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佳境 de ツイスター

 みんなは魔王に侵食されたことがある?

 うん、なかなかないよね。

 今、オレはその魔王の侵食に遭ってる真っ最中!

 てことで。

 魔王に侵食されたら体が悪魔に変貌してきちゃった。

 今は手と足が悪魔っぽくなってきてて、なんか角っぽいのも生えてきてるような気がする。

 多分、これが全身悪魔になっちゃったらオレが魔王に完全に乗っ取られちゃうんだと思う。

 うん、わかりやすいバロメーターで助かるよね。

 ってことで、オレはみんなに指示を出すことにした。

 まずは、現状の説明からだね。


「あ~、今オレ魔王に体乗っ取られかけてるみたい……」


 オレがそう言うと、リサに思いっきりビンタされた。


「え、痛っ! え、いや、なにすんのリサ!?」


 緊迫した場面なのに味方からの予想外の攻撃を食らって思わず面食らうオレ。


「ばかっ! ばかっ! フィードの馬鹿っ! 私がどれだけ心配したと思ってんのよ~~~! それなのに間の抜けた喋り方してぇ……! うぅ~……!」


 号泣しながらリサはポカポカとオレの胸を殴る。


 あ、うん、喋り方のせいで殴られたんだオレ……?


 とりあえずビンタされたダメージはルゥの回復魔法ですぐに回復してもらってる。

 リサにポカポカ殴られてるのも地味にダメージ受けてるんだけど、それもすぐに回復する。

 う~ん、この自分たちでダメージ受けて自分たちで治す永久機関。

 最後までオレたちの戦いってピリッとしないな。


「えっと、この手足が悪魔っぽくなってるだろ? これが全身悪魔になったら完全に乗っ取られると思う、多分」

「そんな! アベルくん!」


 モモがオレの手を掴む。

 すると、悪魔っぽくなってた禍々(まがまが)しい手がスゥっと元に戻っていった。


「…………あれ?」


 モモがオレから手を離してみる。

 すると、また手が悪魔化し始めた。

 モモがオレの手を握ってみる。

 すると、また手が元のオレのものに戻った。


「あれ、もしかしてモモ、今【聖闘気】とか出してた?」

「あ、出したつもりはなかったんだけど、慌ててたから出てたかも……」

「あ、そうなんだ。多分、その【聖闘気】、魔王にめっちゃ効くっぽい。それで握られたら魔王がイヤそうにしてる感じがなんとなく伝わってくる」

「そうなんだ! じゃあ両手掴んどくね!」


 モモがギュッとオレの両手を握ると、邪悪な色味の爪や皮膚は全て消え失せた。

 ただ、その代わり。

 オレの両足が急激に悪魔化しはじめる。


「わわわ! アベルくん、今度は足が怖くなってきてるんだけど!」

「モモ、その【聖闘気】は手からしか出せないのか!?」

「え!? どういうこと!?」

「その、足とかから出せないのか!?」

「足!?」

「そう、足!」

「や、やったことないけどやってみるね!」

「頼んだ!」


 モモは靴をスポポンと脱ぐと、裸足の両足をオレに絡みつける。

 それを見たダイアが叫ぶ。


「おお!我があるじ! 足が元に戻っていきますぞ!」


 うん、ダイアくん。

 嬉しそうに報告してくれるのはいいんだけど……。


 この格好。


 モモと両手を繋いで、両足まで絡めてるこの格好。


 ……魔王と戦ってる姿か、これが?


 そんなことを思ってると、オレの顔がスポンと悪魔に変化した。


「わーわーわー! フィード! フィードの顔が悪魔に!」


 リサのもはやツンツンした様子の欠片すらも微塵にも感じられない叫び声が聞こえる。


「エクストラヒールッ!!!」


 ルゥの声と同時に放たれた強烈な光。

 と同時に感じるオレの顔を包み込む柔らかな感触。

 一瞬ののち、オレはようやく理解する。


 ああ、ルゥの上半身が今オレの顔を包み込んでるんだ──って。


「え、ちょっと待って。今ってオレどんな状態になってるの……?」

「アベルくん、元に戻って! 聖闘気っ!」

「フィードさん! エクストラヒール!」

「フィード! しっかりしなさいよ!」


 両手両足をモモに押さえられて、頭をルゥの上半身に包まれて、リサがオレの体ごとバンバン叩いている。

 ちなみに行き場をなくした魔王の精神体の霧っぽいのは、オレの胸あたりを逃げ惑いながらリサのポカポカ殴りを必死にかわしてる。


 え、なんなのこの状況……。

 ごめん、もう一回言うわ……。

 ほんとに世界を救うラストバトルの姿か、これが?


「フィードさん、大丈夫っスか!?」


 ん……?

 ヒナギク……?

 にしては声がなんか違うような気がするが……。


 オレを押さえつけてるルゥの脇あたりから声がした方をチラリと見ると、オレは思わず吹き出してしまう。


「ぶふッ!」

「あ、フィードさん。この女うるさいんで自分が【同化】して大人しくさせときました!」

「お、おま……それ昔の勇者の体だぞ!」

「へ? 勇者?」

「そう、何百年か何千年前かわからないけど、デンドロとノクワールに騙されて体に魔王を入れられて、それでここに封印されてる女勇者がそいつなの!」

「あ、そうなんスか? よくわかんないスけど、結構ご高齢の方なんスね。じゃあ丁重ていちょうに扱うっス」

「そういう問題じゃなくて!」


 ……ん?

 勇者……?

 ちょっと待てよ……。

 勇者ってことは、このタナトア。

 もしかしてもしかすると、ラベル=ヤマギシの【因果剣】みたいな超チート級スキルとか持ってるのでは……?


「おい、ヒナギク! そのまま【同化】してろよ! 絶対に体から出るな!」

「わかったっス!」


 頼むぞ、古代の勇者……。

 いいスキル持っててくれよ……。


 オレは祈りながらタナトアを“視る”。


 ──鑑定眼ッ!


「こ、これは……!」


 タナトアのスキルを“視た”オレはニヤリとほくそ笑む。


「これで──魔王を消せるっ!」

「古代の勇者タナトアのスキルどんなのなのー?」と思っていただけた方は↓の【★★★★★】をスワイプorクリックしていただけると作者の励みになります。

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