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人としての心

 王都。

 3日ぶりだというのに随分久しぶりに帰ってきたような気がする。

 帰還したオレたちはリサ、セレアナと別れ、冒険者ギルドへと真っ直ぐ向う。


 豪華ではないが頑丈そうな造り。まるで質実剛健を実践してるかのような冒険者ギルドの門をくぐると、オレ達を担当する受付嬢ミアの顔がパァと輝いた。


「無事だったんですね! おかえりなさい! 心配してましたよ! あぁ、モモさんも一緒に! リサさん、セレアナさんは大丈夫なんですか!?」


 一気に質問をまくしたてるミアを苦労してなだめると、オレは成果を報告する。

 もちろんゴブリンの王国があったことやヒナギク、ダイアたちのことなんかは伏せて。

 ミアは爛々と目を輝かせてオレの話を聞きながら、受け取った袋いっぱいのゴブリンの耳を数えている。


「こんなに短い時間でこれだけの成果を上げるとはやはりフィードさん達はただものではないですね! さすが聖女様をようするパーティーです!」


(しかしまた随分コロコロと表情が変わる子だ。見てて飽きないな)


 オレはミアを見て微笑む。

 するとなぜかルゥが体をくっつけてきて、さらになぜかモモに足を踏まれた。


 イタタタ……。

 えっ、なんなんだこいつら……。

 オレがなにかしたか?


「ではクエストの報酬を持ってきますので、少しお待ち下さい! あっ、ギルド長にはお会いになられますか?」


 ミアの言葉に「いや、今日はいいよ」と返しておく。

 そいつは今夜オレが殺す予定だから。

 いま会って殺気を悟られたくない。


「わかりましたー、では少々お待ち下さ~い!」


 そう言ってカウンターの奥に引っ込んでいくミア。

 そして彼女と入れ替わるように、奥へと続く廊下から魔術師ジュニオールが出てきた。


「ひぃ──っ!」


 オレの顔を見ると怯えきった様子で顔を背けると、さっさとギルドの外に早足で出ていってしまった。


(この後は無人島で自殺するだけだな、ジュニオール)


 オレが昨日の深夜にジュニオールへかけた【洗脳】。

 その効果がちゃんと発動するなら、ジュニオールはこのまま人目につかないように無人島に行って自ら命を絶つはずだ。

 そこで、ふとジュニオールに雷の下級精霊を監視に付けていたことを思い出した。


(ワムウ。意識だけの疎通とかできるか?)

(ハッ。召喚主様の並外れた魔力を使わせていただければ)

(そうか、じゃあ話せ。今のジュニオールの報告の際になにか問題はなかったか?)

(特に問題はなかったようですが、魔術師が自分の口で話してる事に疑問を持たれてましたな)


 ああ、そうか。

 ジュニオールっていつも自分では喋らずに召喚精霊に話をさせてたから不審がられたのか。


(魔術師は「魔力を使い切ってしまったので」と説明し、ギルド長もそれ以上は追求しなかったようです)

(そうか、わかった。じゃあもう下級精霊は監視から外していいぞ。これ以上はリソースの無駄だ)

(はい)


 ラムウの意識が消えると同時に、ミアがトレーを持って戻ってきた。


「では、ゴブリン20体分の討伐報酬です。1体につき銅貨50枚のお約束でしたので、銀貨10枚になります。お受け取り下さい」


 おお、ゴブリンもまとめて倒したら結構なお金になるな。

 これからはお金に困ったらゴブリンを倒して……。

 っていやいや、奴らはオレの王国の国民になるかもしれない連中だから気軽に討伐するわけにもいかないな。

 仮にも一晩宴会したり、親を泊めてもらったりしたわけだし。


「それと、こちらはモモさんの報酬になります」

「はい! ミアさん、ありがとう!」

「やはりモモさんにガイドお願いして正解でした。今後もちょくちょくお願いしてもいいですか?」

「はい、もちろん! あ、でも私フィードちゃん達のことが気になるから、しばらくはちょっと色々と手伝ってあげようと思ってるんだ」

「そうなんですか、モモさんに手伝ってもらえるなら私としても心強いです」


 オレたちは報酬を受け取ると、一番気になっていることをミアに質問する。


「それで、ルゥはこの後どうなるんだ? もうすぐに教会に行ったりするのか? それによってオレ達が今後どうするかも変わってくるんだが」

「え、と……それなんですけど……。実はまだ具体的なスケジュールなんかは決まってないんです。あの、まさかこんなに早く戻ってくるとは思ってなかったので……」


 申し訳無さそうに人差し指をツンツンしながら上目遣いで弁明するミア。


 あ、そうか。

 オレがミアのスキル【事前準備】を奪っちゃった影響もあるのかも。

 これは一刻も早く鑑定士スキル【付与】を覚えてミアにスキルを返してあげなきゃだな。


「いや、ミアが謝る必要はないよ。オレ達もルゥと一緒に過ごせる時間が伸びて嬉しい」


 そう言って隣でにっこりと微笑むルゥを見る。

 反対側にいるモモがなんか体をぶつけてきてるけどなんなんだろう?

