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死の直前、私は何を思うのだろう


今までのことを走馬灯のように見るのだろうか


そして、後悔するのだろうか


もっと体を大切にすればよかった?


結婚すればよかった?


友人、恋人を大切にすればよかった?


私は何をもっとと後悔するのだろう










一つのマフラーを二人で使うカップルや、はぁっと息をかけ手を温めながら歩く人のいる、冬の夜。辺りには雪が積もっている。


静まり返る街で、一軒の地下酒場から歌声が微かに聞こえてくる。



店の名は「ラ・ポーズ」




―カランカラン―




階段を下り扉を開け店に入ると、



  

 

  私が産まれたのは23年前

  この店の前に捨てられていた

  ここで働く女たちに育てられ

  今じゃ立派なレディよ

  

  周りが私のことを

  ふしだらな女と馬鹿にしても

  気にしないね 

  好きに言ってちょうだいな

  だって私には美貌と

  この歌声があるんだから





店の奥の小さな円型ステージ。そこには、雪のように白くきらきらと光る銀色の髪を束ね、魅惑的に紫掛かる瞳を持つ一人の女。黒のドレスからこぼれ落ちそうな胸、大胆にスリットから白く細長い脚をみせつけ、誘惑するような艷やかな歌声で歌っている。



彼女の名は「アンヌ」



ここ、ラ・ポーズの歌姫であり、娼婦でもある。


アンヌは、大金を支払うと言っても体を売らない。

体を重ねるのも酌み交わすのも彼女の気分次第。


男達から人気のある彼女。しかし、その人気は男達だけでなく

彼女の歌声、容姿に魅了され、男へ接する態度に憧れ店に来る女も少なくはない。



「あら、バトリーさん。いらしてたの?」



歌い終わったアンヌは、ステージから降りカウンターに座る、バトリーと呼んだ中年の清潔感ある男の横に腰掛けた。



「やあ、アンヌ。今夜も美しいね」



バトリーはアンヌに、飲むのは酒か水かと問いかけ、マスターにアンヌが答えた物を出すように言う。


アンヌはまだ歌うときは水、酒を飲んだときはその日の歌は歌い終わったということ。

歌は完璧に歌いたいと、歌うときは、酒を飲まない。歌一つでも飲む飲まないもアンヌの気分で、だが。



「先日君に助言をしてもらったおかげで妻とうまくいくようになった」


「そう、よかった。だから最近見かけなかったのね」



バトリーは、おかげさまでと言いアンヌと乾杯をした。

アンヌは水で。



「実は今、妻が友人と来ているんだ」


「まあ!奥様が?」


「ああ。君に会ってみたいってね」



あそこに、とバトリーに言われアンヌが振り向くと

テーブル席に座る3人の貴婦人。



「緑色のドレスの方ね?」



3人の貴婦人がいる中で、アンヌは見事にバトリー夫人を当てた。バトリーは目を見開き「さすがだな」と笑う。



「ふふ。素敵なマダム達にご挨拶してくるわ」



アンヌは席を立ち、貴婦人たちの元へ向った。



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