表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/92

復讐、開始

「すでに先生が【賛成】に入れていたのでしたぁ~~~~!!!」


 醜く歪んだ大悪魔がアンケートの結果を根底からひっくり返す。


 むき出しになる魔物の本性。

 根っからの邪悪。


 やっぱこんな奴らになんかハナっから期待しなくて正解だったな。

 お陰で精神的なダメージを受けずに済んだぜ。


 生徒の魔物たちは抗議の声を上げる。 


「センセー! そんな! アンケートで全員反対に入れたのに!」

「そうよそうよ! 先生も投票するなんて聞いてないわ!」


 大悪魔の顔が邪悪そのものに変化し、生徒たちを一喝する。


「そもそも誰が生徒のみの票で判断すると言ったァ!? 卑怯な人間が相手だったら貴方たちはもう死んでいるのですッ! その甘さこそが魔物にとって一番不要なものッ! 人間は殺すのですッ! 殺す殺す殺すッッッ! 残虐にッ! むごたらしくッ! 無慈悲にッ! そして得るのです! 悦楽をッ! 快楽をッ! 充足をォ!」


 これがさっきまで紳士の如く振る舞っていた大悪魔の本性か。

 そして、これもスキル【博識】で得た知識によるものなのか、絶妙な演説で魔物たちを一気に狂気へといざなっていく。


「ミノタくん前へ!」

「……」

「前へッ!」

「は、はいっ!」

「斧を持って」

「でも……」

「早く!」


 ミノタウロスは、斧を手に取るとオレの前へとやってきた。


「あの、センセー……オレ……」

「首を切り落とせ」

「でも」

「切り落とせえええ!」

「……」

「これは貴方たちの心の甘さを捨てるための授業なのです! 人間に情けは無用ッ! 奴らにはスキを見せたら最後ッ! 姑息な手で我々魔族をほふってきますよ!」

「そんな……! でもフィードはいい奴で……」


 その時、水を打ったかのように静まり返す教室に1人の声が響いた。


「コろせ……」


 その声を発したのはオーク。

 その目は完全に狂気に乗っ取られている。


「コろせ……!コろせ!」

「ころせ、ころせ……」

「殺せ! 殺せ!」

「そうだよ、人間なんて生かしておく必要ないだろ! 殺せ殺せ殺せ殺せ!」


 その狂気はどんどんと伝播でんぱしていき、やがて教室中が「殺せ」の大コールに包まれた。


(はは……しょせんこんなもんだよな魔物なんて。わかってはいたが、これだけのむき出しの殺意を一気に浴びせられるのは……やっぱちょっとキツいもんがあるな)


 ただ1人、煽りに参加していない魔物が目に入った。

 両手を組んで祈りを捧げ続けてるゴーゴン。

 目元を覆う黒いベールと全身黒のドレスによって、まるでオレの葬式に参列してるように見える。


 最初にオレに屈辱的な名前を付けた女。


 でも……それ以降はなんだかんだ気を遣ってくれてたんだよな……。

 オレと同じような境遇のイジメられっ子の魔物。

 だが……こいつもしょせんは魔物だ。


 オレは覚悟を決める。


──狡猾。


 スキル【狡猾】を発動する。

 これでこれからの隠密行動が成功しやすくなった。

 さらに続けて【吸収眼】を発動させる。


──吸収、吸収ッ!


 あらかじめ決めておいたスキルを2つ奪う。

 大悪魔の【博識】とインビジブル・ストーカーの【透明】。


 残り吸収上限18。

 残り魔物スキル19。


 インビジブル・ストーカーは間の抜けた裸体が晒し出され、大悪魔は放心してる。


──博識。


 その様子を尻目にオレは奪ったばかりの【博識】スキルを使う。


「ウッ……」


 これから奪う予定のスキルの詳細がどんどん頭に流れ込んできた。

 なるほど、これは今必要としてる情報に関して自動で辞書を引いてくれる感じなんだな。

 よし、それじゃあちょっとスキルを奪う順番も変えるか。


 臨機応変、いいじゃないのっ!


──咆哮っ!


 まずは予定通り、昨日のうちに奪っておいた【咆哮】で教室の連中の動きを止める。


──透明。


 そして奪ったばかりの【透明】を使って自分の姿を消した。

 これですぐには殺されないはず。


──死の予告。リミット30秒。


 よし決まった!

 これで30秒後にはこのクラスの魔物は全員死ぬ。 

 それまでに、全てのスキルを吸収しきってやる!

