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復讐の記録4:盗賊ギルド長

「ルゥ! ヒナギクを治してやってくれ!」


 宿屋に戻ってきたオレは、すぐにルゥの元に駆け寄る。


「……ん? フィード……さん? 一体なに……」


 眠い目をこするルゥだったが、オレが抱きかかえているヒナギクの姿を見るとハッと息を呑んだ。


「ひどい……! すぐに治します! 私のベッドに寝かせて下さい!」


 オレ達との因果を断たれ、血だらけ傷だらけのズタボロになったヒナギクをルゥが寝ていたベッドにそっと横たわらせる。


『エクストラヒール』


 聖女ルゥの放った優しい光がヒナギクを包むと、徐々に傷がふさがっていった。


「だ、誰だか知らないけど助かったっス……」


 息も絶え絶えにお礼を言うヒナギク。


「そんな……ヒナギクさん……?」


 その言葉に動揺するルゥに「大丈夫。説明するから」と声をかけると、スキル【洗脳】でヒナギクに「朝までぐっすり眠るんだ」と命令する。


「はい……。わかったっス……」


 そう言い終わるとヒナギクは一瞬で眠りに落ちた。


「くそっ……!」


 オレは激しく机を殴りつける。


 ヒナギクはこれまでもずっと、何かある毎に他者との因果を断たれ続けてきたのだろう。

 いや、下手したら任務毎に毎回。

 その度に本人も気づかないうちにその心は傷ついていき、また、他人をも傷つけてしまってきたはずだ。

 たとえ体の傷が癒えたとしても心の傷はそう簡単に癒えるものではないだろう。

 そして、そうやって積み重なっていった彼女の心的ストレスは徐々にヒナギクをむしばみ、やがて訪れる崩壊の日へと一歩、また一歩と近づいていっていたはずだ。


 オレは確信する。


『ヒナギクを助けられるのは、この世界でオレしか存在してない』ことに。


 ラベル=ヤマギシ。

 チートスキル【因果剣】の使い手。

 勇者。

 白銀騎士。

 その他の出自一切不明。


 悔しいが、どこに住んでるかもわからないこいつを今殺すことは不可能だ。

 しっかりと調べ上げてから必ずお前は殺してやる。


 くらい復讐の炎を燃やすオレに、ルゥが声をかけてくる。


「あの、ヒナギクさんも大変なんですけど……フィードさん、大丈夫ですか? なんだか全部を一人で背負い込んじゃってる気がして」


 あぁ、ルゥ。

 お前はなんて優しいんだ。

 こんな時にヒナギクだけじゃなくてオレの心配までしてくれるなんて。

 オレの燃やしていた復讐の炎がスゥっと薄れていくのを感じた。


「ヒナギクは白銀騎士ラベルのスキルによってオレ達との関わりが全て『なかった』ことになっているらしい。そのおかげでアンデッド化も解除されている」

「あ、そう言われてみればたしかに……」

「詳しくは朝、みんなが起きてから説明する。オレはまだ行くところがあるんだ」


 そう言って窓へと向かうオレの背中にルゥが声をかける。


「あのっ! 私じゃまだ力不足かもしれませんが、いつか私もフィードさんと一緒に戦えるようになって恩返ししたいんです。だから、だから……」


 ルゥは言おうとしたことを一瞬ためらう。


「む、無茶だけはしないで下さい!」

「ああ、ありがとう」


 オレはルゥに微笑むと透明化して窓から飛んだ。

 空を突っ切りながら一瞬小さくなった復讐の炎を再びたぎらせる。


 悪いな、ルゥ。

 オレは最速、最短で復讐を果たすことに決めたんだ。

 夜が明けるまでに盗賊ギルド長と冒険者ギルド長。

 そして明日はラベル=ヤマギシだ。


 ルゥのため、ヒナギクのため、家族のためなんて御託ごたくは並べない。

 全てオレのため。

 オレの意思。

 オレのエゴで殺す。

 そのためには無茶だってなんだってするさ。

 ぶっ壊れたオレの中に唯一残ってた人としての心。


 怒り。


 その衝動に身を任せ、以前盗賊に聞き出していた盗賊ギルド長の隠れ家へと夜空を切って向かっていく。


 オレをさらっただけでなく、オレの両親まで手に掛けようとした盗賊ギルドのおさ

 お前には慈悲すら与えず、むごたらしく殺してやる。

 そう。

 このオレの手で!


