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騎乗狼ダイア

「お待ち下さい、我があるじ


 ずらりと並んだ狼たちの先頭に立つダイアウルフがそう言った。


 ……はい? 我が主とは?


 ダイアウルフは尻尾をふりふり、ベロをハッハッと出しながら続ける。


「あなた様は吸血鬼でいらしたのですね! その絶大なお力、おみそれいたしました!」

「え、いや別に吸血鬼ではないんだけど」

「なんと! 吸血鬼ではないのに眷属化スキルをお使いになれると!?」

「え、うん。まぁ一応そうだけど」

「さすがは我が主です! そのような偉大な方と出会えたとはまさに幸福のいたり!!」

「えっと、その『我が主』ってなんなのかな?」


 ダイアウルフは尻尾をさらに激しく振ると、特に聞いたわけでもない自分語りを始めた。


「ハッ! 実は私、昨日まではただの狼だったのです! それが昨日たまたま強大な魔力を感じさせる馬車を見かけまして! その魔力が媒介となって私はダイアウルフへと進化することが出来たのです!」


 昨日……馬車……。

 うん、心当たりがありまくるぞ。


「そして今確信いたしました! あの魔力はあなたのものだったのですね、我が主よ!」

「え~っと……だから主と?」

「はい!」


 そう端的に言い切ると目を爛々と輝かせてこちらを見つめている。


 あぁ……これはあれだ。

 昔飼ってた犬が「今から散歩ですよね!?」みたいな時に見せてたのと同じ顔だ。


「えっと、一応確認しておきたいんだけど、その馬車に乗ってたのは多分オレで間違いない」

「やはり主でしたか!」

「で、それを見かけたお前が何らかの影響を受けてダイアウルフに進化したのかもしれない」

「その通りです!」

「うん、でもなんでそれが急に『我が主』になるの?」

「主だからです!」


 ちょっと待って、頭痛い。

 犬種ってこういうとこあるよな。

 理屈を数段階飛び越えてくるみたいなとこ。

 そもそも急に「我が主」とか言われてもどうすりゃいいんだよ。

 オレは残りの人生でオレをハメた奴に復讐したいだけなのに、こんないっぱいの狼の群れ世話しきれないよ。


「ちょっといいかしら?」


 頭を抱えるオレを見かねたリサが声をかけてくる。


「狼ってたまに外的魔力を要因として種別が進化することがあるのよね。ただ、その因子を持ってる狼はごく少数しかいなくて、さらにその個体が刺激を受けるほどの強力な魔力の持ち主に出会うこと自体が極めて天文学的な確率だとか」


 へ~、このダイアウルフがその進化因子を持った特別な個体ってことか。


「私も聞いたことあります! もしその進化した狼がいたとしたら、それは進化の媒体を果たした魔力の持ち主の一生の友となるだろうって」


 え、ルゥそれほんと?

 一生の友なの? このダイアウルフ。


 相変わらず尻尾を振りまくってハッハッ言ってるダイアウルフを見る。


「えっと、もしかしてオレたちに着いてきたかったりする?」

「はいっ!」

「着いてきても全員分の餌とか世話できないよ?」

「自分たちでなんとかします!」

「オレたちクエスト終わったら王都に戻るんだけど」

「ここで待機してます!」


 えぇ~……。

 このクエストに出発するまでは女4人のこじんまりしたパーティーだったのに。

 それが今では女6人と狼いっぱいのお祭り騒ぎみたいなパーティーになりかけちゃってるよ……。

 というかもはやパーティーというよりも集落?


