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檻の中の復讐者

6話7話でスカッとパート。

8話で追放シーンの回想。

9話から聖女系ヒロイン、ツンデレ系ヒロインと旅に出て、最終的にヒロイン5人くらいと一緒に行動するハーレム&大国樹立ものになります。

ネームドキャラ50人くらい、序盤シリアスで中盤以降コミカル多めです。

【↓ここから本編です↓】

 メデューサ、ミノタウロス、デュラハン、ゴルゴーン、ケルベロス。

 一介いっかいの冒険者では一生見る機会すらない伝説級の魔物たち。

 それがズラリとオレの前に雁首がんくびを揃えている。


 なぜそんな状況にって?

 ああ、それは。


 ──オレが檻に入れられて魔物たちの前に晒されてるから。


 はい、終わり。

 俺の人生確実に終わったー!

 そう確信できるほどの絶望。


 ああ、ほんとに一体なんでこんなことになっちゃったのか。

 どれだけ思い返しても意味がわからない。

 目をつぶると思い出されるのは、オレが仲間たちに【追放】されたあの日のこと。


 ◆


「お前はクビだ。今すぐこのパーティーから出ていってくれ」

「お前みたいな【魔力量】と【種族】、【アイテムの効果】くらいしかわからないへっぽこ鑑定士なんて雇ってる余裕ねーんだわ」


 信じてたパーティーメンバー達からかけられた言葉。

 オレが追放された時の言葉。


 そしてパーティーに捨てていかれた直後。

 落ち込んで道にへたり込んでいたオレは背後から何者かに襲われて──。


 ◆


 気がついたらここにいたってわけだ。


 そう、ここ。


 学校に。


 学校。

 ただし生徒は人間じゃない。

 魔物だ。

 しかも上位種の魔物ばかり。


 なぜ上位種だとわかるのかって?

 ああ、それはほんとこの状況で最悪なことにオレのスキルが【鑑定】だからなんだよね。

 だから“視え”ちゃうんだよ。

 この魔物達の【魔力量】が。

 あ、試しに今見えてる魔物の魔力量を説明しとくと、


 デーモン  3852

 サキュバス 2111

 ケルベロス 5996

 オーガ   2284

 ゴーゴン  8473


 と、オレがこれまでに見たことのないような馬鹿げた数値がズラリ。

 これがどれくらい馬鹿げてるかというと……そうだな。

 例えばオレの魔力量は。


 50。


 いや、それでも人間の中で50は、かな~り高い方なんだ。

 普通の人間なら1~2。

 駆け出し冒険者で5程度。

 熟練冒険者でも20あれば銀等級なんだよね。

 そんな二桁あれば才能があると認められる人間に対して、こいつらの魔力量は揃いも揃って四桁ばかり。

 文字通り『桁が違う』ってわけ。

 あ、ちなみにオレはパーティーを追放されたくらいの「へっぽこ鑑定士」なので、相手の魔力量と種族くらいしか鑑定できない。


「早く食っちまおうぜ!」

「なんかマズそ~。食うとこなさそ~」

「ギャハハハ! こいつ震えてんだけど!」


 魔物たちのヤジによって、オレはいつのまにか自分の体が震えていたことに気づく。


 ガラガラッ!


 メガネをかけた偉そうな魔物が教室に入ってきた。

 教室内の雰囲気が少し引き締まる。


「はいは~い、みなさん静かに。はい、みんなこれが気になるとは思いますが、静かにならないと説明しませんよ~」


 どうやらこの魔物は教師のようだ。

 オレに興味津々の魔物たちだったが、メガネ魔物の圧力に押されて次第に大人しくなっていく。


「え~、皆さんには今日からこの人間を飼ってもらいます」


 教師の言葉にざわつく生徒たち。


「はぁ~~~~?」

「飼う!? 飼うってなんだ!? 食うんじゃねぇのか!?」


 どよめきは一瞬で教室を覆い尽くす。


「はいはい、静かに! 話は最後まで聞く! はい、そしてこの人間を30日間飼った後……それから皆さんに食べてもらいます」

「なんだよ結局食うんじゃねーか!」

「早く食わせろー!」


 いや、これはオレも魔物たちの野次に同感。

 わざわざ飼ってから食べるって……なんの意味があるんだ、それ?


「先生はね、一度飼うことによって、みんなに命の大切さを知ってもらいたいんです」

「なんだそれー!」

「意っ味わかんねー!」

「人間の命に大切さなんかあるわけねーだろー!」


 命の大切さ?

 それを教えるためにわざわざ飼ってから殺す?

 なんじゃそりゃ。

 悪趣味にもほどがある。

 

 意味がわからなさすぎるうえに手持ち無沙汰だったオレは【鑑定】スキルで教師の魔物を“視て”みる。

 その結果、教師の種族が『大悪魔』であることがわかった。


 うん。

 でも、そんなことがわかったとこで別にどうにもならない。

 ほんと役立たずだわ、オレの能力。

 だからオレは捨てられたんだろうな、あいつらに。


 そんなことを考えていると、大悪魔がオレに話を振ってきた。


「はい、じゃあキミ。これから一緒に過ごすんだから自己紹介しよう! 元気にね!」


 声をかけてきた大悪魔の魔力量を“視た”オレ。

 その数値に思わず二度見する。


 え……?

 なにこれ……?


 49659、って……。


 いやいや、オレの約1000倍。

 そんな数値がこの世にあり得るのか?

 もしいるのであれば魔王とかそのクラスなんじゃないのか、こいつ?


