1日ぶりの全員集合
宿に戻るとオレは泥のように眠った。
隣にはルゥたちも居る。
ここは安全で安心できる場所──だ……。
日中の暑さに思わず目を覚ます。
(ああ、もう昼なのか……早く起きなきゃ……)
目をこすりながら体を起こそうとすると、優しい声──ルゥの声が耳に入ってきた。
「おはようございます、フィードさん」
「ルゥ、おはよう。ごめん、寝坊したっぽい……」
急いで起きようとするオレの手をルゥが包む。
すると眠気や疲れが薄れていき、スゥと心が穏やかになっていった。
これが聖女の──いやルゥの力か……。
「ありがとう、ルゥ」
「いえ。フィードさん、昨夜はあれから大変だったんですよね?」
「うん、まぁ大変……だったかな。あ、ヒナギクは? ヒナギクはどうしてる?」
昨夜ルゥに救出したヒナギクを任せていたことを思い出す。
「ええ、もうヒナギクさんの体の傷は治って私達の部屋で休んでいます。あと用心して部屋の外にも出していません」
「そうか、ありがとう。ルゥのおかげだ……助かったよ」
「いえ……。あとリサさん達は冒険者ギルドに行ってます。私の今後の予定を聞いてくれてるはずです」
いたせりつくせりな仲間。
オレ一人だけじゃこうはいかなかっただろうな。
改めてみんなに心から感謝だ。
「あ、フィード起きたの?」
そう言いながら部屋に入ってきたのはリサとセレアナ。
セレアナは両手いっぱいに食べ物を抱えてほくほく顔だ。
「食べ物もいっぱい買ってきましたわぁ!」
「お、おう。じゃあ隣の部屋で話そう。昨日なにがあったかみんなに伝えたいし」
「わかったわ。あ、それと途中で会ったからモモも連れてきたわよ」
後ろからヒョコッとモモが顔を覗かせる。
「わぁ! アベルくんだぁ!」
ああ、昨日ゾゲッタと戦った時に男の姿に戻ってからそのままだったな。
いつもの姿に変わっておくか。
──変身。
王都でのいつもの格好──女の姿に変身する。
「悪いなモモ。王都でのオレはフィードだ」
「はぁ……またフィードくんになっちゃったよ……」
「なんで残念そうなんだよ」
「うぅ……だって私はやっぱりアベルくんの姿の方がしっくりくるよ」
「王都での仕事が全部終わったらまたアベルに戻るさ。姿も名前も、な」
まぁ、その頃にはこの王国も要職の人物たちがみんな死んでガタガタになってるだろうけどな。
「ほんと!? なら私、アベルくんの仕事が早く終わるように全力で手伝うね!」
「お、おう」
モモを適当にいなすと、オレたちはヒナギクの休んでる隣の部屋に移動した。
セレアナの大量に買い込んできた串焼きやら果物やらを手に皆にとっては昼食、オレにとっては遅めの朝食を取りながら今までの経緯を説明する。
「ほんとだ! ヒナギクちゃんアンデッドじゃなくなってる!」
「人間にもそんな残虐なやつがいますのね。あまり気分はよくありませんわ」
「でもさっき行った冒険者ギルドはいつもと変わらない感じだったわよ?」
「たしかに。盗賊ギルド長が殺されて、ゾゲッタさんも仕事に来てないはずなんですよね? それならギルドは相当混乱してそうですが……」
それぞれ感想を口にする。
「それだけ情報の統制が取れてるんだろう。逆に恐ろしいな、その管理の徹底ぶりが」
手に焼き鳥を持ってポカンと話を聞いていた当事者ヒナギクにオレは話を振ってみる。
「ヒナギクは今の話を聞いてどう思った?」
「え、自分っスか? いや~、たしかに何も覚えてないからなんとも言えないっスね。『ラベル様に従わなきゃいけない』ってことしか覚えてないっス」
「でも拷問は受けたわけだろ?」
「あ~、でも拷問っていうか、ああいうのみんな受けてるんじゃないんスか? わりと普通のこととして捉えてたっスけど」
ヘラヘラとそう話すヒナギクに、オレはなんと言っていいのかわからず口ごもった。
「バカねっ!」
リサの声が部屋に響く。
「そんなのが普通なわけない! あなたはもう自分の親の顔も思い出せない! 今まで食べてきた美味しいのものも、一緒に過ごしてきた人たちも、もしかしたら過去にいたかもしれない恋人まで全て奪われてしまったのよ! そんなの、そんなの笑って済ませるはずがないじゃないの!」
涙をこぼしながらまっすぐに言葉を伝えるリサ。
その涙に込められてるのは怒り、そして。
愛情。
「そ、そういうこと、っスよね……。わかって……わかってはいたんスけど……」
ヒナギクも大声を上げて泣き始める。
(風の精霊シルフがラベルに消されてなければ、泣き声が外に漏れないように遮断してあげられたんだけどな……)
そう思った時、頭の中に声が聞こえてきた。
(……きます)
(え?)
(出来ますよ)
(もしかして……シルフか?)
(はい。私は昨日、白銀騎士ラベルによって存在を一時的に消滅させられました。しかし、我ら精霊の存在をそんなことで消し去るのは不可能。1日あれば精霊界で体を再生できます)
(そうか、それならば頼む)
(はい)
心地のよい風が部屋に吹き渡り、2人の泣き声を優しく包む。
これはヒナギクの第二の人生の産声。
そしてオレが隠れてコソコソやっていた復讐の道が、仲間みんなの進むべき道と重なった瞬間だった。
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