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有名になろう

 エルフとゴブリンのハーフのヤリヤは、結局エルフ国で父親に会うことは出来なかったようだった。

 とはいえ「エルフ国に連れていく」というオレと交わした契約は、これで一応無事果たされたことにはなった。

 ヤリヤに「エルフ国に移住したかったんじゃないのか?」と聞くと、伏し目がちに「行ってみて感じたのですが、私のような風貌ふうぼうだと移り住むのはやはり無理そうでした」と悲しそうに漏らした。


 ふむ……たしかエルフってのは美しいものを好むんだったか。


 オレは改めてヤリヤを見る。

 人間の成人よりは小柄だが、ゴブリンよりは大きい体。

 整っているわけではないが、どこか愛嬌のある顔。

 ヒョロっとしてメガネをかけている彼はとても特徴的でオレとしてはどこか愛着を感じる。


「そうか、お前の父親に関しては引き続き何か考えるとしよう」

「ハッ、私などにお気をかけていただき光栄でございます」

「えっとぉ、それなんだけどぉ……」


 口を開いたのはセイレーンのセレアナ。

 会議なんかにはほぼ顔を出さない自由気ままな彼女だったが、今はヤリヤ達の帰還祝いということで珍しくこういった話し合いに参加していた。

 そんなセレアナが意外な提案をする。


「父親を探すんじゃなくて、あなたが有名になればいいんじゃなぁい?」

「……は?」

「だからエルフってのは美しいものが好きなんでしょう? だからゴブリンとの間に生まれたあなたはエルフからしたら恥なのよぉ。だからいくら探しても名乗り出たりはしてこないんじゃないかしらぁ」

「…………」


 下を向いて歯を食いしばっているヤリヤ。

 悲しいことだけど、正直これはみんなが内心思っていたことだ。


「だからぁ、あなたが有名になるのぉ。父親があなたを恥ずかしいと思わないくらいに。『オレの息子はこんなにすごいんだぞ。ゴブリンとの間に生まれた子だけどそれがなんだ? こんなに素晴らしい息子になにか問題でも?』って周りに言えるくらいに」


 ……たしかに一理あるな。

 歌姫を目指してるセレアナならではのいい発想だ。


「ヤリヤ、今のセレアナの意見を聞いてどう思った?」

「ハッ……その、まぁ、道理は通ってる、かと……」

「うん、オレもそう思った。そして別に目指して損はないよな、有名人。ってことでお前はこれからズィダオ達が連れてくる執政集団を代表として取り仕切るんだ。そして王の右腕となって世界に名を轟かせろ。お前の父親の耳に入るくらいに、だ。いいな?」

「ハッ! 王の為にこの身をにして尽くさせていただきます!」


 お、なんかいい感じに話まとまったな。

 うん……しかしたまに出るセレアナの視点って結構役に立つというか、この先国家という多様な集団を率いていくことを考えると是非このままオレのそばにいて欲しい人材なんだよなぁ。

 ゴブリン以降にオレが出会う相手ってみんなオレに平伏しちゃって、こうやって対等に話せる人も少ないし。

 でもセレアナともスキルを返すまでの間の仮初かりそめの付き合いだからなぁ。


「王ではありませんよ」


 ミアがオレ達の言葉を訂正する。


 ああ、そうだ……まだ全くなんの実感もないけど……。


「これからはフォード・オファリング初代皇帝陛下、です」


 オレは皇帝になったんだった……。


 その後、驚くリサ達に今後世界征服をする話や、それにともなって皇帝を名乗ることになった話をする。


「はぁ……呆れた……。なんで自分をイジメてた相手に復讐してただけなのに世界征服なんかしちゃう話になるのよ……。しかも皇帝とか……。そんなのおとぎ話の中にしか存在しないわよ」

「皆さんの望みを叶えるには、これが一番理にかなってると判断しました」


 めっきりオレの秘書として馴染んできた感のあるミアが、受付嬢時代と変わらぬ笑顔でそうきっぱりと言い切る。


「はぁ……モモ。あなた幼なじみとしてなにか言ってやってよ」

「え、私? いや~、なんだろうな、あはは。世界征服かぁ。スケールが大きすぎて想像がつかないや」


 そういえばミアを王国兵から救出した後、オレと関係があるモモの周辺も危ないかもと思って家を見に行ったら、案の定モモの両親も乱暴に連行されている途中だった。

 それをオレがちょちょいと救い出して、今モモは両親と一緒にゴブリン国で暮らしている。


「まぁ、全体的に今よりも世界がよくなるんであれば? いいんじゃないかな~と……あはは……」

「なにそれ、随分ふわっとしてるわね」


 逆にモモらしさが出てて、そのやり取りにオレはほっこりする。


「よし。じゃあ、もしもオレが完全に悪に染まっちゃったらモモに止めてもらおう」

「え~、私に出来るかなぁ?」

「いつだって出来るさ。いや、モモだから出来るんだ」

「そっか~、じゃあその時は頑張るね」

「ああ、頼んだ」


 こういう軽口が叩けるのが楽しい。

 皇帝とか策略とか謀略とかなんだか疲れちゃうよ。

 早く執政集団が集結してこういうの一手に請け負ってほしいなぁ。


 そしてオレが心の中でそう呟いた数日後。

 アカオニのズィダオとアオオニのソウサーが念願の執政集団を連れて帰ってきた。

少しでも「執政集団やっときたー!」「悪に染まる……モモが倒す……フラグ……?」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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