白い化物
緑溢れた山間に一つの新しい城が完成した。城の者たちが、せっせと働きやっと完成した正に努力の結晶のような城だった。
その城は一人の大変美しい気品のある女王が治めていた。女王は皆に慕われ、城の者達も満足し暮らしていた。
戦いにも長けていて、特に集団で戦闘をする槍兵がその城を守っており、他の者達を寄せ付けない強さを誇っていた。
そんなある日、ある一報が城中を震撼させた。
白い化物が攻めてきたというのだ。
白い化物は兵士達の何倍あるか分からないくらいに大きく、城をも踏み潰されてしまいそうな程とにかく大きかった。
「女王、白い化物はどんどんこちらに近づいております。」
「女王、どうかご命令を。」
と兵士達が口々に叫ぶ。
「白い化物であろうと我が城の槍兵が負ける訳がない。直ちに出陣し撃退せよ。」
女王が勇ましく命令を出した。
すると兵士達は待っていたと言わんばかりに次々に烈火のごとく飛び出て、白い化物を囲み 、攻撃を開始した。
白い化物は余りにもすごい勢いで攻撃されたので、怯み、退散していった。
兵士達は勝利の雄叫びを上げた。
逃がしはしたものの、あっさりと城を守れたのだ。
「見たか。これが我が城の槍兵部隊だ。今度来たら逃がしはしないぞ。」
「でかいだけで、てんで弱いではないか。」
「おととい来やがれ。」
兵士達は口々に言い捨て、城へ戻っていった。
城では勝利を祝うパーティーが開かれ、兵士達は酒に酔いしれ、歌い、語り合った。
女王も満足気にそれを見て微笑んでいた。
パーティーは朝方まで続き、皆大いに楽しんだ。
それからは平和な日が続いたが、ある日また一報が届いた。
「白い化物がまた現れ、こちらに向かっております。」
「今回は3体も現れ、同時に攻めてきます。」
女王が叫んだ。
「我らが負けるはずがない。すぐに撃退せよ。」
前回の戦闘で士気が盛んになっている兵士達は喜び勇んで飛び出していった。
「性懲りもなくまた来やがって、目にものを見せてやる。」
「数が増えたってすぐに尻尾巻いて逃げ出すさ。」
兵士達はこう言いながら白い化物達を取り囲み攻撃を開始した。
ところが白い化物達は前のようにすぐ逃げ出すことはなかった。
相変わらず兵士達の激しい攻撃が続いているが、微動だにしない。
そんな中、白い化物が動き出した。
白い化物達は白い息を吐き、それに触れた兵士達は次々に死に絶えていった。
「なんてことだ。こんなはずでは…」
兵士達に為す術はなく、逃げ惑うことしか出来ず、女王もまた、それを見ていることしか出来なかった。
そして兵士達を蹴散らした白い化物達は真っ直ぐ城の方へ向かった。何やら棒状の武器の様なものを取り出し、何の躊躇も無く城に降り下ろした。
「女王様、城の中は危険です。お逃げください。」
「まだ子ども達の避難も終わっていません。」
「女王どうかお逃げ…」
と言うのと同時に完成したばかりの城は瞬く間に崩れ去った。
そして白い化物達は炎を吐き、城を燃やした。
崩れ去り燃え盛る城を眺めながら生き残った兵士達は散り散りに逃げていった。
女王は城と共に燃えていった。
そして白い化物達は炎を消化し去っていった。
防護服を脱ぎながら笑顔で人間が言う。
「いやぁ、今回のはなかなか手強かったなぁ。」
「必死に抵抗してる気がしましたね。」
「でもこれでしばらくは安心して暮らせるなぁ。」