封筒と決闘
生徒会室から部室に戻って皆にきちんと説明したところ、潮水さんを除いたメンバーは特に驚かなかった。綾乃先輩が「まあ、こうなると思っていた」と呆れながら笑っていた。それから御園先輩がお茶を淹れたり、千春が参考書を開いたりと普段と何も変わらない時間が流れた。皆の肝の据わり方には驚いた。
あれから1週間。
「ついに届いたか……」
部室の机の上にある一枚の封筒を部員全員で眺める。そして、天宮が皆と視線を合わせ、ゆっくりと封を破り読み上げ始めた。
「10月1日 夜10時、ASMR部と生徒会との決闘を行う。内容は宝探し。互いに宝物を設定し、それを奪った方の勝利とする。参加者は6人とする」
「……宝探し?」
まあ、ただの決闘ではないとわかっていたがこれまた妙な内容だ。それに
「生徒会は随分とアドバンテージを捨てたな。これなら私たちにおおいに分があるぞ」
「ですね。あっちは何か秘策があるのか、それとも勝てる自信があるのか」
「まあ、あの会長ですからどんな手を使ってくるかわかりません。警戒するに越したことはないでしょう」
「だな」
天宮の言う通り、相手はあの会長だ。一筋縄ではいかないだろう。それにルールを制作したのがあの九重さんだとすれば必ず裏がある。開幕早々にミサイルをぶち込まれる可能性すら考えた方がいいだろう。
「6人は誰にしますか? とりあえず俺は出るとして……」
「私と御園君は出た方がいいだろう。あと、高梨君も出てくれると嬉しい。あとは……」
「私は出ます!」
「私も!」
天宮と千春が勢いよく挙手して言う。
「ええっと、私は」
「潮水さんは大丈夫だ。俺としては千春もあまり出てほしくないんだがな。まず、間違いなく激しい戦いになるだろうから」
「律さん!「 私はいいんですか!?」
「ん? ああ、お前ももちろん出てほしくないぞ」
「なんか言い方に棘がありませんか!?」
「そんなことないぞ」
うん、天宮のことを心配する気持ちがないことはない。ただ、場が荒れることへの心配の方が大きいだけだ。
「いや、天宮君にはぜひ出てほしいと私は思うぞ。もちろん、怪我しないように立ち回る」
「綾乃先輩、急にどうしたんですか」
一瞬、冗談かと思ったが綾乃先輩の顔を見ると意外にも真面目な顔をしていた。
「ほら、やっぱり私は必要なんですよ! ASMR部の特記戦力ですからね」
「まあ、そんなところだな」
綾乃先輩が天宮の冗談に適当に乗ってはぐらかす。どうして急に天宮には出てほしいと言ったのかはわからないが、まあ別にしつこく聞くことでもないだろう。
「じゃあ、宝物を何にするかも含めて色々と考えようか」
それから綾乃先輩と恵先輩を中心に様々な作戦が立てられた。
そしてあっという間に時間は過ぎ、生徒会との決闘の前日になった。




