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実家への帰省

 オレたちは狼に乗って王都とは別の方向へと向かっていた。


 目的地はオレの実家。


 なぜ突然実家に向かうことになってしまったのか。

 それは、昨日ゴブリンとのあれこれを終わらせた後にポツリと漏らしたモモの一言が発端だった。


「そういえばフィードくん──っていうかアベルくんの実家ってここから結構近いんだよね」


 この一言がきっかけとなって、なぜかみんなでオレの実家に行くことになってしまった。


「実家ではオレはアベルだからな、アベル呼びで頼むぞ」

「わかった。でもフィードのご両親ってどんな人なの? 会うのが楽しみね」

「だからアベル、な。両親までゴタゴタに巻き込みたくないんだから頼むよ」

「はいはい、わかったわよフィード」

「だからさぁ……!」


 からかってくるリサに徒労感と一抹の不安の不安を覚える。


「でも昨日は大変でしたね。なんてったってフィードさん、ゴブリンの王様にさせられそうでしたから」

「そうだな、でもとりあえず王になるのは保留してもらえてよかったよ」

「復讐が全部終わったら王様になるんですか?」

「そうだな……それは終わってみないとわからないかな」


 そう。オレにはまだ先のとこなんて想像つかない。

 まずは目の前の『オレが売られた理由』を知ること。それだけだ。


 そんなこと考えてるとルゥが続ける。


「それまでに別の王様候補でも見つかってればいいんですけどね」

「だな、でも悪いことばかりじゃない。この先、王国と対決することになったら力を貸してもらえるらしいし」

「人手が増えるのは助かりますね」

「ああ、それに。人手といえばこいつらもいるしな」


 そう言ってオレは乗っているダイアの背中を撫でる。


「ハッ! 今後とも我が一族、主様あるじさまのために尽くさせていただきます!」

「うん、頼りにしてるぞ。ダイア、みんな」

「ありがたきお言葉!」

「っていうか……」


 オレは頭を振って並走してる狼たちを見る。


「もしかしてお前たち──数増えた?」

「ハッ! 入り口で待機してたセレアナ殿が、通りかかった狼集団を屈服させ支配下に置いたとのこと!」

「お、おう……そんなことしてたのかあいつ……」


 固まって走る狼たちの上で大の字になって眠ってるセレアナ。


 なんかあいつの山賊っぷりどんどん板についてきてないか……?


「でもお姫様と離れ離れになって残念そうじゃない、フィード?」


 リサが冷ややかな目つきで話しかけてくる。


「は? 別に全然残念じゃないし。結婚はなんとかして取り下げてもらうつもりだし」

「ほんとぉ? あんなに鼻の下伸ばしてたのにぃ?」

「は? 鼻の下とか全然伸びてないし。むしろ縮んでたし」


 ゴブリンの姫グローバにはゴブリンの本拠地に帰ってもらった。

 グローバはオレたちについていくって言い張ってたけど、さすがにゴブリンの姿じゃ街には入れない。

 ってことで王様からの説得もあり、みんなが宴会をしてる間に説得してどうにか渋々納得してもらうことができた。


 でも、正直オレはグローバと離れられてホッとしてるんだよね。

 あれだけ品のある女性に情熱的に押され続けたら、絶対オレはどこかで押し切られちゃう。間違いなく。

 それにリサ達とこうやって軽口を叩き合いながら行う旅は正直楽しい。


「フィードくん、そろそろ着くよ!」


 モモの声にオレは現実に引き戻された。

 久しぶりのオレの実家。

 何も変わりなければいいけど。


 と思ったのもつかの間、行く手に黒い煙が上がっているの目に入ってきた。


「あれは……!?」

「わかりませぬ! ただ、火の匂い。それと何人かの人間と金属の匂いがします」


 緊迫した様子でダイアが告げる。


 まさか─父さんと母さんの身になにかあったのか!?


「すまん! 先に行く!」


 スキル【高速飛行】で宙に浮くと、木々の中を猛スピードでくぐり抜けていく。

 木の枝が体にぶつかり、皮膚が切れ、血が散る。

 

 急げ、急げ、一刻も早く!


 そしてようやく見慣れた景色が目に入ってきた。


 が、


 オレの目に映ったのは、

 飛び散る火の粉、

 燃え広がる炎。


 悪い予感が的中してしまった。


 オレの育った実家は、

 ゴウゴウとたける炎に包まれていた。


「そん……な。かあさん……? 父さん……!?」


 え、なんだ、こういう時に使えるスキルは。


 植物知識、透明、剛力、怪力、偏食、石肌、咆哮、潜水、火炎、

 毒液、軌道予測、石化、魅了、毒触手、美声、発熱、狡猾、死の予告、

 吸血、変身、邪悪、死の悲鳴、斧旋風、擬態、邪眼、腐食、不眠、

 暗殺、投触手、高速飛行、博識、罵倒、洗脳、ぶん殴り、事前準備……。


 だめだだめだだめだだめだ、なんもないなんもない、火事を鎮火できるスキル。

 ああ……嘘だろ、そんな……。

 スキルだけたくさん持ってても役に立たないじゃないか。

 オレは、オレは──。


 炎を前にオレは頭が真っ白になり地面に膝をついてしまう。


「フィード! なにやってんの!」


 後から追いついてきたリサがオレにげきを飛ばす。


「フィードくん!? 私、反対側見てくるね!」


 モモが走り出す。


「フィードさん、怪我を治します!」


 ルゥが駆け寄ってくる。


「火と【同化】して火事を消すっス!」


 そう言うとヒナギクの体は炎と溶け合った。


「あんたたちぃ! 建物の周りを囲んで砂かけなさぁい!」


 セレアナが狼たちに指示を出す。


 オレがほうけてるてる間にも、みんなが自分のやるべきことを考えて動けてる。

 なのに……。

 なのに、オレは──。


 その時、視界の端を人影がよぎった。


「ダイア!」


 オレの声と同時にダイアが人影に飛びかかり、人影を取り押さえる。


「わわっ! 放せば~か、ば~か!」


 ん、この喋り方……?


 その時、ダイアに飛びかかろうとするもう1つの人影が目に入った。


──石肌&高速飛行!


 ガキィーン!


 放たれた剣撃を、交差したオレの石の腕が受け止める。


「キヒヒヒ! 大人しく殺されてればいいものを!」


 この話し方は──。

 間違いない。

 オレは二本の刀を受けた腕を上に押し上げる。

 そしてオレは声の主をしかと睨みつけた。


 そいつは、オレの元パーティーメンバー。

 歪んだ刀フリークの偏執狂侍。

 ミフネだった。

次話【復讐の記録2:侍ミフネ】

8月21日(明日)18:30に更新予定。


『30日後にマモノに食べられるオレ(略』は毎日更新中!

もし少しでも「味方みんな機敏に動いて有能じゃん!」「追放メンバーのミフネきたー」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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