表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/92

アルラウネ

前々話から出てきてる人間版ゴーゴンのイメージ画像。

挿絵(By みてみん)

(出典:https://picrew.me/image_maker/16952)

「この辺でいいか」


 学校からかなり離れたことを確認すると、オレたちは森に降りた。


 ズザザザーッ!


 着地の衝撃を計算してなかったから勢い余って地面を転がってしまう。


「いったぁ~い!」


 シルクのようなリサの金髪が土にまみれて汚れいる。


「す、すまん。次からはちゃんとするから……」

「それもそうだけど! 見て!」


 リサは上着の裾をめくって赤くれ上がったお腹を見せる。


「ずっと手でお腹持たれてるからこうなっちゃったんだけど!?」

「あ~……すまん。これも改善の余地あり、だな……」

「あの、フィードさんは【変身】出来るんですよね? 次からは大きな生き物に変身して私達が背中に乗ればいいのでは……」


 ゴーゴンがおずおずと提案する。

 この子は控えめでほんとリサと正反対だな。


「いいわねそれ! 背中にくらがついた……いやソファーとか? いやいや、いっそのこと家がついた生き物に変身しなさいよ!」

「背中に家……? そんな生き物いるのか? 大体オレは自分で見たことある生き物にしか変身出来ないぞ?」

「そうなの? 案外つかえないわね、この下僕」

「だぁ~れが下僕だ誰が」

「あ~んたに決まってるじゃないの、高貴たる吸血鬼たる私をこんな姿にしておいて」

「くすくす……」


 じゃれ合う俺達を見てゴーゴンは笑う。


「お二人とも仲がいいんですね」

「な、な、仲なんてよくないわよ! ただ私の眷属にしてあげてもいいかなって程度の男だっただけなんだから!」

「あ~、リサとは毎晩一緒にいたからな。わりと気は合うんだ」

「き、気が合う……。そ、そうよね、私もなんとなくそう感じていたわっ! 下僕にしてはなかなかいい感性してるじゃないの! そ、そう! 毎晩一緒にいたからね! 毎晩っ!」


 なぜか顔が赤くなってるリサは置いといて、オレは気になっていたことを聞いてみた。


「ところで……お前たちは恨んでないのか? オレのこと」

「恨んでるに決まってるじゃないの! 不死者の王吸血鬼が、ただの人にされたのよ!? こんな屈辱ないわ! 不名誉すぎて一族に知られたら殺されるわよ! 絶対に元に戻るまでアンタについていくんだからね!」


 ブチギレるリサ。


「私は……ずっと人間になりたかったので、感謝しかしてないです。フィードさんは私にとっての救世主です」


 ゴーゴンはそう言うと両手を握ってうっとりした顔でオレを見つめてくる。


「はは……ありがと。でも、ほら、クラスメイトを全員殺しちゃった仲間のかたきなわけだろオレ? その辺どう思ってるのかなって」

「ん~……私は学校に籍をおいてただけで顔は合わせたことないし別になんとも思わないかな。そもそも吸血鬼にとって全ての生き物は餌にしか過ぎないし」


 Oh……意外とシビアなのね。


「私は……命が失われたのは悲しいことは悲しんですけど、そもそもフィードさんを監禁してもてあそんでたのは私達の方ですし、因果応報いんがおうほうというか……まぁ仕方ないのかなと……」


 へぇ、魔物でもそういう風に考える奴がいるんだな。

 ちょっと意外だった。

 それともこのゴーゴンが特殊なんだろうか。


「大体魔物って自己責任の観念が強い生き物なのよね。自分たちが他者を殺す代わりに、自分がいつ殺されても文句は言わない。だから仲間の死に対してもあまり感傷的にはならない」

「そういうものなのか」


 結構あっさりしてるんだな、魔物の死生観。


「その代わり家族や一族の愛情は凄いわよ。この世界で信じられる唯一の存在、それが家族であり一族だからね」

「じゃあオレを恨んだ誰かの家族が復讐しにくるって可能性も……」

「十分にあるわね」


 ガサッ……。


「誰だッ!?」


 周囲の木、草、ツタが一斉に寄ってくる。


「キサマ……か。私の可愛い可愛い娘を殺したノは……!」


 植物が集まって人の形を成していく。


「ほら、いきなり見つかってるじゃないの!」

「アルラウネの親か!」

「あわわ、フィードさんどうしましょう……!」


 え~っとここって周り一面森ってことは……。


「この植物全部が敵ってことだろ?」


 そんなの相手にしきれるわけないだろ!


──変身!


 オレはワイバーンに姿を変える。


「逃げるぞ! 乗れ乗れ!」


 リサが超人的な身体能力で背中に飛び乗ると、わたわたしてるゴーゴンの手をつかんで引きずり上げる。


「乗ったな!?」

「ええ、早く出て!」


 オレは四方から襲いかかってくるツタの間をするりするりとすり抜けると上空へ舞い上がった。


「ふぅー、間一髪!」

「ちょっと! あれ見て!」


 地上では木々が合体して巨人の姿を作っているところだった。


「うわっ、ヤベえヤベえ! あんなの相手にしてらんねーぞ。どっか植物がないとこに行こう」

「それなら向こうの方に岩山があったはず!」

「よし、そこに向かうぞ!」


 急いでその場を離れる。


「ところで!」


 リサが大声でオレに尋ねてくる。


「フィードは魔界から出た後、どうするつもりなのー!?」

「出た後?」


 そんなもの当然決まってる。


「オレを売った奴らへの復讐だ」

次話【ファーストキス】

7月22日(明日)18:30頃更新予定


『30日後にマモノに食べられるオレ(略』は毎日更新中!

もし少しでも「復讐の螺旋に巻き込まれちゃってるやん!」「腫れ上がったお腹見せるリサリサかわよ」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると嬉しいです。

いいね、感想、ブクマ登録もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