」

「すみません。まだ耳鳴りが少しあって、いつものようには」

「そうか……無理はするな」

あの生活音の大音量放送は少し前から止まっている。御園先輩たちが止めてくれたおかげだ。教室で休んだこともあり、体は動く。

「今すぐ動きましょう。30分経たないでもでも天宮の限界がいつ来てもおかしくない。それに相当苦しいはずだ。すぐに助けたい。本当はこうなった以上今すぐ降参したほうがいいんだろうが……」

「彼女は本気で怒るだろうな」

「……はい。ただ、天宮の限界が来たタイミング、もしくは30分経ったタイミングで即降参します。あいつがどれだけ怒ろうとそれだけは譲れない」

皆も力強く頷く。おそらく、それぞれの頭にあるのは先日の芽衣ちゃんの一件だ。天宮がこの学校の男子たちの慰みものになるなんてことは、何を犠牲にしてもあってはいけない。そしたらきっとあいつはもう二度と心から笑えない気がする。

「でも作戦はあると?」

「敵さえ見つけられたら、私が全員挽肉にできるのですが」

すでに拳にメリケンサックをはめている御園先輩は怒りに打ち震えている。他のメンバーも同様だ。しかし、肝心の怒りをぶつけるべき相手の場所がわからない。それにこの状況なら相手がわざわざ出てくるメリットはなく、隠れることに専念するはずだ。

「どうすれば……」

「律くん、ちょっといいかな」

「恵先輩」

先ほどから顎に手を当てて考え込んでいた恵先輩が小さく手を挙げ

「僕に作戦がある」

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