 もはや震えを通り越して体に力が入らなくなってるのを自覚する。

 オレの心を占めてるのは、そう。


 ──絶望。


(くそ……こんな……こんな眼さえ持ってなけりゃ、下手に鑑定士なんかにならずに、こんな意味不明な誘拐もされずに済んだのに……)


 いっそのことこのまま【鑑定眼】の宿った右目をえぐり取ってしまおうかとも思ったが、その気力すらも湧いてこない。

 もう立っていることすらできない。

 膝から地面に崩れ落ちる。

 なんだ?

 なんか頬が熱い。

 あっ……。

 どうやらオレは今……。

 涙を流してるみたいだ。


「おいおい、この人間泣き出しちまったぜーーー!」

「あはは~! ウケる~! ざぁ~こ! ざこ人間!」

「塩分無駄にしてんじゃねーぞ! 不味くなるだろうが!」


 オレの涙を見て喜びはしゃぐ魔物たちを大悪魔がいさめる。


「こら! みんなが大声上げるから人間もビックリしてるじゃないですか! 弱い人間にとっては我々は怖い存在なのですよ。ちゃんと思いやりを持って飼ってあげるように。よし! それじゃあ、せっかく30日も飼うんですから、みんなで人間に名前をつけてあげましょう! なにがいいかな?」


 は? 名前?

 オレはアベルだ。

 親が付けてくれたアベルっていう立派な名前があるんだが。


「豚ー!」

「ゴミクズー!」

「ウジ虫~! ギャハハ!」


 魔物たちが涎を飛ばしながら下劣で品のない言葉を並べる。


「ん~、もっと親しみやすい名前はないんですか?」


 静まり返った教室に今にも消え入りそうな、か細い声が響いた。


「……フィード」

「ん?」

「フィード・オファリング……は、どうでしょうか……?」


 その声の主を【鑑定眼】で見てみる。

 どうやらその名前を提案をしたのはゴーゴンのようだ。


「おおっ! いいですね! フィード(餌)・オファリング(供物)! まさに30日後に食べられる彼にピッタリの名前です! 皆さん、素晴らしい名前を考えてくれたゴンゴルに拍手を!」


 パチパチパチパチ。


 教室が温かい拍手で包まれる。


「フィード! フィード!」

「フィード・オファリング!」

「よろしくね、フィード!」


 餌……? 供物……?

 ハハッ……。

 こいつら狂ってる……。

 いや、狂いたいのはこっちの方だ。

 こんな環境であと30日……?

 こりゃもうさっさと狂っちまったほうが楽じゃないか……。

 なんで今まで真面目に生きてきて、こんな目に合わなきゃいけないんだよ……。

 なんで……なんでみんなオレを裏切ったんだよ……。

 なんで。

 なんで……。

 くそぉぉぉぉぉ……! なんでぇぇぇぇぇぇぇ……!


 オレは涙を流しながら四つん這いになって拳を地面に打ち付ける。

 何度も、何度も、何度も。

 やがて手の皮膚が裂けて地面に血が飛び散った。


(う、うぅ…………っ!)


 心の底の底から訪れた真の恐怖、真の絶望。

 そんな希望の見えない真っ暗な闇に心が包まれた、その瞬間。

 オレの左目は、


 ──青い炎に包まれた。


(左目が……熱い……?)

 

 オレは左目に【吸収眼きゅうしゅうがん】が宿ったことを本能で悟る。


 吸収眼……。

 これは……スキルを吸収する力……?


 四つん這いになっていたオレは、さいわいその変化を誰にも気づかれていないようだ。

 顔を下に向けたまま、そっと魔物達を盗み見る。


 デーモン  3852【狡猾】

 サキュバス 2111【魅了】

 ケルベロス 5996【火炎】

 オーガ   2284【剛力】

 ゴーゴン  8473【石化】


 これは……!?


 さっきまでは見えてなかった、おそらくは【スキル】……であろうものが視えている。

 オレは檻の横にいる大悪魔をそっと“視”る。


 大悪魔 49659【博識】


 この表示されてるスキルを吸収出来る……ということなのだろうか?

 わからない。

 わからないが……。

 まぁ、どうせこのままじゃ死ぬことが確定してるんだ。

 試しにデーモンのスキルを吸収してみるとするか。


 左目に力を込めると、青い炎が怪しく光る。


──吸収。


 ドクン。

 全身の血管が脈打つ。

 体が……熱い……?

 なぜだかオレの体に新しいスキルが宿ったことが本能で理解わかった。

 もう一度【鑑定眼】でデーモンを“視て”みる。


 デーモン 3852


 スキルの【狡猾】が消えている。

 あ、そうか。

 オレが吸収したから消えたのか。

 よし、じゃあ次はサキュバスのスキルを【吸収】だ。


──吸収。


 ……あれ?

 さっきみたいな手応えがない。

 おかしいなと思ったオレは、サキュバスに再び【鑑定眼】を使ってみる。


 サキュバス 2111【魅了】


 やっぱり吸収出来ていない。

 吸収眼には何か縛りみたいなものがあるのだろうか。

 まぁいい、幸いあと30日は生きられるんだ。

 たっぷりと検証しよう。

 そう、たっぷりと。


 そして後悔するがいい。

 オレを30日も生かしておいたことを。

 お前らが30日後には『狩られる側』になっていることを。


 心に宿った殺意を悟られないように、オレは惨めにうずくまって涙を流す。

 今から30日間、こいつらを騙して騙して騙し続けるんだ。

 オレがこっそりとお前らのスキルを盗み続けるために。


 この時、オレはもうすでにスキル【狡猾】を発動させていた。


 【狡猾こうかつ

 効果:誰にも気づかれずにはかりごとを進めやすくなる。


 最初に奪ったがこのスキルでよかった。


 オレはニヤリと笑う、誰にも気づかれずに。


 これから一つずつ、進めていくんだ。

 このオレの復讐の物語を。

1話を最後まで読んでいただいてありがとうございます!

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