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ゴブリンの王

 ゴブリンの群れの中に飛び込んだオレたちは血で血を洗う死闘を繰り広げ……ることにはならず、一方的かつ圧倒的にゴブリン達を制圧していった。


 それもそのはず。寿命の短いゴブリンがそんな劇的にレベルを上げることなんて出来るわけがなく、オレたちとのレベル差はもう悲しいくらいに開きまくってしまっていた。


「グギャ、グッギャギャ(私はゴブリン族随一の格闘家! ぜひお手合わせお願いした)……ブフッ!」


 口上すら言い終わらないうちにスキルすら使ってないモモに吹き飛ばされる随一の格闘家ゴブリンくん。


「あ、ごめ~ん! なんか言ってたの気が付かなかったぁ!」


 遠くから弓矢で狙ってくるゴブリンは、空気と同化したヒナギクが背後から首を掻っ切って回ってる。


「いやぁ~、やっぱこういうノーリスクで不意打ち出来る仕事は最高っスね。『生きてる』って感じがするっスよ~」


 リサは広い場所に出た開放感からか張り切って滑空攻撃しまくってて、地面もゴブリンたちも可哀想なくらいボコボコになってる。


「ギャギャギャー!(うおおおおい! あの降ってくる女ヤバいぞ! 逃げろ逃げろ!)」


 そして逃げ惑うゴブリンたちは、ゴブリンの本能がそうさせるのか、なぜか執拗にルゥを追い回してる。


「わぁぁぁ~、こっちこないでくださぁ~い!」

「グッギャギャ-!(なんかよくわからんけどあの人間のメスいい感じだからドサクサで凌辱しようぜ!)」


 ドンガラガッシャーン!


 そのルゥを追うゴブリンの群れが、ダイアのスキル【疾風雷神】によって一瞬で消し炭と化す。


「ルゥ殿にちょっかいだそうとは1000年早いですぞ。せめて我が主くらいの器量は持ってほしいものですなぁ!」

「ちょ、ちょっと! ダイアさん何言ってるんですか!」

「ははは、失敬失敬」


 なんか楽しそうにルゥとダイアでイチャついてるし。

 まぁオレはオレで試してみたかったことをいくつか試してみるかな。


 どうにか嵐のような攻撃をくぐり抜けてオレのもとにたどり着いたゴブリンが短刀を振りかぶる。


──石肌。


 カキーン!


 乾いた音が響き、オレに突き立てたはずのゴブリンのナイフが石の肌に弾き返される。


──発熱。


 オレはそのままゴブリンを抱きしめると、青銅人間タロスから奪ったスキル【発熱】を発動させた。


「ギュア! ギュャアアア!」


 一瞬で高温へと達したオレの石の肌に抱きしめられたゴブリンは一瞬で絶命してしまう。


 うん、この石肌×発熱は強いな。

 じゃあ次はこれを試してみるか。


──剛力×投触手×軌道予測。


 目立ちにくい塹壕みたいなとこの中でコソコソと呪文の準備をしてるゴブリンシャーマンの軍団。

 そこを目掛けて「すんごい力」で「ローパーの触手」を「正確無比」に投げつける。


 ドッッゴォーーーーン!