 やがて、目指していた盗賊ギルド長の隠れ家が見えてきた。


「ふぅん……」


 上空から見ればわかるが、この屋敷は四方からの侵入者に対して万全の構えを備えている。

 通常の侵入者であれば、次々と襲いかかってくるトラップの山に押しつぶされ、館内に入ることすら不可能だろう。

 だが、そんなことオレには関係ない。


──範囲石化。


 ルゥの持っていた【石化】をオレの【スキル改変】で変化させた【範囲石化】。

 これによって屋敷全体が石造りの建物と化してしまった。

 それどころか庭も、堀も、沼も。

 そしてトラップも。


 オレは地面に降り立つと、つかつかと一直線に屋敷の中へと向かう。


──石化部分解除&腐食。


 館の扉の石化のみを解除すると、スキル【腐食】で腐れ落ちさせる。

 ただれ落ちたドアを踏み越えて館の中へと足を踏み入れる。


 たしか、ギルド長は地下にいるはずだ。

 書斎の本棚を動かしてから、その下にある床を3連続で押すと開くっと……。


 いち、に、さん。


 ガコッ!


 地下へと続く扉が開いた。


 ったく、オレは今夜だけで何回地下に降りればいいってんだ。


 そんなことを思いながら地下へと降りていく。

 階段を降りきると、寝室が現れた。

 壁一面にかけられた拷問器具の数々。

 立ち込める腐った血の匂い。


 不快な部屋だ。

 一体どんなやつがこんな部屋に住んでるんだ。


 オレはその顔を見てやろうとベッドで寝ている男に手を伸ばす。


「──ッ!」


 刹那、後ろから首を締められたことに気づく。


──い、石、肌……!


 表皮を石に変えたオレは振り向きざまに裏拳を繰り出す。

 敵はそれを軽々と避けると、縄でぐるぐるとオレを巻き付けてくる。


──発熱!


 その縄をスキルで焼き切る。

 しかし敵の姿を見失う。

 いや、というよりこれまで一度も敵の姿を見ていない。

 足音や気配すらない。


「腐っても盗賊ギルドのボスってことか……」


──透明。


 こちらも再度姿を消す。


(勝負してやろうじゃねぇか。どっちがより姑息こそくで、どっちがより狡猾かをなぁ)


──擬態。


 透明になったオレはさらに床に擬態する。


(さぁて……あの一つだけの出口さえ押さえれば、広範囲スキルをぶち込んでオレの勝ちなわけだが……)


 静かな探り合いを続ける中、オレはほんのすこしずつ床から【毒液】を染み出させ続ける。

 スキルで石床になっているオレにスリップダメージは入らないが、盗賊の方はそうはいかないはずだ。

 さらに。


 チャプッ……。


 毒をきらってか、足の動く音が部屋に響いた。


(やはり入り口は押さえられてるか……)


 相手の姿が見えないから【鑑定】も使えない。

 状態異常スキルが効かなかった場合は、こちらの居場所がバレる可能性がある。

 最悪、ステータス差で押し切れるだろうが、あの大司教みたいなイカれたステータスをされてると万が一もありうる。


 ふむ……。


──精霊召喚。


(ラムウ、お前さっき電気信号で人のいる場所わかるって言ってたよな? 今、敵がどこにいるかわかるか?)

