受付嬢ミアの受難
洗脳したソラノを問い詰めてわかったこと。
・オレの正体に気づいているのはゾゲッタとの会話を聞いていたエルフのエレクのみ。
・ゾゲッタはエレクに殺された。
・ゾゲッタとマルゴットの死体はエレクに消滅させられた。
・マルゴットの言っていた『あのお方』とはエレクのこと。
・エレクはエルフ国の第一皇子。
・エレクは他の皇子を排除して自分が王位につくために人間界に潜入し、独自のコネクションを広げようとしている。
・パーティーメンバーでエレクと繋がっていたのはマルゴットとソラノのみ。
・ゴブリン国の場所はエレクの護衛エルフに教えられてたどり着けた。
・ソラノはエレクの命令でルゥを殺しに来た。
・ルゥを消した後はエレクが貸しを作る形で王国と教会がオレを潰しに来る予定だった。
「長い! 話が長いですわぁ! わかりやすく簡潔にまとめてくださるぅ?」
1人だけ遅れてやってきたセレアナが1ミリも悪びれる様子もなくオレの尋問にケチをつける。
「うん、つまりは倒すべき相手が王国、教会に加えてエルフ国の第一皇子も増えたってことかな」
「え、第一皇子? それってエルフ国を敵に回すってことなんじゃ……」
エルフ国に自分の父親を探しに行きたいと言っていた司法書士ゴブリン、ヤリヤの顔が曇る。
「いや、そうとも言い切れない」
「? どういうことですか?」
「エレクは王位継承の座を固めるために人間界で色々やってるんだろ? じゃあ、もし人間界で築いたコネクション以上のものが第二、第三皇子たちについたら?」
「──本末転倒、ですね……!」
「そう、例えば聖オファリング王国が他の皇子のバックにつけば? 王都をオレたちが制圧してエレクのコネクションを潰したら? エレクが人間界で行っている悪行を現エルフ王に告げ口したら?」
「……直接エルフ国を敵に回す必要はなくなる、と」
次第に表情に明るさを取り戻していくヤリヤ。
「そしてヤリヤ、その使者をお前に頼みたい。エルフ国の情勢、どの皇子のバックににつくべきか。それをお前が判断しろ。そしてついでに」
オレはニイと笑いかける。
「父親も探してこい」
ヤリヤはヨタヨタと、しかし彼にとってはおそらく最速のスピードでその場に土下座をするとオレへの感謝の意を示す。
「ハッ! かならず満足行く成果を持ち帰ります! そして私との契約をこんなに早く履行していただいたフィード・オファリング真王に感謝を!」
「うん、頼んだぞ。で、そのエルフ国の場所は……っと。そうだな、ソラノ。お前にここの場所を教えてたというエルフはまだ近くにいるのか?」
ソラノはぼんやりとした瞳を宙に向け「はい……必ず1人は外で待機しているはずです……」と答える。
「よし、じゃあ今からそいつを捕まえて案内させよう。それからエルフ国への護衛はリサ、ヒナギクに頼みたい。移動はダイアウルフを使えば数日で済むだろう」
「いいわよ、高貴な血筋の私を使者として王に遣わすとは悪くない人選ね」
「わかったっス。自分はヤリヤを警護しながら密偵として情報を集めてくるっス」
「頼んだぞ。よし、じゃあ……これからエルフを捕まえに行くか!」
それから数分後。
ソラノが表に出て呼び出したエルフを、透明化したオレと空気と同化したヒナギクで一瞬でふん縛るとサクッと【洗脳】をかけた。
そのエルフによるとエレクが一番警戒しているのは策略家の第二皇子で、次が武人の第三皇子、一番軽視してるのがまだ子供でおっとりとしている第四皇子だそうだ。
さてさて、どの皇子と繋がりを持つべきか。
まぁ、それはヤリヤ達の報告を待ってから決めるとしよう。
しかし大司教襲撃と王都制圧の準備、そしてエルフ国への裏工作とやることが多くなってきたぞ……。