 凄まじい轟音が鳴り響くと、塹壕はズズゥーン……という音を立て土埃の中に崩れ落ちていった。


 うわぁ、なんというかもうこれは「兵器」のレベルだなぁ。

 よ~し、じゃあ次は……っと。


「お前、ここノ、ボス、だロ」


 オレの前に図体の大きなゴブリンが立ちふさがった。


 なんか見たことあるな、この感じ。

 あっ、そうだ。


「お前、もしかしてホブゴブリンか?」

「そうダ。よくわかっタな」

「前に殺したことあるからよく覚えてるよ」

「殺しタ?」

「スキルも奪ったよ。【邪悪】。お前も持ってるんだろ? どっちの邪悪が強いか勝負しようぜ」

「いいだロう。人間、後悔すルなよ」


──邪悪。


「グギャギャアッ!」


 邪悪:その場において最も残忍で残虐な効率のよい発想が思い浮かび、それを躊躇することなく実行することが出来るようになる。


 ……よし、決めた。


 オレが心に思い描いたホブゴブリンを始末するための残虐で慈悲のカケラもない方法を実行に移そうと瞬間。

 ホブゴブリンはガタガタと震えだすと、小便を漏らしながら土下座して頭を何度も地面に打ち付けはじめた。


「許しテ下さイ……。同じスキル使ってミてわかっタ。魔力の桁が違イすぎル。100回戦っテも勝てなイ……」


 あら。

 スキル【邪悪】って自分が生き残るためには、自身に対しても残忍で現実的な対処を取ることが出来るってことね。

 ふぅん、意外と追い詰められた時なんかに役に立つのかもしれないな、このスキル。


「お前より強いゴブリンはここにいるのか?」

「いや、いなイ。てっきりオレが姫と結婚すルもんだと思ってタ」

「そうか」


 オレは崖の上に立つゴブリン王に向かって叫ぶ。


「お前らの中で一番強いらしいホブゴブリンはオレが倒したぞ! どうだ!? これでもまだ続けるか!?」

「グガ……」


 一言唸ると、王はゆっくりとドクロの杖をこちらに向けた。


 むっ、まだ奥の手がある感じか?

 それとも「ワシを倒して娘を奪い取れ」的な?


 そんなことを考えながら注視していると、王はもう片方の手でゆっくりと白旗を上げた。


 って思わせぶりな態度しといて結局降参するんかーい!


「ガ……降参じゃ。グローバはお前のものじゃよ」


 う~ん、戦いが終わったのはいいけどオレは結婚なんてする気ないんだけどなぁ。

 とりあえず王と話をして、そこらへんの後始末もつけなきゃだな。


 オレは崖の上にいる王のもとに行くためにワイバーンに変身すると背中に仲間たちを乗せて飛びあがった。


「ギャギャギャー! ギャギャギャー!」


 生き残ったゴブリンたちが興奮して叫んでいる。


「みな、フィード様のお姿をたたええているようです」


 ゴブリンの姫グローバがその言葉を通訳してくれる。


 なるほど、ゴブリンはこういうわかりやすい姿のほうが強さが伝わりやすいってことかな?

 今後、魔物との面倒そうな戦いに巻き込まれた時には、さっさと変身して威嚇するのもありだな。


 そんなことを考えながら、オレたちは王の前に降り立った。


「まずはゴブリンの王に挨拶を。私は冒険者のフィード・オファリングと申します。それから仲間のリサ、ルゥ。そして我が眷属のモモ、ヒナギク。それに配下のダイアです」


 変身を解いたオレは、片膝を地面についてそう挨拶をする。


 異種族とはいえ仮にも相手は王。

 礼儀は大切だよな。

 さてと、ここから結婚を断る話をしないと。


「実は王にお話が……」

「うむ、よく来た。人族の勇者フィードよ」


 あら、話を遮られちゃった。

 まぁ、たしかに話を切り出すのが早すぎたよな。

 向こうの挨拶が終わってから結婚は断ろう。

 っていうかオレ「勇者」とか言われちゃってるし。

 お世辞にしてもなんか照れるな。


「そしてよくぞ我らが精鋭を打ち破り、我が娘グローバの婿の座を勝ち取った。よって私はこの人族の勇者フィード・オファリングを我らが王としてここに認める!」


 はい?


「ギャギャギャギャギャギャギャー!」


 ゴブリンたちの大歓声が大洞穴だいどうけつに響き渡る。

 横を見るとグローバがニコニコ顔でオレの腕に抱きついてる。


「新しい王の誕生じゃ! 王の名はフィード・オファリング!」

「グギャッ……フィード・オファリング! フィード・オファリング!」


 ゴブリンたちに延々連呼されるオレの名前。


 あの…………なんかオレ、ゴブリンの王になっちゃったんですけど……?



次話【タイトル未定】

間に合えば8月20日(明日)18:30頃更新予定


『オレ食べ』(タイトル変えました)は毎日更新中!

もし少しでも「王就任おめ!」「主人公パーティー強すぎ!」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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