 まずは食らうとヤバい攻撃から!


──吸収、吸収、吸収、吸収、吸収ぅぅッ!


 メデューサの【邪眼】、サキュバスの【魅了】、ゴーゴンの【石化】、ケルベロスの【火炎】、ラスト・モンスターの【腐食】。


 残り吸収上限13。

 残り魔物スキル14。


 よ~~~~し!

 見事に危険な攻撃を奪いきった!

 じゃあ次は使われたら厄介なスキルだ!


──吸収、吸しゅ……!


 ゴウッ!


「うわっ!」


 ものすごい速さで机が飛んできた。


──軌道予測っ!


 オークの投げたそれをとっさにスキルを発動してかわす。

 机は後ろの黒板に当たって粉々に砕け散った。

 と同時に宙一面にコカトリスの【毒液】が撒き散らされる。


(こいつ、仲間もお構いなしかよっ!)


──軌道予測ッ!


 ぐっ。

 足が……植物に絡め取られている。

 アルラウネから伸びたツタが透明なオレを縛り上げようと巻き付いてくる。


(あっ……しくったかこれは……)


 一瞬そう思うも、今ガーゴイルから奪ったばかりのスキル【石肌】を発動させる。


──石肌!


 ザバァ。


「ギャァァァッ!」


 オレに絡みついたツタが溶かされアルラウネが叫び声を上げる。

 しかし石になっていたオレには毒は効かない。


 残り吸収上限12。

 残り魔物スキル13。


(くそ、時間ロスった! あと何秒あるんだ……!)


──吸収っ!


 よしいけた、ワイバーンの【高速飛行】!


 ズシィーン!


 ワイバーンが地上に落ちた音が聞こえる。


 残り吸収上限11。

 残り魔物スキル12。


 時間がない、一気に行くぞ!


──吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収、吸収ぅぅぅぅ!


 アルラウネの【植物知識】、オーガの【剛力】、ケルピーの【潜水】、コカトリスの【毒液】、スキュラの【毒触手】、セイレーンの【美声】、タロスの【発熱】、ドッペルゲンガーの【変身】、ミミックの【擬態】、ラミアの【不眠】、ローパーの【投触手】。


 残り吸収上限0。

 残り魔物スキル1。


 よーーーし!

 これでオークの【怪力】以外は全部奪った!

 あとは【死の予告】が発動するまで待でばいい。


 ブォン! ブォン!


 ミノタウロスが手に持った斧を軌道ブレブレで振り回してる。


「なんでだ……なんで【旋風斧】が発動しねえええええ!?」


 それはな、オレがスキルを奪ったからだよ。


──高速飛行。


 ミノタウロスの背後に回り込むと、斧の柄を握る。


──剛力。


 その斧を奪い取ると、


──旋風斧。


 ミノタウロスから奪ったスキルで斧を振り回した。

 その旋風は近くにいたミノタウロスと大悪魔を真っ二つにする。


「これ……は、オレの……」


 驚愕の表情を浮かべたまま、ミノタウロスは切り離された自分の下半身を見つめる。

 大悪魔はほうけたまま死んでいる。


 これはこれは……たった魔力50のオレに魔力49659の超上位魔物が倒されるとはね。

 スキルを乗算させた結果か。


 吹き出す血を浴びて白い礼服がみるみる赤く染めあげられていく。

 そして、その返り血で透明化したオレの位置が判明してしまったようだ。

 殺されたミノタウロス達を見てスイッチの入った魔物たちが一斉に襲いかかってくる。


「おう、いいぜ。かかってこいよ魔物ども」


 残り数秒。

 オレが30日間イメトレを重ねに重ねてきた結果をお前らに見せてやる。


 現在のオレのスキル。

【鑑定眼】【吸収眼】【剛力】【火炎】【毒液】

【邪眼】【腐食】【暗殺】【透明】【石肌】

【咆哮】【魅了】【偏食】【潜水】【美声】

【発熱】【狡猾】【変身】【吸血】【邪悪】

【擬態】【不眠】【石化】【博識】【死の予告】

【死の悲鳴】【斧旋風】【毒触手】【投触手】

【植物知識】【軌道予測】【高速飛行】

次話【祈り】

7月19日(今日)19:30頃更新予定


『30日後にマモノに食べられるオレ(略』は毎日更新中!

もし少しでも「ミノタウロス~><」「やっと戦い始まったー」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると嬉しいです。

いいね、感想、ブクマ登録もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