あ、聖オファリング王国にも一度足を運んでみなきゃだな。
こうなってくるとスケジュール管理が大変だ……。
秘書。
そうだ、秘書が欲しい。
冒険者ギルドでオレたちの担当をしてくれた受付嬢のミアみたいな子がいてくれたらな~。
そういえばオレは事故でミアから【事前準備】のスキルを奪っちゃってるんだよなぁ。
オレは右手を見つめ、その時に「事故」で「たまたま」触ってしまったミアのおしりの感触を思い出す。
ミア、今頃どうしてるかな……。
◆◇◆◇◆
王都。
盗賊ギルド長が殺されたことによって各ギルドは慌ただしく対応に追われていた。
そんな中、ギルド長のゾゲッタと連絡が取れない冒険者ギルドは大混乱に陥っていた。
「おい! 新しいクエスト全然更新されてねぇじゃねぇか!」
「クエスト報酬が用意できないってどういうことだよ!」
口々に怒声を上げる冒険者たち。
「だからわからないんですよ! ギルド長の許可なく新しいクエストを出したり報酬を出したりすることは出来ませ~ん!」
「なんでだよ! ギルド長はどこにいるんだ、こんな時に!」
「あ~~~! もうだからわからないんですよ! 私達に聞かないで下さい!」
「お前たちに聞かなきゃ誰に聞けってんだ!?」
王国歴代最高の冒険者ゾゲッタのカリスマ性。
長い間それが土台となって成り立っていた冒険者ギルドは、そのゾゲッタを失ったことによって完全に崩壊してしまっていた。
「ふぇ~! せんぱぁ~い、助けてくださぁ~い!」
冒険者たちの口撃から逃れてきた新人受付嬢ユリスが、カウンターの下にしゃがんで隠れているミアの元へとやってきた。
「一体どうなってるんですか~。冒険者の人たちめちゃめちゃ怒ってるんですけど~!」
「う~ん、ゾゲッタさんが来るまで待つしかないんだよね、とりあえず」
そう答えるミアの笑顔にもさすがに疲弊の色が見て取れる。
「それはそうなんですけど~。対応する私達の身にもなって欲しいですよぉ~」
「あはは~、冒険者の人たちからしたらこっちの事情は知ったこっちゃないだろうからね~。みんな生活のためにお金必要だろうし」
「っていうか私達の給金ってちゃんと出るんですかぁ~?」
「出ると思うよ~。……ゾゲッタさんが戻ってくれば」
「だからそのゾゲッタさんはいつ来るんですかぁ~」
禅問答のように毎回ぐるぐると堂々巡りになってしまう会話の後、涙目で蹲ったユリスの頭をミアは「よしよし」と優しく撫でる。
(はぁ~……まず今日をなんとかやり過ごそう。それで閉店後に指示をもらいに王城に行って……あれ? 王城でいいんだっけ? う~ん、ゾゲッタさんいないと次の責任者は私ってことになっちゃうんだけど……どうしたらいいのか全然わからん……)
途方に暮れたミアの耳に、もはや環境音と化した冒険者たちの怒声が飛び込んでくる。
(そういやフィードさん達、今日来なかったけどどうしてるかな~。聖女様の対応も教会から連絡来ないし)
ミアがそんなことを考えていると、冒険者たちのどよめきが聞こえてきた。
(? どうしたのかな?)
ヒョイと顔半分をカウンターの上に出して見てみる。
冒険者たちの群れが左右に割れる。
ガシャンガシャン。
そんなけたたましい音を立てながら冒険者を押しのけ現れたのは絢爛(絢爛)な全身鎧を纏った数人の王国正規兵達。
「ミア=ベルナルドはいるか!?」
「は、はい、私です……」
カウンターから目だけを出したミアがおずおずと答える。
「ミア=ベルナルド、お前を拘束する」
「ええ~~~~~~!?」
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