 モモも嬉しさを体で表現してるのかな?


「じゃあオレたちは宿に戻るよ。明日また顔を出す」

「はい、お待ちしてます! 聖女様の方も急いで確認しておきますね!」

「いや、ゆっくりでいいよ。あ、そうだ」


 今日の夜に冒険者ギルト長を殺す予定だから、もしの万が一なんだけど、なにかも間違いでミアに危険が及んでもイヤなので一応護衛を付けておこう。


(シヴァ)

(──はい)

(もしあの子に何かあったら守ってやってくれ)

(かしこまりました、マスター)


 次の瞬間、一欠片の雪の結晶がミアの背中の中に入っていった。


「──ヒャンっ!」


 ミアが冷たさにビクッとして不思議そうに周りを見回している。


 頼んだぞ、シヴァ。

 オレも無事にミアにスキルを返したいからな。


 その後、実家に帰るモモと別れて宿屋に戻ると、包いっぱいの焼き鳥を頬張るセレアナと三節棍の手入れをしているリサの姿があった。


「あれ、ヒナギクは?」

「まだ戻ってきてないわよ」

「どっかで道草でも食っへんひゃないの」

「そうか。あとセレアナは口にものを入れたまま喋るな」


 風と同化できる機動力の高いヒナギクがそんなに時間かかるかな?

 ちょっと眷属同士の思念通話でもしてみるか。


(ヒナギク? 無事かヒナギク?)


 問いかけるも返答がない。


 おかしい。

 念のため護衛にシルフもつけてたし、後れを取ることはないだろうと思っていたが。

 もしかしてなにかあったか?

 シルフを再召喚して確認してみよう。


──精霊召喚。


 …………。

 手応えがない。

 失敗した?

 いや。

 まさか。


 存在を消された?


 白銀騎士の勇者ラベル。

 前に会った時は、そのステータスの低さから彼をあなどってしまっていたかもしれん。

 気になる点があるとすれば奴のスキル【因果剣】。

 あの時はバタバタしてて気にしてなかったけど、いうても勇者だし王国三騎士の一人だならな。

 黒騎士のスキル【洗脳】もヤバすぎたし。

 ちょっと調べてみるか。


 オレはスキル【博識】を発動して【因果剣】について調べる。


 なになに……?


 すべての因果を断ち切り、無の状態へと戻す剣技。

 状態異常のステータスだけではなく、血縁、身分、種族、人種、性別、すべての因果から切り離すことができる。


 んん……?

 これ、ヤバくない……?

 洗脳も眷属化も全部なかったことにされちゃってる可能性がある、ってコト……?


 そして、ふと気づく。


 もしかして、ヒナギクが性別不明っぽかったのも、異様にラベルだけに執着してて他のことに興味なさそうだったのも、全てこの【因果剣】のせいなのでは?


 そう考えると諸々すっきりする部分がある。

 あんまり自我がなさそうなところとか。

 自分の命を粗末に扱ってそうなところとか。


 許せねぇなぁ……。


 言えた義理じゃないことはわかってる。

 オレだってヒナギクを洗脳してアンデッドにした。

 でもそれは成り行きで、だ。

 別にしたくてしたわけじゃない。


 でも、あのラベルとかいう勇者のクソ野郎はヒナギクを全てから切り離して自分の都合のいい道具にしてるってことなんじゃないか?

 そうだとしたら。


 ムカつく。


 自分がこんな感情を抱いてることに自分でも驚きが隠せない。

 今まで自分の復讐のためだけに行動していたつもりだった。

 それがまさかたった三日間一緒に行動しただけの他人に、いつの間にかこれほどまでに思い入れていたとは。


 オレは魔界で実質的に一度死んでからというもの、ずっとぶっ壊れてしまってるんだと思っていた。

 けどなんだ、まだ残ってるじゃないか。

 人としての心が。


 今夜殺す予定だった2人。

 冒険者ギルド長ゾゲッタ、名も知らぬ盗賊ギルド長。

 そこにもう1人追加だ。


 白銀騎士の勇者ラベル。

 お前は今夜、オレが殺す。

次話【ヒナギク救出】

9月14日(明日)18:30頃更新予定


もし少しでも「ヒナギク生きてて~!」「受付嬢のミアちゃんに危険が及びませんように……」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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