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世界征服皇帝宣言

 毎月の給金と年2回のボーナス。

 それを条件にミア=ベルナルドはオレの秘書になった。

 間違えてスキルを奪ってしまってたことを伝えるも「その分はボーナス査定額に加えてください」という現実的でちゃっかりした返事が返ってきた。


 秘書にしてみて改めて実感したが、やはりミアは結構なしっかりものだった。

 目の前のタスクをしっかりとひとつずつこなしていくタイプというか、決して「あ~、なにから手を付けていいかわからん」とは絶対にならないタイプ。

 聞けば幼い頃に親を亡くしたそうで、それから1人で生きていくために自然を身についた能力なんだそうだ。


 ある日ミアに「最終的にはどういう状況を目指してるんですか?」と聞かれた。


「いや、とりあえずオレを魔界に連れ去った奴らに復讐をしたいだけなんだが……。あとヒナギクに酷いことした奴らを許せないのと、ルゥに危害を及ぼす教会もどうにかしたいかな。それからオレのレベルを上げて【付与】スキルを覚えてリサやセレアナ、あとミアにもスキルを返して……。あとはそうだな、聖オファリング王国とゴブリン国もどうにかしなきゃだな。あ、エレクも失脚させてエルフ国からの脅威もなくしたい」


 それを「ふむふむ」と腕を組んで聞いていたミアはあごを触りながら一言「うん、そうですね……」と呟くと、みんなを広場に集めるようにとオレに言った。


 ざわざわ。


「急に集められたけど一体なんなんだ?」

「なんだ? 祭りか? 酒が飲めるのか?」


 ゴブリン達が広場に集まってくる。


 あ、そういえばゴブリン。

 名前のない魔物には格上の者が「名付け」をしてあげると能力が向上するんだよね。

 だから戦力増強のためにも名付けをしていかなきゃいんだけど、正直ゴブリンの数が多すぎて手が回ってなかった。

 そこで試しに1人のゴブリンに「セイメイ」という名を与えてみたら、なんとそのセイメイの職業は「姓名判断士」でスキルは【名付け】に変化したんだ。

 それからは名付けを全部セイメイに任せてみてた。

 結果、名付けは順調に進んで今ではもう大半のゴブリンが固有スキルを所持して共通語まで話せるようになっていた。


「みなさん、忙しい中よく集まってくださいました」


 ミアが集まったゴブリン達に声をかける。


「ミアの嬢ちゃん一体なんなんだ~? 工作用の道具ならまで出来てね~ぞ~?」

「もしかしてオレ達仕事遅いって怒られるのか~?」


 こほん、とミアは咳払いをひとつ打つ。


「今日集まっていただいたのは、ゴブリン国のこれからの指針についてお知らせするためです」

「指針~? 指針ってなんだ~?」

「ほら、あれだろ~? 魚釣る時の~釣り針? みたいな~?」


 ミアは余計なことを言わず、ゴブリン達のざわめきが収まるのを静かに待っている。


 ん~? なんかここまで勿体もったいつけられると嫌な予感しかしないんだが~?


 そう思うオレの不安を遥かに上回る一言をミアはこの後に発した。




「私たちは、世界征服をします」




 ……………………ん?


 あまりの斜め上すぎる発言に固まってしまってるオレをよそにゴブリン達は盛り上がりまくる。


「うおおおおおお!」

「世界征服! 世界征服だってよ!」

「フィード王! フィード王!」


 興奮したゴブリン達の「フィード王」コールが大空洞の中に響き渡り、その空気の震えがオレの肌をビリビリと刺激する。


「私達が望むのは、私達が安全に暮らせる生活です。しかし、現状わたしたちは王都、魔界、エルフ国など多岐たきにわたる脅威にさらされています。みなさんは今の状況に満足ですか?」

「満足なわけないだろー!」

「みんな大人になってもすぐ死んじまうんだ! あいつらに殺されて!」


 え、ちょっと待って。

 めっちゃ扇動アジテートするじゃんミア……。


「そう、では私達が幸せをつかむにはどうしたらいいと思いますか?」

「戦うー!」

「殺される前に殺すんだー!」

「そう、私達が幸せをつかむには戦うしかないのです。時に駆逐し、時に外交を結び、そして私達がこの世界全てを統べる。それが私達の目指すべき唯一の道。そして……」


 振り向いたミアは、唖然としてるオレに手を向けるとこう続けた。


「それを可能とするのがゴブリン国次期国王であり聖オファリング王国真王であらせられるフィード・オファリング殿下なのです!」


 は……い……?


「うおおおおおおおおおおおおお!」

『フィード王! フィード王!』


 さっきよりも遥かに大きい「フィード王」コール。

 その地面も揺れるほどの歓声の中、ゴブリン国王が前へと歩み出る。


 ゴブリン王……冷静な貴方あなたならみんなをいさめてくれるはずだ。

 なんてったってオレが王都制圧を相談した時も冷静な進言をくれた人だからな。

 うん、頼むぞゴブリン王……。


「え~、みんな。今のミア殿の発言じゃが……」


 うん、いいぞ国王。

 みんなを冷静にさせてくれ。


「ワシも全力でフィード殿を支える所存しょぞんじゃ」


 ええ~~~~~~~~~~~~!?

 ゴ、ゴブリン王~~~~~~~!?


「当初はワシもフィード殿をこの国の王にえるつもりじゃった。娘のグローバともいい仲じゃったしな」


 そういってグローバへと視線を送るゴブリン王。

 グローバは少し寂しそうな表情を浮かべて微笑んでいる。


「だが、フィード殿は聖オファリング王国の現国王。しかも今度は世界征服ときたもんじゃ。残念じゃがもうグローバで繋ぎ留められるほどの器の御方ではなかったようじゃ。今後はフィード殿は『皇帝』を名乗られるがよい。そしてよければ我が娘グローバを貴方様の後宮に入れていただきたい。我ら人間界に拠点を構えるゴブリンは、みなフィード皇帝の盾となり、時に槍となり、貴方の望む世界を作り上げるいしずえとなりましょう」


 ゴブリン王にならい、グローバやゴブリン達もみな片膝をつき右手を胸に当ててオレへの忠誠を表明する。


「我らゴブリン一同、フィード皇帝に忠誠を!」

『我らゴブリン一同、フィード皇帝に忠誠を!』


 ゴブリン王の言葉に続いて、ゴブリン達の声が大空洞に凛と響く。


 え……。


 えぇ~~~………?


 なんかオレ、国王飛び越して



 皇帝



 になっちゃったんですけどぉ~~~~?

少しでも「ミアちゃん、めっちゃ話飛躍させるやん……」「勝手に婚約されて勝手に婚約解消される男、フィード……」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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