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 うちの元ゴーゴンの職業適正を調べたら聖女でした。


 いやいや、元魔物が聖女って。

 そんなことありえる?


「あの、聖女って……他にいる聖女見習いとは違うんですか?」


 そう、かつてオレが所属してたパーティーにも《聖女見習い》を自称してる回復師の女がいた。


「《回復師》の中で素養の高い方が《聖女》に進化出来る可能性があると言われているんです。だからそう名乗られてるだけかと」


 実直そうな受付嬢が端的にわかりやすく答えてくれる。


「では《聖女見習い》と《聖女》は別物?」

「はい、全くの別物です。そもそも《聖女見習い》から《聖女》になったという例は今までに存在しません」


 えっ、そうなんだ。

 オレずっと見習いがいつか聖女になるもんだと思ってたよ。


「じゃあなんで《見習い》みたいなものが存在するんですか?」

「それは……あの、ここだけの話にしてもらってもいいですか?」

「え? ええ」

「《見習い》があるのは、人々が希望を失わないためなんです。もう長年《聖女》様は誕生してませんでしたから……」

「あ、なるほど」


 つまり元パーティーにいた回復師ソラノは聖女でもなんでもなかったってことか。

 あいつ散々「自分は聖女見習いだ」っつって威張りまくってたよな~。

 今思い出しても腹が立ってきた。


「では、聖女様。今から教会へ……」

「あ、すみません、その前に」


 そわそわしてる受付嬢に声をかける。

 この足元がおぼついてない様子だと、もしこっちが多少怪しい反応をしても見逃すだろう。


「こいつも判定してもらっていいですか、あとオレも」


 そう言ってセレアナとオレを指す。

 もしオレの仮定が正しければセレアナも職を得られるはずだ。

 そして、オレも。


「え、ええ。構いませんよ。どうぞ、こちらへ」


 セレアナが水見の桶の前に立つ。


「さぁ、このセレアナ・グラデンにふさわしいマーベラスな職を指し示しなさい! シンガー!? きっとシンガーかしら!?」


 なんかさっきも見たぞ、こんな宣言。

 そう思ってリサをチラリと見たら「なに?」みたいな目で見返された。

 あ、あれと被ってるっていう認識はないんだな本人的には。

 まぁリサのほうが内向的で、セレアナの方がより自惚うぬぼれれてる感じだけど。


 そんなことを考えてる間にセレアナはすいすいと水見の儀式を済ませていく。


(おっ、やっぱり魔物でも職につけそうだな)


「次が最後になります」

「いよいよねぇ~! さぁ~あ、私の高貴な職はなにかしらっ!」


 受付嬢が非常に申し訳無さそうな顔で告げる。


「……山賊、です」


 固まるセレアナ。

 吹き出すリサ。

 セレアナを心配するルゥ。

 三者三様の反応を見せる3人。


「さ……山賊……。麗しの……世界の歌姫になるはずの私が山賊……」

「ぷーくすくす! 山賊! い~じゃない! あなたにお似合いよ、セ・レ・ア・ナ!」

「だ、だ、大丈夫ですよセレアナさん! 山賊にだってなにかいい特性とかがあるかもですし!」


 受付嬢が申し訳無さそうに伝える。


「いえ、山賊は人間からの略奪と砦構築の能力、あとは十八禁の能力くらいしかないので基本的には国の監査対象に置かれます……」

「ちょっと、なによそれ! はぁ……こんなことなら適性検査なんかするんじゃなかったわぁ……」


 いや、でもまぁ魔物でも職につけることがわかっただけでも収穫だった。


「次はオレ、いいですか?」

「あ、はい。えっと……あなたはキレイなお顔されてるわりに『オレ』なんて言うんですね」

「え? ええ、ああ、はい! そう、そうなんです! 口癖で! あはは……」


 そうだった。

 オレは今【変身】のスキルで女の姿になってるんだった。

 すっかり忘れてた、気をつけなきゃだな……。


「えっと、じゃあ始めてもいいですか?」

「ええ、どうぞ」


 オレが手をかざすと水に浮いた葉っぱがスゥっと動く。


 お、やっぱりだな。

 以前調べたときとは違う結果が出てる。

 おそらくこれは外面と内面、その両方を魔力から判断してるんじゃないかな。


 だから人型になれるセレアナも、馬車で会ったアークデーモンも職を有していたのだろう。

 そしてオレも以前とは違う姿と内面になってるから、きっと《鑑定士》とは別の職業になるはずだ。


 魔力から内面を判断するんだったらルゥが聖女に選ばれるのも納得だしな。

 セレアナの山賊もなかなかハマってて笑うけど。


 さて、これで最後だ。

 オレの今度の職業はなんになるかな……っと。


「え~っと……。ええぇ~……?」


 受付嬢さんが微妙な反応を見せる。


「どうかしましたか?」

「いえ、えっと……あなたの職業は【アイドル】です」

「ん? アイドルって?」

「え~っと、シンガーとダンサーを足したような職業ですね。あとは交渉役やバッファーとしても有用……なはずです。私も初めて実際に目にした職なのですみません」


 ふむ、オレの【博識】で調べてみてもほぼ同じみたいだな。

 オレの持ってる【美声】や【狡猾】、【魅力】と組み合わせたら面白そうだ。


「な、な、なんであなたがシンガー系の職ですのぉぉぉぉおおお!」


 山賊セレアナが泣きながら抗議してくる。


「返して! 返しなさいよ私のスキ……もがっ!」


 オレは慌ててセレアナの口をふさぐ。


(お前今「スキル」って言おうとしただろ……。やめろよな、【吸収眼】のことは誰にも悟られたくないんだから)


「もがー! もがががー!」

「あはは~、じゃれ合ってるだけなのでお気になさらずに~」


 困り顔の受付嬢さんに笑顔を向ける。


「えっと、それでは聖女様を教会にご紹介しても……」


 いや、今はとっととオサラバしたほうがよさそうだな~。


「あのですね、実はオレたち今街に着いたばっかなんで今日は宿に戻ってもいいですか? また明日ここに顔出しますんで」

「そうでしたか、お疲れのところ引き止めてしまって申し訳ございません。ゆっくりお休みになってください」

「はい、それではまた」

「もがー! もががが~!」


 暴れるセレアナを引きずって《水見の間》を後にする。


 ドンッ!


 何かにぶつかった。


「あっ、すみません……」


 そう言いながら振り向くと、そこにいたのはかつてのパーティーメンバー、そしてかつてのリーダーだった男、戦士マルゴットだった。

次話【聖女マウント】

8月5日(明日)18:30頃更新予定


『30日後にマモノに食べられるオレ(略』は毎日更新中!

もし少しでも「セレアナ山賊で草」「復讐相手とのニアミスきたー!」と思った方は↓の★★★★★をスワイプorクリックしていただけると嬉しいです。

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