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私のおほ声を聞け!  作者: 冷泉秋花
同好会設立編
10/253

水曜日アフター

 英語の採点が終わる。これも高得点だ。

「律花、ごめんな」

「どうしたんだよ、兄ちゃん」

「お前のこと、ちゃんと見てあげられてなくて」

 俺の言いたいことが伝わったのか律花が俺の目をじっと見る。

「私が急に髪染めことあっただろ?」

 確かにあった。律花が中2の時の冬。突然、金髪にして家に衝撃を与えた。

「あの時期、受験もラストスパートでパパとママの兄ちゃんへのプレッシャーが一番強くて、兄ちゃんも全然周り見えてなかったよな」

 律花から見てもそう見えていたらしい。

 律花を心配しているつもりが律花に心配をかけていた。

「私、少しでもパパとママへの注意を私にそらせたら、兄ちゃんが楽になるんじゃって思ってさ。あんなことして、かえって兄ちゃんに迷惑かけた」

「ごめん」

 律花が謝る。

 そんなこと、俺は全く気にしていない。謝らなくちゃいけないのは俺の方だ。

 妹のそんな思いやりに気づくことすらできなかった。

「まあ、辛気臭いのは無しだぜ兄ちゃん。せっかく模試もうまくいきそうなんだから」

 律花が照れくさそうに笑う。

 なんていい妹なんだ。

「ん? どうした兄ちゃん。おい、まさかー」

 律花に思い切り抱きつく。

「゛お゛い、ヴァゔぇゔぉってヴってんだヴォ!」

 律花が俺の胸元で何か叫びながら暴れている。

「律さん、気持ち悪いです」

 天宮まで辛辣だ。だが、顔は笑っていた。

「律さんの楽しそうな顔、初めて見た気がします」

 そうだろうか、そうかもしれない。

「ありがとな、天宮」

 それからしばらく三人で笑い合っていた。


 天宮を家まで送る。

「これで律さんの課題はひとまず大丈夫そうですね」

「そうだな。今週の模試も大丈夫そうだしな。あとは千春のことだが、これは俺に任せてほしい」

「何とかなりそうなんですか?」

「まあ、何とかするよ。そういう約束だしな」

 二人並んで街を歩く。

「そういえば、私S系のASMRもやってみたいんですよね。射○管理するやつとか」

「お前な…」

 こうなんていうか、いい感じだったのに。俺は小さくため息をつく。

「試しにやってみろよ」

「えっ、いいんですか! いつもはやめろって言うのに」

「まあ、今日は特別だ。人通りもないしな。その代わり声の大きさは気をつけろよ」

「やった!じゃあいきますね」

 天宮が喉の調子を整え、深呼吸をする。そしてー

「あらあ、あなた本当に乳首が弱そう♡」

 天宮が少し声を低めにしながら俺の方を見て言う。あ? こいつ俺に言ってんのか。

 言っておくが俺は普段から鍛えているから人より強いぞ。

「ほんっと情けなない男♡私みたいな変態女に少し誘惑されただけですぐ反応しちゃうなんて♡」

 なんだ、こいつちょっとうまいな。

「ほ〜ら、その情けないおち○ぽ、私に見せてみなさい♡」

 天宮も乗ってきたみたいだ。だんだん調子が上がっている。

「お前、結構うまくー」

 小学校高学年の男の子が道の脇に立っている。

 意外と天宮のクオリティが高くて気が回っていなかった。

 まずい、誤魔化さなければ。

「こ、こらあ。小学生がこんな時間までお外にいちゃダメだろ?」

「変態だ!!」

 小学生がダッシュで逃げていく。小学生、足速ぇ。

「待ってください!これは誤解で!」

 いや、誤解ではないだろ、実際に変態だし

 流石に焦ったのか、天宮も引き留めようとする。

 しかしすでに遅く、もう子供の姿は見えない。

「やばいですかね、律さん」

「ま、まあ大丈夫なんじゃないか」

 連行される天宮の姿が脳裏をよぎったが、気にしないことにした。


 次の日、学校で不審者情報が出たが俺と天宮は全力で知らないふりをして切り抜けた。

 そして、あの小学生に心の中で謝罪した。

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