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狂おしいほどに優艶

 おっす! オレ、フィード!

 ちくちくと個人的な復讐をしてたら、なんかいつの間にか天界や魔界、エルフ国まで巻き込んだ王都制圧戦にまで話が広がっちゃってました。


 うん、自分で言っておきながら話のデカさに呆れちゃう。

 おまけに異界の勇者まで絡んできてるときてる。

 はぁ……オレは復讐が終わったら死んでもいいやくらいに思ってたんだよね。

 でもこれはちょっと抱えるものが多くなりすぎちゃったなぁ。

 どうやら……まだ当分死ねなさそうだ。


 あ、そうそう。

 執政集団は、あれから全員が手を貸してくれることになった。

 ってことで司法書士ゴブリンのヤリヤのスキルを通してみんなと契約したんだ。

 で、そのそれぞれの契約条件はどうなったかというと。


 蜂、病気の嬢王蜂を治せる方法の伝授。

 岩、岩の中でなぜ自分だけが意思を持っているのかの解明。

 ゴリラ、理想の結婚相手を見つけて欲しい。

 ゴースト、定期的に乗り移れる肉体の提供。

 ビッグフット、安全でのびのび暮らせる土地。

 ザリエル、《権天使》が魔物に取り込まれた件のもみ消し。

 クナシ、「後日折を見て話します」とのこと。

 ユリス、安定した給料と年金。


 というものだった。

 癖の強い集団なだけあって要望の内容も様々だ。

 そして、この中でも蜂の頼みはすでにルゥを遣わせてもう解決している。

 蜂はブンブンと飛びながら「ありがとう」と宙に文字を描いてルゥに感謝を示していた。


 うん、そう。

 蜂は空中に文字を描いて意見を伝えるんだ。

 ちょっとだけ読み取るのに手間かかるけど、蜂の出す意見はいつも冷静で毎回みんなの役に立っている。

 あとスキルの【ハチミツ収穫】で集められたハチミツがほんとに美味しくて、みんなの間ではもうすっかり人気者だ。


 っと、ちょっと話が逸れたね。

 まぁ個性が強すぎる執政集団メンバーについては、書物にした場合には数万文字は必要ってレベルの濃さだから、ひとまず彼らについてはこの辺で。


 その執政集団。

 彼らの最初の議題は「執政集団の名前について」だった。

 いや、まぁたしかに執政集団って言いにくいもんね。

 で、結局ズィダオ達が連れてきた8人にソラノとヤリヤを加えた10(TEN)人で成り立ってるから『テンペスト』と名乗ることにしたようだった。

 で、オレはそのテンペストに仕事を全部任せちゃって、今はエルフ国のイケメン第4皇子に会いに行ってるところだった。


「こここここ、ここです! ここで降りて下さい!」


 ワイバーンに変身したオレの背中でそう叫ぶのは、エレクの護衛のエルフ。

 もちろん今も洗脳済みで、エルフ国への道案内をさせている。

 オレは森の中に急降下すると、エルフを下ろして変身を解いた。


「よし、あとはどうすればいいんだ?」

「はい、ここにエルフ族でしか開けない魔法の道があるので……」


 そう言ってゴニョゴニョと呪文のようなものを唱えると、生い茂っていた木々が左右に分かれていき不思議な雰囲気の漂う小道が現れた。


「あとはここを真っ直ぐ進んでいただければ大丈夫です」

「そうか、ご苦労だったな」


 オレはダイアウルフを一匹呼び出すと、エルフを乗せてゴブリン国へ帰らせた。


「さてと。それじゃあ行きますか、エルフ国」


 オレはスキル【透明】を使うと魔法の小道に足を踏み入れた。


「うぉお~、なんかキラキラしてるなぁ。なんだこれ」


 スキル【博識】で調べても載ってない不思議な発光。

 白、黄色、薄ピンクと柔らかな光がカチカチと光る中を通り、オレは人族のほとんど訪れたことのないという秘境──エルフ国に足を踏み入れた。


(ふお~! こうなってるのか!)


 小道を抜けると、開けた場所が目前に現れた。

 中央の巨大な樹木を中心に背の高い木々がドーム型にい茂っている。

 人々は、その巨大樹の上や中、そして木陰などで葉や枝の間を通り抜けてくる優しい風や光を浴びながらたおやかに暮らしているようだった。


(いや~、しかし話で聞いてはいたけど……やっぱ生で見ると違うな!)


