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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
学校見学会編
148/253

科学研究部部室

「待っていたわ。入ってちょうだい」

 理乃ちゃんに招かれて、セックス研究部の部室へと入る。

 部屋の中は意外と広く、複数のコンピュータから3Dプリンターなど一通りの機材が揃っている。

「凄いですね! 難しそうな機械がたくさん! これはなんですか?」

 芽衣ちゃんが机の上にある小型の機械を手にとる。手のひらサイズで楕円形の機械、見覚えがある。

「それはク○トリス吸引機よ」

 言った瞬間、場の空気が固まる。理乃ちゃんもすぐに気づき、しまったという顔をしている。

「栗とリスさんですか?」

「おっ、おおお……」

 周りの反応に芽衣ちゃんが不思議そうな顔をしている。

「私も全然わかんないです♡律さん、教えてください♡」

 隣で天宮が可愛こぶっている。もちろん、無視した。

「私たちの部活は二つのチームに分かれていて、片方は私達のように機械を作ることをメインとしているの。そして、もう一つが部長のいるー

「私たちのチームだね。やあ、一ノ瀬ちゃん。この前はどうも」

「知音先輩。今日はすみません」

「いやいや構わないよ。私たちも有望な新入生には唾をつけておきたいからね。それで理乃ちゃんはまだ口を滑らせてないかな」

「それはもう……」

「そうかい。まあ、彼女はその、あれだからね」

「二人とも、そんな目で私を見ないでちょうだい」

 残念な理乃ちゃんがこちらを恨めしそうに見ている。

「ちなみにヤバいものはちゃんと片付けましたよね。皆、勝手に見学を始めちゃってますけど」

「ええ、さっきの以外は全て。今あるものは見られて問題ないものだけよ」

 正直、ク○トリス吸引機がある時点でその言葉も全く信用ならないが、ざっと見渡した限り、それらしいものはない。

「雑魚のお兄さん、退屈なんだけど。私はもっと権力のある人と話したいんだけど」

「双葉、失礼だろ。そういうこと言うんじゃない。ごめんなさい、科学研究部の皆さん」

 律花が双葉ちゃんの頭を抑えて一緒に謝っている。

「いつもはこんなんじゃないんですけど、年上の人がいると双葉は性格がちょっとあれで」

 え? 双葉ちゃんのそれってそういうシステムなのか。営業メスガキじゃないか。

「いやいや構わないよ。しかし権力のある人か……それならASMR部に行くといいんじゃないか?」

「ASMR部って兄ちゃんの?」

「え〜?この人の部活ですか? 権力持ってる人なんかぜっ〜たいいないと思うんですけど」

「恵先輩のことですか? 一応、時間は作るって言ってたけど、どうだろう」

「今の時間ならいると思いますよ。予定より少し早いですが行きますか?」

「「う〜ん」」

 天宮の提案を聴いていた俺と千春は顔を見合わせて首を捻る。思っていたよりも律花の友達のメンツが濃すぎる。彼女達を部室に連れていくことに不安しかない。

「その恵先輩ってなんなんですかぁ?」

「ああ、恵先輩は現風紀委員長だよ。今は色々あって委員長としての仕事はそんなにしていないみたいだけど」

「風紀委員長! へえ♡ 私、その人に会ってみたいかも」

「双葉……失礼がないようにな」

「はいはい、わかってるって。私がヘマするわけないじゃん」

 まあ、なんだかんだ双葉ちゃんは上手くやりそうだが。となると、部室にいるのは綾乃先輩と恵先輩か。綾乃先輩、見学中は原稿を中断すると言っていたが大丈夫だろうか。

「あれ? もずくちゃんは?」

「ああ、それならあそこに」

 天宮が指差す先ではもずくちゃんが束になったA4用紙を読んでいる。この部室にあったレポートだろう。

「知音先輩、あれ大丈夫なやつですか?」

「私が大丈夫な論文を書くわけないだろう?」

 速攻で没収した。


 もずくちゃんがなかなか離してくれなかったため、俺と天宮、千春の3人で頑張って引き剥がした。その間、潮水さんが双葉ちゃんから煽られ倒していた。一番頑張ったのは彼女だと思う。

 それから知音先輩と理乃ちゃんにお礼を言って、部室を出た。

「なんだかすごく疲れましたね。私、部室に着いたらもう動かないかもしれません」

「それは勘弁してくれ」

 この時点で、俺を含めた4人はかなり疲労困憊していた。双葉ちゃんに煽られ、移動の度にもずくちゃんを説得、連行したのだ。

「ごめんな、兄ちゃん。皆、ちょっと変わってて」

「いや、全然問題ないぞ」

「変人を集める気質って遺伝なんですか」

 潮水さんが律花に聞こえない声で呟く。両親にその特徴はなかったので、俺と律花二人の突然変異だろう。自分で言っていて悲しくなってきた。

「皆さん、もうすぐ着きますよ。胸の大きい変な人がいると思いますが、気にしないでください」

「綾乃先輩が可哀想だろ」

「別に綾乃先輩とは言ってませんけど」

「流石にそれはずるいだろ」

 そして、俺たちはASMR部の部室の前に着いた。いつもは厄介ごとが多く、辟易する場所だが、今は我が家のように感じられる。

「それじゃあ、入るぞ」

 そして、ASMR部部室に入った。

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