(無論)


 ラムウがそう答えると「ぐぎゃっ!」という声とともに突如雷に打たれた人影が現れた。


「ラムウ! よくやった!」


 オレはそう言うとありったけのスキルを発動する。


──高速飛行、邪眼、魅了、洗脳、起動予測、石肌、剛力、ぶん殴り!


 盗賊ギルド長は手に持った先端に石の付いた縄──スリングを超スピードで振り回し、一瞬でラムウを消し去る。

 そして振り向くと【邪眼】の光線をかわし、両手に持った札で【魅了】と【洗脳】を払いける。


「くっ……! でも、これでどうだあああ!」


 凄まじい勢いで繰り出されたオレの石のパンチは、敵の動きを予測して完璧に顔面を捉えた。


 ドウっ!


 壁に叩きつけられる盗賊ギルド長。


「はぁ……はぁ……ッ!」


 床にのびてピクピクと震えているギルド長。

 しかしこの姿もオレを油断させるためのブラフの可能性があるから、迂闊うかつには近づかない。


──鑑定。


 名前未登録

 人間

 盗賊ギルド長

 レベル 44

 体力 74

 魔力 8

 スキル 危機管理

 職業スキル 罪人支配


 ステータスは思ったほど高くはない。

 人の姿に化けた魔物というわけでもない。

 なのにあれだけ苦戦させられたのは、やはり経験とアイテムの使い方の差か。


 ステータスやスキル以外にも色々大事な要素があるんだな。

 敵ながら学ばせてもらったよ。


──吸収。


 名前もない盗賊ギルド長のスキル【危機管理】を奪う。


「──ッ!? お前──オレのスキルを奪ったな──!?」

「ああ、奪わせてもらった。お前のスキルは今後オレが活用させてもらう。そしてお前は今夜、ここで死ぬ。その前になんでオレをさらったのか、なんで魔界に売ったのか、なんでオレの両親を襲ったのか、し~~~っかり答えてもらうけどなぁ」


 その言葉を聞き終わる前に盗賊ギルド長は隠し持っていたナイフで自分の喉を掻っ切った。


「え!? えぇぇ!? ダメだよダメダメ! オレに秘密を話してからでないと死んじゃダメだって!」


 しかしオレの訴えも虚しく、ギルド長の体力は一瞬で0になってしまう。


「あぁ……嘘だろ……ここからが本番なのに……」


 そこでふと、モモを眷属化させた時のことを思い出す。


 そうだ、今からでも【吸血】して眷属にすれば間に合うかも……。


 と思った瞬間。


 ボゥッ!


 と激しい音を立てて盗賊ギルド長の体が燃えだした。


「アチッ! アチチッ!」


 思わずけ反ると、部屋の壁が次々爆発を始める。


「あぁぁ~、もうメチャクチャだよ! ……そうだ!」


──危機管理。


 今奪ったばかりのスキルを発動させてみる。


「お、なんか無事に脱出できる道筋が見える」


 その道筋に従い、炎と爆破を避けながらオレは地上に戻ることが出来た。


「ふぅ~~~……!」


 胸をなでおろしながら表に出たオレは、これからどうするか考えを巡らせる。


 思ったよりも時間がかかってしまった。

 もうすぐ夜も明ける。

 冒険者ギルド長の家を知ってはいるが、はたして今から向かって夜のうちに無事に終えられるかどうか……。


 その瞬間とき、先程発動した【危機管理】スキルの残り香のようなものが不穏な雰囲気を察知した。


──起動予測!


 とっさに繰り出したスキルで、背後からの「なにか」の攻撃を紙一重でかわす。


 ズサッ!


 大ぶりの剣が石と化しているはずの地面を軽々と切り裂く。


「おっかしーなー。完全に不意をついたと思ったんだが」


 そこに居たのは冒険者ギルド長、ゾゲッタ。


「これはこれは……。わざわざ向かう手間が省けたぜ」


 オレはそう言うとパキリと指を鳴らした。

次話【復讐の記録5:冒険者ギルド長ゾゲッタ】

9月16日(明日)18:30頃更新予定


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