 オーガ数十人が手を伸ばしても届かなそうな幅の巨大樹木。

 その圧倒的な存在感は、もはや霊樹れいじゅと呼んでもよさそうなほどだ。

 しばしその景観をたのしんだオレは、事前に教えてもらっていた第4皇子の住処すみかへと向かう。


(えっと……この辺なはずなんだけど……)


 エルフ国の繁華街ともいうべきそこは、穏やかながらも活気のあふれる商店の連なった大通りだった。


(ほんとにこんなところに住んでるのか? 王族ってのはもっと俗世間とは切り離されてそうなイメージなのに)


 第4皇子の家は、その大通りの中でも一番人通りの多い場所に面していた。


(え、ここにオレ透明なまま入ったらめっちゃ不自然だよな……。人通り多い中で、誰もいないのにドアだけ開いちゃうわけだし……。どっか他に窓とかは……)


 そう思って探したけど何もなかった。

 出入り口はこのドアひとつだけ。


(う~ん、どっかで変身するしかないかぁ)


 裏通りに入ると透明化を解き、街中で見かけた特徴の薄いエルフにスキルで【変身】する。


(よし、これでなるべく目立たないように……と)


 そろそろと忍び足で第4皇子の家へと向かう。

 そして皇子の家の玄関をノックしようとした時──。


「ノルボじゃねーか! どうした? さっき家に帰るって言ってなかったか?」


 あぁ……このエルフの知り合いっぽい……。

 どうにか上手く誤魔化さないと……。


「いやぁ~、ちょっと忘れ物しちゃって、あはは……」

「忘れ物? 忘れ物をしたって皇子の家にか?」

「え……?」

「いや、お前いま皇子の家に入ろうとしてただろ?」

「え、あ、どうだったかな~? してたかな~? あはは……」

「は? お前頭どうかしたのか?」


 呆れたようにオレを見つめるエルフの男。

 ああ、こんな時にこんなこと思うのも変だと思うけど、ついつい思ってしまった。

 やっぱエルフってのは顔整ってるもんなんだなぁって。

 そう思っちゃうくらいオレに話しかけてくるエルフの容姿は整っていた。


「おい、聞いてるのか?」

「え、あ、聞いてた聞いてた、あはは……」

「ったく……なにボーっとしてやがんだよ。いいか? 皇子の家のそこのドアはトラップだろ? 本当の入り口はこっち」


 そう言うと、エルフは脇道に入ると家の壁面を3回ノックした後に3回ボコボコと蹴った。

 そしてゴニャゴニャと短い詠唱を行うと、壁にドアが浮かび上がってきた。


「本当の入り口はこっちな」


 親切にドアまで開けてくれるエルフの人。


「それじゃあ皇子によろしくな、ノ《・》ル《・》ボ《・》」

「あ、ああ、助かったよ、ありがと……うっ!?」


 ドガッ!


 衝撃と共にオレの体は家の中へと蹴り込まれた。


「まぁ、オレがその皇子なんだがな」


 ……は?


「しかもお前はノルボじゃなく、ゴルドだ。なぜノ《・》ル《・》ボ《・》と呼ばれて返事をした? ん? 答えは簡単、お前はゴルドではないからだ」


 なるほど……。

 ずっと引っ掛けてたってわけか、オレを。

 

 ヤリヤが第4皇子を指して言った言葉が頭をよぎる。


(──とてつもない邪悪、でございます)


 これは──おそらくオレと同種の存在、もしくは限りなくそれに近い性質の存在だろうなと本能で察する。


「で、オレの顔も知らずにオレに会いに来るお前──ゴルドの姿をしたゴルドではないお前は一体何者なんだ? ん?」


 オレを追い詰めながら、第4皇子はニタリと笑う。

 

 なるほどなるほど。

 エルフ国の第4皇子。

 この用心深さ、相手を支配しようとする力、そして自分が殺されることは絶対にないと確信している圧倒的な自信。

 それらをまとめて表すのなら、たしかに「邪悪」という言葉が当てはまるかもしれない。

 そしてそれは──「カリスマ性」という言い方も出来るだろう。


(こいつが普段は愛想が良くておばさんたちに人気があるだって? とんだ猫かぶりじゃねえか)


 オレは皇子の顔を見上げる。


(さて、オレの思ってたイメージとはまるで違ったが……まぁ、これはこれで逆にやりやすそうだ)


 狂おしいほどに優艶ゆうえんな皇子の笑みが、オレの瞳に映っていた。

少しでも「第4皇子きたー!」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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