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ごはんは、おいし  作者: 淺葱 ちま
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ゆっくりした、あさ

「んぁ…さむ…え、痛い…」


 バタバタと靡いたカーテンが煩く耳を響かせている。入ってきた冷気が身体を包んだ。

 床に座った足が酷くしびれて、痛くて一気に目が覚める。

ベットに横にならず、もたれ掛かって眠っていたらしい。寝返りも打たず、昨日の着たスーツのまま身を包んだ身体が酷く痛い。

 ゆっくりと身体を起こすと、パキッと嫌な音を立てた。首も痛くて右に傾けるだけでさっきと同じ様な音を立てた。


 ゆっくりゆっくりとベットを背もたれにするように向きを変えて、足を伸ばした。ボォっとした頭で、せめてしびれが取れるように、と手で何度も脚を擦る。

 ビッと音がして視線をやると、肌が触れる感じがした。良く見るとストッキングが破けていて、荒れた手に引っ掛かる。


「風、つよい…」


 大きくカーテンが靡いて、霞んだ空が段々と明らんでくる。

 やっと落ち着いた足をベットの縁を使って立ち上がる。足元に転がった缶ビールの入った袋やお弁当の入ったゴミ袋を足蹴にしながら道を作って窓を閉めに向かう。


 窓に手をかけて外を見た。空が青くて久々に空を見た気がする。だけどその一方で、とても酷く、酷いくらいに

悲しくて泣きたくなった。


「…やめよ、仕事」


 このあと大変になる事も解ってる。それでも、もうこの綺麗な空を見た後では、漏れ出た自分の気持ちに嘘はつけなかった。


 カーテンを大きく開けて、部屋の空気を入れ替える。大きく背伸びをする。太陽の光を浴びながら背伸びをする。そんな行動もいつ以来か分からない。

 振り返って部屋の中を見ると、さっきまで寝ていたオアシスのような部屋がひどく荒れていて汚く感じる。

 大量のゴミ袋だけじゃなく、辛うじて見える床に、散らばった家計簿に付けたかったレシート達や洗濯したのに仕舞われなかった洋服達が山のようになっている。机にいくつも溜まった紙コップ達がいる。


「よく…人として保ってたな…私」


 まじまじと見渡す部屋に思わず眉が寄る。

 ただ、キッチンだけは、唯一綺麗に保っている。なぜなら、一度小蝿が湧いたから。未だに夢に見るあの日は、泣きながら掃除した。

 生きた虫や蛹を見る羽目になった終電帰り3日目の真夏のあの日は最悪で、大量のコップと食器を捨てる羽目になった。未暫くキッチンには入れず、黒い靄に怯える生活を送っていた。

 恐怖からしばらく料理なんて物はしていない。しなければ温床を作らずに住むからだ。コンビニか出前しか頼んでいないし、捨てられる物でしか食事も水分を取ってない。紙コップは最高だった。捨てられるし、コップは大切に棚にしまっていたものしか残っていない。


「風呂、入ろう…」

 

 独り暮らしは独り言も多くなる。それよりも、朝からお風呂に入るなんていつぶりだろう…そんな事を思いながら、布団に放り投げてた携帯を拾い上げて今日の日付を確認する。

携帯をマナーモードにして、風呂場に向かう。


「そもそも、風呂貯めるの久々だった…」


 風呂の中を洗って、湯張りにする。試供品でもらった入浴剤を脱衣所に出して、部屋に戻る。昨日のスーツのまま、そのあたりにゴミを纏めて、燃えるゴミに入れていく。レシートなんてどうせ家計簿をつけない。

 プラスチックもビン缶ペットボトルも、パンパンになった燃えるゴミも部屋からどんどん出していく。掃除機もついでにすると、また部屋に風が入ってきて、足元もきれいになったからか部屋が綺麗になったように感じた。


 風呂場からピーッ!ピーッ!と大きな音がして、風呂が溜まった事を知らされる。

 脱衣所に向かった私の目に、遅刻しないようにと置いてある小さな目覚し時計が飛び込んでくる。いつもならもう電車に揺られている8時15分を指していた。

 時計を触って秒針が見えないように伏せた。


 お風呂に入ってすぐの事、気づくのが遅すぎた。


「入浴剤入れ忘れた…。もういいや…入っちゃった…出たくない…」


 のんびりと朝が過ぎてゆく

初めまして。たまにあるゆったりとした日常系が読みたくて、ずっと頭の中にあった小説を形にしてみることにしました。

遅筆ですので、時折見てくださると幸いです。

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