「どうしてもついてくる感じ?」

「はい!」

「ついてくるなって言っても?」

「ついていきます!」


 はぁ……。

 復讐だけ考えてたオレの人生。

 こんなにいっぱいの狼の責任なんて負えないんだけど。


「フィードぉ、もう何でもいいから狼ちゃん仲間にしてさっさと行きましょうよぉ」

「そうっスね。ここでグダグダ考えてるのわりと時間の無駄っス」


 セレアナとヒナギクの2人が現実的な提案をする。

 たしかにその通りだ。

 オレがここでグチグチ考えててもなんのらちもあかない。


「わかった。お前たちがついてくることを許可しよう」

「おお! さすが我が主! 懸命に努めさせていただきます!」


 狼たちが喜びの遠吠えを上げる。


「ダイアウルフは名前とかあるのか?」

「いえ!」

「ならオレが名付けてもいいか?」

「よろしいのですか!? 光栄の極みです!」


 バシンバシンと音がするほど尻尾を振って地面に打ち付けてるダイアウルフ。


「じゃあ、ダイアウルフだから『ダイア』でもいいかな?」


 その瞬間、狼たちは眩い光に包また。


「え、なに!?」


 光が収まると、ダイアウルフよりふた回りほど大きくなった狼が目の前に現れた。


 ダイア

 魔狼ワーグ

 疾風騎乗狼

 レベル 21

 体力 368

 魔力 96

 スキル【疾風迅雷】

 職業特性:縮地


 え、ちょっと待って。

 今【鑑定眼】で見てみたけど気になる点多すぎる。

 まず、ステータスが全部さっき見た時の3倍くらいになってる。

 それと種族が変わってるのも気になるんだけど、職業「疾風騎乗狼」ってなんなの。

 あとスキルと職業特性も気になりすぎる。


「我が主! 名付けをしていただいたことによって我ら一族、みな進化することが出来ました!」


 たしかに他の狼たちも、みんなダイアウルフに進化してる。

 あれ、でも進化因子ってレアだったんじゃ……。


「私のスキル効果【配下統一】によって私の因子が一族にも分け与えられたこと、そして主様の魔力があまりにも強大だったこと。この2つの要因が重なり、一族がみな進化できたことを感謝申し上げます!」


 えぇ……なんかとんでもないことになってない?

 だってこのたくさんいるダイアウルフ、みんな【配下統率】のスキル持ってるんだよ?

 もしこいつらがこの先、また別の狼たちを率いてきたら。


 うん、ねずみ算式に進化した狼が増えていくよね。

 狼なのにねずみ算……。


「主! 私の背にお乗りください! 走りたくてウズウズしてきますぞ!」


 疾風騎乗狼。

 非常に気になる職業名につられて、ヒョイとダイアの背中に飛び乗ってみる。


 あれ、なんかめちゃめちゃ座りやすい。

 骨格が平らで、またいでてお尻が痛いなんてことがない。

 さらに首の横とお腹の脇にちょうどあぶみ手綱たずなのようになっている太く絡まった毛があり、姿勢がめちゃくちゃ安定する。


 これが疾風騎乗狼。

 さすが疾風騎乗狼だよ。

 思わず声に出して言いたくなる職業名、疾風騎乗狼。


「いきますぞ!」


 ダイアがそう告げるやいなや、その場に土埃のみを残すと一瞬にしてオレたちは元の場所から離れた位置までかっ飛んでいた。


 その様子はまさに疾風。


「ダイア! すごいなお前は!」


 吹き付けてくる風圧に負けないように大声でダイアに伝える。


「お褒めいただき恐悦至極きょうえつしごく!」

「ところでどこに向かうのかわかってるのか!?」

「ハッ! 主様を背中に乗せていると、不思議と向かうべき場所が頭に浮かんでくるのです!」


 え~、なにそれすごい。

 さすがは疾風騎乗狼。


 後ろを振り向くと他の仲間たちもダイアウルフに乗ってついてきてる。

 そしてオレたちは文字通りあっという間にゴブリンたちが巣食う巣穴に到着した。

次話【ゴブリンの巣穴】

間に合えば8月16日(明日)18:30頃更新予定


『30日後にマモノに食べられるオレ(略』は毎日更新中!

もし少しでも「ダイアちゃんかわよ!」「一気に大所帯になってて草」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると作者がめちゃくちゃ喜びます。

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